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10話 進み続ける時間
4 思わぬ再会
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戀は一人、例のコンビニから医院までの道を向かっていた。
かといって、元カノから連絡があったためでもない。それは日曜日の朝。
昼頃にはいつもの珈琲店で陽菜と待ち合わせをしている。
『調べてくれることにはなったけど、業務の合間にだから意外と時間がかかるんじゃないかな』
元カノからの連絡を受け、陽菜にそう話す。
『すぐに掛け合ってくれたのね。今日の内に連絡が来るなんて』
『そうみたいだな。人の生死もかかっているしね』
他人事とは言え、元カノは後回しにする性格でもなかった。
『そっか。結果が出るまで時間がかかるのね。じゃあ、それまで恋人の練習しましょ?』
茶飲み友達から偽りの恋人。
これは進展しているのか、それとも後退しているのか。分からないままに陽菜に従う。
そもそも彼女の兄を捜すことに協力を申し出ている状態。ならば彼女の都合に合わせるべきだと思った。もちろん、役得だとも思っている。
「なるほど。これならK学園の女子寮の脇も通るルートだな」
女子高生グループに話を聞いた時は深く考えていなかったが、救急車は医院から来るわけではなく消防署から来たはずだ。
彼女達は近くを通ったとしか言っていなかったが、二度通ったとは言っていない。つまり医院からコンビニ方面へ行くところを見かけたのではなく、医院へ向かって行ったのを見たのだろう。戀はそのように推測した。
コンビニから医院へ行く道は見た限りでは良い間隔で街頭があるように見える。しかし近年の節電対策に関係し、全てが灯ってるかについては夜に自分の目で確かめてみないとわからない。
陽菜の兄の自宅は途中まで同じ経路。夜になれば薄暗く感じる部分もあるはず。この道は一方通行ではないが、すれ違うとなるとギリギリだろう。
道を作る時に電柱や塀に関して、ちゃんと考慮しなかったのではないかと思われる。近年、新たに歩道部分を作る動きもみられるが、ここは後回しにされている感があった。
年末年始の無駄な道路工事を止めてそちらを優先すればいいのになどと思いながら歩いていると、気づけば噂の公園についている。
『最近男性とよく一緒に散歩しているところを見るのよね』
あの時の会話が脳裏を過った。
「別に噂の真相を確かめに来たわけじゃない」
戀は自分に言い訳するように呟いて公園へ足を踏み入れる。気にならないと言ったらウソになるだろう。
『わたし、別にイケメンが好きなわけじゃない』
以前元カノはそう言っていたはずだ。それなのに噂されるほど『イイ男』という相手と一緒にいるのであれば、その顔を拝んでみたいと思っても不思議はないはず。
もちろん、今の時間にいるとは限らない。
『次いでだ』と誰にともなく言葉を発して奥へ進んでいく。入ってみれば何の変哲もない公園であった。否、サスペンスに出てきそうな造りの公園。
木々に囲まれたウオーキングコースがあり、中央は広場となっているようだ。
「何をするところなんだろうな」
細かい黄土色の砂地。かといってやわらかいわけではない。中央からウオーキングコースにかけては緩やかな傾斜になっていて芝生がある。ウオーキングコースに近づくにつれ木々が増えていくスタイル。サッカーでもできそうなくらいの広さはあるように思えたが、そもそも戀は学校の校庭くらいしか知らないのだ。
一応ベンチも設置されているようで、戀はその一つに腰かける。白いペンキの塗られたベンチ。ますます何をするのが正しいのかわからなくなる。
「あら、戀」
「ん?」
背後から声をかけられて顔を上げれば、元カノがいた。
「何してるの? こんなところで」
「出歯亀」
「は?」
「違った、野次馬」
出歯亀とは変態のことを罵る言葉。野次馬もまた良い意味合いではない。そのせいか、彼女に眉を潜められてしまう。
「いや、事件現場になりそうな公園だと思ってさ」
