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10話 進み続ける時間
3 難解ミッション
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「練習?」
「そう、恋人らしくする練習。このままじゃすぐにバレてしまうでしょう?」
陽菜にそう言われ、戀は戸惑った。
練習とは何をすると言うのだろうか。
「バレたらダメなの?」
戀の素朴な疑問。すると陽菜はぽかんと口をあける。
「何言ってるの。当たり前じゃない。バレたら、そもそもなんのために嘘をついてたのか追及されちゃうでしょ? そしたら未練があるからって思われる可能性もあるし」
「うーん……それは嫌だな」
”そうでしょう?”と腰に手をあて、ぷんすかする陽菜が可愛らしい。
戀のド下手な演技はともかく、陽菜を好きな気持ちは嘘ではないのでバレることはないだろうと戀は思っていた。だがそれを説明するには自分の気持ちをばらさなければならない。
ここでフラれてしまっては今後やりづらくなるため、そんなハイリスクなことが戀にできるはずもなく。
「で、練習ってなにするの?」
「そうね。恋人同士だったらするような言動をする訓練しましょ」
大変そうなミッションだなと思いつつ、最初の指令を待つ戀。
「それでね。駅前にクリスマスのイルミネーションが飾られ始めたんだけど」
何故か急にもじもじする彼女。
戀は駅を利用しないのでそんなことが行われていることは知らなかった。いつの間に12月に入っていたのかと時の流れの速さに驚きを感じる。
「戀くん、そういうの嫌い?」
上目づかいでお伺いを立ててくる彼女が可愛い。きゅんとしながら、首を軽く横に振った。思わずそんな君が好きだと言いそうになりながら。
「じゃあ、見に行こうか」
「やった」
戀は席を立つとレジへ向かう。
「あら、もう帰るの?」
レジで叔母にそう問われチラリと陽菜の方を見る戀。
「駅前のイルミネーションを見てきます」
嬉しそうに笑う陽菜。叔母は事前に二人が恋人同士のフリをするという話を聞いていた為、意味深に笑う。
「そう、デート楽しんできてね。ホントにつき合っちゃえばいいのに」
「うふふ」
笑って誤魔化す陽菜に複雑な心境になりながら、”またくるよ”といって店を出た。
「駅前のパン屋さんでね、クリスマスシーズンだけネコの形のサブレを出すの。とても可愛いのよ」
手を繋ぎながら歩く街路樹。
「え、もみの木とかじゃないの?」
「別にもみの木は可愛くはないでしょう?」
クリスマスと猫の関係も分からないが、もみの木が可愛いかどうかを考える羽目になり思わず笑ってしまう戀。
「まあ、確かに可愛いかどうか問われると可愛いとは言えないかもしれないけど」
「そうでしょう?」
「でももみの木の形のサブレはそこそこ可愛いんじゃないの?」
「木を見て可愛いとか変よ」
「え」
クリスマスツリーを見に行くんだよねと陽菜を二度見する。
駅前に着くとコートのポケットからスマホを取り出した陽菜が、”可愛い”と言ってクリスマスツリーを撮影しはじめた。
「木を見て可愛いとか言うのは変なんじゃ……」
呟く戀を空いた片手でぺちっと叩く陽菜。きっと余計なことは言うなと言うことなのだろう。
陽菜は相変わらず面白いなと思いながら駅の方に視線を移すと例の小学生兄弟がいた。何故小学生は冬でも薄着なんだとツッコミを入れてしまいそうになるが。
「例のあの子たちがいる」
「あ、ほんとね。クリスマスツリーを見に来たのかしら」
”挨拶に行きましょ”と言われ手を掴まれた戀は焦る。
「敵を騙すにはまず味方からよ」
恋人同士だと思われても良いと言う意味合いなのだろう。戀は大人しく従うことにした。
「こんにちは」
「あ、おねえちゃんとお兄ちゃん」
陽菜の挨拶に弟の方が反応する。次いで兄の方はぺこりと頭を下げた。
その節はという意味合いなのだろう。
「君たちもクリスマスツリーを見に来たの?」
「ううん。パパのお迎え」
戀の質問に即答する弟。
「もってことは、高坂さんたちはデート?」
兄の方には名前で呼ばれ、よく覚えているなあと感心しつつも照れてしまう戀。
