【完結】心打つ雨音、恋してもなお

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
51 / 72
9話 過去と対峙して

3 図書館での成果

しおりを挟む
「で、どうだったのよ」
 皆で手分けして新聞の記事を調べたもの、特定の場所となるとなかなか該当の記事には当たらなかった。もっとも新聞には全ての事故が載っているわけではない。
 協力してくれた人々には叔母から夕食をご馳走すると言われ、再び珈琲店に引き返してきた一行。
「内容的には一致した記事もあるんですが、場所が違ったり」
 れんの代わりにそれぞれ成果を報告する彼ら。
「でも、記事になっていないと言うことは、そこまでの大けがでなかったという捉え方もできますしね」
 温かい料理が冷えた心を溶かしていく。
 戀は皆の話を聞きながら、そういう捉え方もできるのかと思っていた。

「例えばの話だけれど」
 協力してくれた中の常連客の一人が自分の考えを口にする。
陽菜はるなちゃんのお兄さんはライターさんである事件を追っていたわけでしょう。それ関係でこの街から何処かに移動したとしても、何か進展があれば『ネタ』はその雑誌社に報告すると思うんだよ」
 進捗や現在どこにいるなどの報告も、もちろんその担当にするだろうと推理する。
「その途中で事件に巻き込まれて……なんてのはやはりドラマの中だけだと思うしさ」
 世の中にはきな臭い事件も確かにある。
 無名だったからこそ秘密裏に処理されたという可能性も否定はできないが、日々のニュースを見ていると悪事が明るみになっても『慣例だ』などと開き直る議員もいるくらいなのだ。

 そう、彼らにとって悪事とは暴かれても大したことではない。そう考える方が自然。一般人は高々100円のものを盗んだとしても刑務所へ送られることもある。逮捕されて当然であるにも関わらず、億単位の不正をしても更迭こうてつで済んでしまうのが議員というもの。
 更迭とはその役人が変わると言うだけ。もちろん中には逮捕される者もいるかもしれないが、どう考えても大したことではない様に見える。
 つまり、悪事に対して罪悪感なんてないし、もしかしたら悪いことだと思っていない可能性もあるだろう。それなのに殺人なんて犯すだろうか?

「やはり、この地域から出てないと思うんだよなあ」
 気になるのは身元の分かるものを何も所持していなかった点だ。それが事故に巻き込まれて身元不明の遺体となっているなら、やはり陽菜たち家族が照会した時に何らかの手ごたえがあるはずだろう。
「一度、救急指定病院に問い合わせしてみた方がいいかもしれないわね」
 やはりそう来たかと戀は思う。
 遅かれ早かれそうなることは予想はしていたが、その医院と元カノが関わっているという話を聞いた後では気持ちが違う。

「そうですね」
 声を発したのは陽菜だった。
 大丈夫と言うように戀の手の上に自分の手を重ねた彼女。
「まずは電話で問い合わせをしてみようと思います。それで門前払いされてしまったら直接行くしかないけれど」
「その時は一緒に行くよ」
 もともとそのつもりだったのだ。決心が鈍ってしまったことを恥じながら彼女に笑いかけた戀は、陽菜が心配そうにこちらを窺っていたことに気づく。
 戀は苦笑いするしかなかった。

「ねえ、大丈夫?」
 皆が帰ったのち、陽菜は心配そうに。
「これでいよいよあの子に協力要請をするしかなくなったわね」
 これまで黙っていた叔母が二人の前に紅茶のカップを置きながら口を挟む。
 できれば避けたかった道だ。
「そうみたいだね」
 ”ああ……”とため息をついてカウンターに突っ伏す戀。慰めるように背中に当てられた陽菜の手が温かい。
「いい加減、覚悟を決めなさいよ」
「わかってるよ」
 憂鬱でしかないが、それ以外に方法はないのだ。

「そんなに会うのが嫌なの? 喧嘩わかれしたとか?」
 陽菜の質問にどう答えるべきか迷う。
「違うのよ。戀、あの子のことが苦手なの」
 代わりに質問に答えクスクスと笑う叔母。
「え? 苦手……そう、なの」
 驚いたのち、何故かホッとしたように言葉を漏らす陽菜。何故彼女がホッとしたのか、戀にはわからなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

処理中です...