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9話 過去と対峙して
5 突然の再会
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医院に問い合わせをし、その結果が分かったらまた連絡すると言われ、戀《れん》は久々に一人の日曜を過ごすことになった。
とは言え陽菜《はるな》に出逢う前も出逢った後も、一人で過ごす休日にあまり変わりはないように思う。いつものように叔母がマスターを務める珈琲店でのんびりと紅茶を嗜んでいると、暇なのか隣に叔母が腰かけた。
「あなたねえ、いい加減デートくらい誘いなさいよ」
「叔母さんを?」
雑誌から顔を上げ叔母の方に視線を向けると呆れ顔でやれやれというポーズをする彼女が視界に入る。
「何アホなこと言ってるの。陽菜ちゃんを、よ」
「そんな状況じゃないでしょ」
戀はため息を零すと再び雑誌に視線を戻した。
「確かにお兄さんを捜すの第一かもしれない。でもそればかりでは疲れてしまうんじゃないかしら。気分転換に何処かに連れて行ってあげたらいいじゃないの」
「俺が?」
別にそれは自分が適役ではないと言う意味合いではない。
むしろ捜索に深く関わっている自分とでは気分転換にならないのではないかという気持ちからだ。
「あなた以外に誰がいるのよ。呆れた子ね」
それは恐らく戀が適役だという意味合いではない。”二人で話しているんだから、あなたのことでしょうよ”という意味だろう。
そうは言われてもね、と思いながら雑誌のページを捲る。どこも秋真っ盛り……と言いたいところだがすでに冬はすぐそこまで来ていた。
この寒い中、何処へ連れ出せと言うのだろうか。
たまに天然な部分もあるが、優しくて聡明で思いやりのある陽菜。彼女と一緒にいると何故か心穏やかでいられた。
だが今自分たちは行方不明になっている彼女の兄を捜している状況。
いくら気分転換とは言え、楽しいことをしてはいけないのではないかと思ってしまう。なかなか進展しなくても、彼女は気落ちしているところを見せたりはしない。いや、気丈に振舞っていないと悪いことばかり考えてしまうのかもしれない。
戀とて最悪の結末からは目を背けてきたのだ。家族ならなおさらだろう。
もちろんそんな結末にならないことに越したことはないが、今自分に出来ること言えばその穏やかな状態に波風を立てないことくらいしかない。
デートに誘うのは全てが解決してから。
誘えるかどうかも分からないが。
正直なところ、彼女が自分をどう思っているのかまったく分からない。叔母にそんなことを言えば、本人に聞いてみろと言われるのがオチだ。
聞く勇気があるなら、とっくにそうしているだろう。
いや、聞ける状況ではないと自分に言い訳する。
「ぐずぐずしていると機を逃して後悔することになるわよ」
心底呆れたとでも言いたそうな声音で彼女は言うと立ち上がる。それと同時にドアベルがカランコロンと鳴った。お客が来たのだろう。
時刻は8時前。随分と早い来店だなと思ったと同時に、この珈琲店が朝早くから開いていることを知っているのだとすれば常連客なのだろうとも思った。
「あら、久しぶりね」
叔母の声が聞こえる。
やはり常連客なのだろう。しかも久しぶりに来店したと思われる。
叔母の話し相手はその人に任せればよいだろうと戀はポケットからスマホを取り出し、メッセージの確認をしようとした。
「戀」
だが、背後から声をかけられて戀は固まる。
まさかそんなはずはない。
何故なら自分はあれから一度も連絡をしていないのだから。
戀はぎぎぎと音がしそうなくらいぎこちなく振り返る。すると相手は満面の笑みを浮かべこちらを見降ろしていた。
「や、やあ」
まるでアメリカ人のように片手をあげ挨拶してみる。
「なによ、それ。相変わらず西洋かぶれなの?」
さも可笑しそうに笑う彼女。