「そう、デートなの」
”いいでしょ”とニコッと笑う陽菜はやはり女優だと感じる戀であった。
「そう、恋人らしくする練習。このままじゃすぐにバレてしまうでしょう?」
陽菜にそう言われ、戀は戸惑った。
練習とは何をすると言うのだろうか。
「バレたらダメなの?」
戀の素朴な疑問。すると陽菜はぽかんと口をあける。
「何言ってるの。当たり前じゃない。バレたら、そもそもなんのために嘘をついてたのか追及されちゃうでしょ? そしたら未練があるからって思われる可能性もあるし」
「うーん……それは嫌だな」
”そうでしょう?”と腰に手をあて、ぷんすかする陽菜が可愛らしい。
戀のド下手な演技はともかく、陽菜を好きな気持ちは嘘ではないのでバレることはないだろうと戀は思っていた。だがそれを説明するには自分の気持ちをばらさなければならない。
ここでフラれてしまっては今後やりづらくなるため、そんなハイリスクなことが戀にできるはずもなく。
「で、練習ってなにするの?」
「そうね。恋人同士だったらするような言動をする訓練しましょ」
大変そうなミッションだなと思いつつ、最初の指令を待つ戀。
「それでね。駅前にクリスマスのイルミネーションが飾られ始めたんだけど」
何故か急にもじもじする彼女。
戀は駅を利用しないのでそんなことが行われていることは知らなかった。いつの間に12月に入っていたのかと時の流れの速さに驚きを感じる。
「戀くん、そういうの嫌い?」
上目づかいでお伺いを立ててくる彼女が可愛い。きゅんとしながら、首を軽く横に振った。思わずそんな君が好きだと言いそうになりながら。
「じゃあ、見に行こうか」
「やった」
戀は席を立つとレジへ向かう。
「あら、もう帰るの?」
レジで叔母にそう問われチラリと陽菜の方を見る戀。
「駅前のイルミネーションを見てきます」
嬉しそうに笑う陽菜。叔母は事前に二人が恋人同士のフリをするという話を聞いていた為、意味深に笑う。
「そう、デート楽しんできてね。ホントにつき合っちゃえばいいのに」
「うふふ」
笑って誤魔化す陽菜に複雑な心境になりながら、”またくるよ”といって店を出た。
「駅前のパン屋さんでね、クリスマスシーズンだけネコの形のサブレを出すの。とても可愛いのよ」
手を繋ぎながら歩く街路樹。
「え、もみの木とかじゃないの?」
「別にもみの木は可愛くはないでしょう?」
クリスマスと猫の関係も分からないが、もみの木が可愛いかどうかを考える羽目になり思わず笑ってしまう戀。
「まあ、確かに可愛いかどうか問われると可愛いとは言えないかもしれないけど」
「そうでしょう?」
「でももみの木の形のサブレはそこそこ可愛いんじゃないの?」
「木を見て可愛いとか変よ」
「え」
クリスマスツリーを見に行くんだよねと陽菜を二度見する。
駅前に着くとコートのポケットからスマホを取り出した陽菜が、”可愛い”と言ってクリスマスツリーを撮影しはじめた。
「木を見て可愛いとか言うのは変なんじゃ……」
呟く戀を空いた片手でぺちっと叩く陽菜。きっと余計なことは言うなと言うことなのだろう。
陽菜は相変わらず面白いなと思いながら駅の方に視線を移すと例の小学生兄弟がいた。何故小学生は冬でも薄着なんだとツッコミを入れてしまいそうになるが。
「例のあの子たちがいる」
「あ、ほんとね。クリスマスツリーを見に来たのかしら」
”挨拶に行きましょ”と言われ手を掴まれた戀は焦る。
「敵を騙すにはまず味方からよ」
恋人同士だと思われても良いと言う意味合いなのだろう。戀は大人しく従うことにした。
「こんにちは」
「あ、おねえちゃんとお兄ちゃん」
陽菜の挨拶に弟の方が反応する。次いで兄の方はぺこりと頭を下げた。
その節はという意味合いなのだろう。
「君たちもクリスマスツリーを見に来たの?」
「ううん。パパのお迎え」
戀の質問に即答する弟。
「もってことは、高坂さんたちはデート?」
兄の方には名前で呼ばれ、よく覚えているなあと感心しつつも照れてしまう戀。
「そう、デートなの」
”いいでしょ”とニコッと笑う陽菜はやはり女優だと感じる戀であった。
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