「相変わらず変なことに興味を持つ人ねえ」
呆れながらも自然に隣に腰かける彼女の隣には……誰もいなかった。
かといって、元カノから連絡があったためでもない。それは日曜日の朝。
昼頃にはいつもの珈琲店で陽菜と待ち合わせをしている。
『調べてくれることにはなったけど、業務の合間にだから意外と時間がかかるんじゃないかな』
元カノからの連絡を受け、陽菜にそう話す。
『すぐに掛け合ってくれたのね。今日の内に連絡が来るなんて』
『そうみたいだな。人の生死もかかっているしね』
他人事とは言え、元カノは後回しにする性格でもなかった。
『そっか。結果が出るまで時間がかかるのね。じゃあ、それまで恋人の練習しましょ?』
茶飲み友達から偽りの恋人。
これは進展しているのか、それとも後退しているのか。分からないままに陽菜に従う。
そもそも彼女の兄を捜すことに協力を申し出ている状態。ならば彼女の都合に合わせるべきだと思った。もちろん、役得だとも思っている。
「なるほど。これならK学園の女子寮の脇も通るルートだな」
女子高生グループに話を聞いた時は深く考えていなかったが、救急車は医院から来るわけではなく消防署から来たはずだ。
彼女達は近くを通ったとしか言っていなかったが、二度通ったとは言っていない。つまり医院からコンビニ方面へ行くところを見かけたのではなく、医院へ向かって行ったのを見たのだろう。戀はそのように推測した。
コンビニから医院へ行く道は見た限りでは良い間隔で街頭があるように見える。しかし近年の節電対策に関係し、全てが灯ってるかについては夜に自分の目で確かめてみないとわからない。
陽菜の兄の自宅は途中まで同じ経路。夜になれば薄暗く感じる部分もあるはず。この道は一方通行ではないが、すれ違うとなるとギリギリだろう。
道を作る時に電柱や塀に関して、ちゃんと考慮しなかったのではないかと思われる。近年、新たに歩道部分を作る動きもみられるが、ここは後回しにされている感があった。
年末年始の無駄な道路工事を止めてそちらを優先すればいいのになどと思いながら歩いていると、気づけば噂の公園についている。
『最近男性とよく一緒に散歩しているところを見るのよね』
あの時の会話が脳裏を過った。
「別に噂の真相を確かめに来たわけじゃない」
戀は自分に言い訳するように呟いて公園へ足を踏み入れる。気にならないと言ったらウソになるだろう。
『わたし、別にイケメンが好きなわけじゃない』
以前元カノはそう言っていたはずだ。それなのに噂されるほど『イイ男』という相手と一緒にいるのであれば、その顔を拝んでみたいと思っても不思議はないはず。
もちろん、今の時間にいるとは限らない。
『次いでだ』と誰にともなく言葉を発して奥へ進んでいく。入ってみれば何の変哲もない公園であった。否、サスペンスに出てきそうな造りの公園。
木々に囲まれたウオーキングコースがあり、中央は広場となっているようだ。
「何をするところなんだろうな」
細かい黄土色の砂地。かといってやわらかいわけではない。中央からウオーキングコースにかけては緩やかな傾斜になっていて芝生がある。ウオーキングコースに近づくにつれ木々が増えていくスタイル。サッカーでもできそうなくらいの広さはあるように思えたが、そもそも戀は学校の校庭くらいしか知らないのだ。
一応ベンチも設置されているようで、戀はその一つに腰かける。白いペンキの塗られたベンチ。ますます何をするのが正しいのかわからなくなる。
「あら、戀」
「ん?」
背後から声をかけられて顔を上げれば、元カノがいた。
「何してるの? こんなところで」
「出歯亀」
「は?」
「違った、野次馬」
出歯亀とは変態のことを罵る言葉。野次馬もまた良い意味合いではない。そのせいか、彼女に眉を潜められてしまう。
「いや、事件現場になりそうな公園だと思ってさ」
「相変わらず変なことに興味を持つ人ねえ」
呆れながらも自然に隣に腰かける彼女の隣には……誰もいなかった。
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