「そういうわけじゃないよ。反応に困っただけ」
「そう。隣、いいわよね」
”用があるの”と言う彼女に戀は曖昧に頷く。突然の再会に動揺を隠せない戀とは裏腹に、始終笑顔を絶やさない彼女。なんだかやけに怖かった。
とは言え陽菜《はるな》に出逢う前も出逢った後も、一人で過ごす休日にあまり変わりはないように思う。いつものように叔母がマスターを務める珈琲店でのんびりと紅茶を嗜んでいると、暇なのか隣に叔母が腰かけた。
「あなたねえ、いい加減デートくらい誘いなさいよ」
「叔母さんを?」
雑誌から顔を上げ叔母の方に視線を向けると呆れ顔でやれやれというポーズをする彼女が視界に入る。
「何アホなこと言ってるの。陽菜ちゃんを、よ」
「そんな状況じゃないでしょ」
戀はため息を零すと再び雑誌に視線を戻した。
「確かにお兄さんを捜すの第一かもしれない。でもそればかりでは疲れてしまうんじゃないかしら。気分転換に何処かに連れて行ってあげたらいいじゃないの」
「俺が?」
別にそれは自分が適役ではないと言う意味合いではない。
むしろ捜索に深く関わっている自分とでは気分転換にならないのではないかという気持ちからだ。
「あなた以外に誰がいるのよ。呆れた子ね」
それは恐らく戀が適役だという意味合いではない。”二人で話しているんだから、あなたのことでしょうよ”という意味だろう。
そうは言われてもね、と思いながら雑誌のページを捲る。どこも秋真っ盛り……と言いたいところだがすでに冬はすぐそこまで来ていた。
この寒い中、何処へ連れ出せと言うのだろうか。
たまに天然な部分もあるが、優しくて聡明で思いやりのある陽菜。彼女と一緒にいると何故か心穏やかでいられた。
だが今自分たちは行方不明になっている彼女の兄を捜している状況。
いくら気分転換とは言え、楽しいことをしてはいけないのではないかと思ってしまう。なかなか進展しなくても、彼女は気落ちしているところを見せたりはしない。いや、気丈に振舞っていないと悪いことばかり考えてしまうのかもしれない。
戀とて最悪の結末からは目を背けてきたのだ。家族ならなおさらだろう。
もちろんそんな結末にならないことに越したことはないが、今自分に出来ること言えばその穏やかな状態に波風を立てないことくらいしかない。
デートに誘うのは全てが解決してから。
誘えるかどうかも分からないが。
正直なところ、彼女が自分をどう思っているのかまったく分からない。叔母にそんなことを言えば、本人に聞いてみろと言われるのがオチだ。
聞く勇気があるなら、とっくにそうしているだろう。
いや、聞ける状況ではないと自分に言い訳する。
「ぐずぐずしていると機を逃して後悔することになるわよ」
心底呆れたとでも言いたそうな声音で彼女は言うと立ち上がる。それと同時にドアベルがカランコロンと鳴った。お客が来たのだろう。
時刻は8時前。随分と早い来店だなと思ったと同時に、この珈琲店が朝早くから開いていることを知っているのだとすれば常連客なのだろうとも思った。
「あら、久しぶりね」
叔母の声が聞こえる。
やはり常連客なのだろう。しかも久しぶりに来店したと思われる。
叔母の話し相手はその人に任せればよいだろうと戀はポケットからスマホを取り出し、メッセージの確認をしようとした。
「戀」
だが、背後から声をかけられて戀は固まる。
まさかそんなはずはない。
何故なら自分はあれから一度も連絡をしていないのだから。
戀はぎぎぎと音がしそうなくらいぎこちなく振り返る。すると相手は満面の笑みを浮かべこちらを見降ろしていた。
「や、やあ」
まるでアメリカ人のように片手をあげ挨拶してみる。
「なによ、それ。相変わらず西洋かぶれなの?」
さも可笑しそうに笑う彼女。
「そういうわけじゃないよ。反応に困っただけ」
「そう。隣、いいわよね」
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