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二章:哉太編
1・佳奈との出会い
しおりを挟む「哉太《かなた》」
「ん?」
いつものようにコーヒーカップ片手に、PCに向かっていると以前から仲の良い女友達に声をかけられた。
彼女とは同じサークルに所属しており、社会人向けのサークルだ。
「ここで仕事するの辞めなって」
それも以前から変わらない。彼女の名は有希《ゆき》。
彼氏持ちだが、厄介な面も持ち合わせていた。
「そっちも、またか?」
”平日にここに来るなんて”と哉太が続けると、
「バレた?」
と言って可愛く肩を竦める。
以前の哉太は、有希のことが好きだった。
恋人と喧嘩しては自分を頼ってくる彼女のことが。
そう、佳奈に出逢うまでは。
────あんな風に喧嘩別れしなければ、友達でいられたはずなのにな。
哉太は正義感が強く、自分が正しいという面を持つ反面、自分に自信がない。佳奈に好意を向けられても、自分なんかが好かれるわけはないと、ずっと思っていた。
あれからもう、三年が経つ。
嫌いで別れたいといっていた相手とは、無事別れることができたのだろうか?
今でも佳奈に気持ちがあるかと聞かれれば、正直なところわからない。
それでも、心配はしている。
哉太は傍らで文句を言っている有希のことを放置し、佳奈に想いを馳せた。彼女に惹かれたきっかけを。
佳奈がこのサークルに入会したのは三年前。
可愛い子だなとは思ったが、異性としての興味はなかった。
明るく挨拶をする子ではあったが、人と会話をあまりしようとはせず、人見知りなのだろうかと思ったほどだ。
しかし数日後、佳奈の友人という者が入会し、のちにそれが彼氏であると知る。恋人とあえて言わないのは、佳奈がその人物を忌み嫌っていたからだ。
哉太はどちらかと言うと人見知りだったため、話しかけてこない彼女は好都合に感じたことを覚えている。
あまり人と関わろうとしない彼女であったが冗談が好きらしく、話しかけるといつもおかしな返事をした。
────なんだコイツ。馬鹿なフリするとか。
そう、佳奈は他人と深く関わることを回避するために、不思議ちゃんのフリをしていたのだ。
それがフリなのだと気づいた時、哉太は彼女への興味が湧いた。
そして気づくきっかけとなったのが、佳奈がたまたま遅くにサークルに顔を出した日のことである。
あの日も哉太は、こんな風にここで仕事をしていた。
「こんばんはー」
明るい声に振り返る。佳奈だった。
彼女は忘れ物を取りに来たという。あまり話したことのない彼女と二人きりなことに緊張したし、自分は愛想がないと言われ怖がられていた為、居心地が悪くないか気にもなった。
「お仕事ですか?」
直ぐに忘れ物を見つけた彼女はそのまま帰るものと思っていたのに、何故か気軽に話しかけて来る。
しかも、いつもと雰囲気が違っていた。
「ああ、終わらなくて。俺、人より遅いからさ」
「意外ですね」
いつもは冗談ばかりでまともな会話すらままならない、佳奈。
その彼女が普通に話しかけてくるのだ。
まるで、自分だけが特別のように感じてしまう。
「何、俺ってどう見えてる?」
「やり手のエリート。カッコいいなって、いつも思ってる」
ああ、いつもの冗談かとがっかりしそうになったが、傍らに立つ彼女を見上げると冗談を言っている顔には見えなかったのだった。
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