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11話 意外な結末
6 変化と不変
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当たり前のことだが、人の気持ちとは変わる時は変わるし、変わらない時は変わらない。そしてブレない人もいるし、納得すれば変わる人もいるだろう。
ただ言えることは、事実を知って変わらなければ変わる可能性は低いということ。
自分には恋人がいるのだと信じ、その相手に誠実さを貫こうとした『記憶喪失の』男は自分に対し献身的に尽くしてくれる女性に心変わりすることは無かった。
彼はその相手が妹だという事実を知り、献身的に尽くしてくれた女性にチャンスが訪れてもおかしくはない。だが、現実はそう甘くはなかった。
つまり、いようがいまいが心変わりしなければ何も変わらないということ。
そしてその男が恋に落ちた相手は──。
「いらっしゃい」
「え、待って。なんでここにいるですか? しかもこちら側ではなく、そちら側に」
カウンターの向こう側には”噂の彼”がいた。
「戀くん、おはよう」
眉を寄せる戀に隣から声をかけてきたのは陽菜。
「おはよう、陽菜さん。えっと……」
「待ってないわ。今来たところだし」
噂の彼について抗議しようとしたらそんな風に言われてしまい、ゲンナリしながら席に着く。
「そうだね、約束してないし」
「え! 嘘っ」
彼女は慌てて鞄の中からスマホを取り出す。
デジャヴだなと思いながら、今度は注文を取りに来た叔母にターゲットを変更した。
「叔母さん、これは一体どういう状況なの」
「イケメンが働いてくれたら集客率は上がるし、良いこと尽くしじゃない。何が不満なのよ」
まだ何も注文していないが、目の前に置かれたのはモーニングセット。
「不満ではなく、経緯を聞いているんだよ」
「めんどくさい男ね」
叔母の言葉に、”俺が悪いのか?”と小さく呟く戀。
陽菜の兄は先日からここでアルバイトを始めたらしい。
叔母は彼から、リハビリも兼ねてアルバイトをさせて欲しいと言われ二つ返事でOKした。だが承諾したのはそれだけではないようだ。
「わたしね、彼につき合って欲しいって言われて」
頬に手をやり、”やだ、どうしよう”と言うようなポーズを取る叔母。
「それで?」
「こんな素敵な彼につき合ってなんて言われたら、もちろんOKするでしょ」
「あー、はいはい。末永くお幸せに!」
半ば投げやり。戀は呆れ顔でティーカップに手を伸ばす。
陽菜が先日言っていた”春が来た”はそういう意味だったのかとここで理解する。
「やだ、戀ったら僻《ひが》んでるの?」
「僻んでません」
極めて冷静に返答したが、叔母はまったく信じていないようだ。
その直後、彼女は陽菜の兄に呼ばれ『戀もがんばなさいよ』と意味深な笑みを浮かべると奥に引っ込む。
「送信押すの忘れていたみたい」
「ん?」
”ごめんね”と顔の前で手を合わせる陽菜が可愛い。
「またやっちゃった」
「いいよ、気にしなくて」
彼女は落ち着いていてしっかり者に見えるが、たまにドジなところも可愛いと思っている。完璧な人間よりもずっと愛嬌があって素敵だ。
「お兄さんは、和菓子屋の方を手伝わなくて良かったの?」
「父が反対しているという意味?」
「そうそう」
戀の言葉に彼女は大きくかぶりを振った。
「それがね、断然乗り気なの」
彼女が父の状況を話す中で、戀は思い出す。彼女の父は彼に早く結婚をして家庭を持ち、幸せになって欲しいと願っていたことを。
「”とっとと仲を深めて、さっさと結婚しろっ”て言っていた」
陽菜の兄は容姿だけで言えば、とてもモテそうに見える。しかし全く女性に興味がなく、学生時代はそれでもおつき合いくらいはしていたようだが、社会人になってからはめっきりだという。
「それにしても、面食いだったなんて。意外だわ」
肩を竦める陽菜。
確かに叔母は美人だしなと思う戀。
だがそれと同時に叔母は今まで誰ともつき合わなかったのに、即答したのが『イケメンだから』という理由にもなんだか納得してしまう。
「叔母さんも面食いだったんだな」
「それは……たぶん、美の基準の問題じゃないかな」
「ん?」
陽菜の言う意味が分からず、戀は彼女の方に視線をやる。すると口元に人差し指を当てる彼女の姿があまりにも可愛らしく、悶絶してしまったのだった。
ただ言えることは、事実を知って変わらなければ変わる可能性は低いということ。
自分には恋人がいるのだと信じ、その相手に誠実さを貫こうとした『記憶喪失の』男は自分に対し献身的に尽くしてくれる女性に心変わりすることは無かった。
彼はその相手が妹だという事実を知り、献身的に尽くしてくれた女性にチャンスが訪れてもおかしくはない。だが、現実はそう甘くはなかった。
つまり、いようがいまいが心変わりしなければ何も変わらないということ。
そしてその男が恋に落ちた相手は──。
「いらっしゃい」
「え、待って。なんでここにいるですか? しかもこちら側ではなく、そちら側に」
カウンターの向こう側には”噂の彼”がいた。
「戀くん、おはよう」
眉を寄せる戀に隣から声をかけてきたのは陽菜。
「おはよう、陽菜さん。えっと……」
「待ってないわ。今来たところだし」
噂の彼について抗議しようとしたらそんな風に言われてしまい、ゲンナリしながら席に着く。
「そうだね、約束してないし」
「え! 嘘っ」
彼女は慌てて鞄の中からスマホを取り出す。
デジャヴだなと思いながら、今度は注文を取りに来た叔母にターゲットを変更した。
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「イケメンが働いてくれたら集客率は上がるし、良いこと尽くしじゃない。何が不満なのよ」
まだ何も注文していないが、目の前に置かれたのはモーニングセット。
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叔母の言葉に、”俺が悪いのか?”と小さく呟く戀。
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叔母は彼から、リハビリも兼ねてアルバイトをさせて欲しいと言われ二つ返事でOKした。だが承諾したのはそれだけではないようだ。
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頬に手をやり、”やだ、どうしよう”と言うようなポーズを取る叔母。
「それで?」
「こんな素敵な彼につき合ってなんて言われたら、もちろんOKするでしょ」
「あー、はいはい。末永くお幸せに!」
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陽菜が先日言っていた”春が来た”はそういう意味だったのかとここで理解する。
「やだ、戀ったら僻《ひが》んでるの?」
「僻んでません」
極めて冷静に返答したが、叔母はまったく信じていないようだ。
その直後、彼女は陽菜の兄に呼ばれ『戀もがんばなさいよ』と意味深な笑みを浮かべると奥に引っ込む。
「送信押すの忘れていたみたい」
「ん?」
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「いいよ、気にしなくて」
彼女は落ち着いていてしっかり者に見えるが、たまにドジなところも可愛いと思っている。完璧な人間よりもずっと愛嬌があって素敵だ。
「お兄さんは、和菓子屋の方を手伝わなくて良かったの?」
「父が反対しているという意味?」
「そうそう」
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「それがね、断然乗り気なの」
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確かに叔母は美人だしなと思う戀。
だがそれと同時に叔母は今まで誰ともつき合わなかったのに、即答したのが『イケメンだから』という理由にもなんだか納得してしまう。
「叔母さんも面食いだったんだな」
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