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18話『αの潜入捜査と執事』
1 気がかりな人々
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****♡Side・β(カイル)
───クライスは大丈夫だろうか。
この国に来なければ、ラット化することを経験する必要はなく、本来知る必要のなかった”性欲”を植え付けられることもなかった。
自分が一番信頼している、宮廷では側近であり現在は執事であるβ男性体の者にクライスを頼んだ。出来る限りクライスの傍に居て、彼を守って欲しいと。
もう妹の時のように大切な人を失いたくなかった。
母は妹を失った時、カイルにとっては父であるこの国の王に離縁を申し出たという。自分には正妻の役目は果たせないと。
世継ぎとして産んだ息子はΩに選ばれたため城を去ることになり、国の象徴であった娘はαのせいで殺されたも同然。
自分にはこれ以上子を産むことは難しい。それは年齢的なことと肉体的なこと、精神的なことからの理由による。なんの役にも立たないのだから、任を解いて欲しいと申し出たのだ。離縁しカイルと暮らしたいと彼女は願っていた。
しかし国王は彼女を愛している。どうしても傍に置きたいと、それを突っぱねた。
世継ぎならば側室の子がいくらでもいる、と。
確かに我が王家には自分の他にたくさんの子がいる。
この国で国王にたくさんの側室がいるのは、子が戦争で亡くなったり、医療レベルが低いために亡くなるからなどの理由によるものではない。
β男性体しか王の座を継ぐことが出来ない。
しかも法の元Ωに恋人として選ばれれば、皇族でなくなるからだ。
その為、世継ぎ候補がたくさん必要であり、側室がいるのだ。
父が母を愛しているのは分かる。一目ぼれだと伺っているから。
しかし母が父を愛していると言ったようなことは、聞いたことが無かった。母は自分や妹は愛してくれていたと思う。
『カイル、産まれてきてくれて。ありがとう』
母はそう言って何度も抱きしめてくれた。
今思えば世継ぎとして産まれてきてくれて、肩の荷が下りたからかも知れないと感じる。
───例え、母が心から自分を愛してくれなかったとしても、俺は母を愛している。ここで一緒に暮らしたいと言ってくれた時、どんなに嬉しかったことか。
自分は父王が嫌いだった。
妹を見捨て、母をいつまでも縛り付けるあの人が。
母が床に臥せてしまったのは、あの人のせいではないのか。母はあの人など愛してはいない。
もちろん妹を死に追いやった犯人は許せない。必ずこの手で裁きを下す。
妹だけじゃない、愛しいレンやクライスにも危害を加えようとしたのだ。奴は遅かれ早かれ捕まることだろう。
しかし、父王は違う。
───母を、宮廷から救い出さなければならない。
レンの発情期が終わり次第行動に移そうと決意したカイルは、自室のドアを開ける。レンの起きている気配がした。
「レン、食事にしよう」
給仕の者がカイルに続きリビングのへ進んでいく。
カイルはベッドルームに向かうと、
「起きられる?」
と声をかけた。
彼の疲れ切った表情。
「カイル……」
発情期で失われるのは体力だけではない。
自分でない自分が記憶も意識もないままに、意志に反して性を求めるのはどんなに辛かろうと思った。
母を宮廷から連れ出す作戦についてレンに意見を求めようとした居たカイルは、彼が両腕を伸ばすのを見てただ優しく彼を抱きしめる。
きっと、今はその時ではないと。
「愛してるよ、カイル」
ちゃんとした恋人関係になってからは、いつだってカイルのことを気遣ってくれる、レン。愛しかった。
「俺もだよ。一緒にご飯を食べようね」
「うん」
今頃クライスは寂しい想いをしてはいないか、カイルは心配になりながらもレンを抱き上げたのだった。
───クライスは大丈夫だろうか。
この国に来なければ、ラット化することを経験する必要はなく、本来知る必要のなかった”性欲”を植え付けられることもなかった。
自分が一番信頼している、宮廷では側近であり現在は執事であるβ男性体の者にクライスを頼んだ。出来る限りクライスの傍に居て、彼を守って欲しいと。
もう妹の時のように大切な人を失いたくなかった。
母は妹を失った時、カイルにとっては父であるこの国の王に離縁を申し出たという。自分には正妻の役目は果たせないと。
世継ぎとして産んだ息子はΩに選ばれたため城を去ることになり、国の象徴であった娘はαのせいで殺されたも同然。
自分にはこれ以上子を産むことは難しい。それは年齢的なことと肉体的なこと、精神的なことからの理由による。なんの役にも立たないのだから、任を解いて欲しいと申し出たのだ。離縁しカイルと暮らしたいと彼女は願っていた。
しかし国王は彼女を愛している。どうしても傍に置きたいと、それを突っぱねた。
世継ぎならば側室の子がいくらでもいる、と。
確かに我が王家には自分の他にたくさんの子がいる。
この国で国王にたくさんの側室がいるのは、子が戦争で亡くなったり、医療レベルが低いために亡くなるからなどの理由によるものではない。
β男性体しか王の座を継ぐことが出来ない。
しかも法の元Ωに恋人として選ばれれば、皇族でなくなるからだ。
その為、世継ぎ候補がたくさん必要であり、側室がいるのだ。
父が母を愛しているのは分かる。一目ぼれだと伺っているから。
しかし母が父を愛していると言ったようなことは、聞いたことが無かった。母は自分や妹は愛してくれていたと思う。
『カイル、産まれてきてくれて。ありがとう』
母はそう言って何度も抱きしめてくれた。
今思えば世継ぎとして産まれてきてくれて、肩の荷が下りたからかも知れないと感じる。
───例え、母が心から自分を愛してくれなかったとしても、俺は母を愛している。ここで一緒に暮らしたいと言ってくれた時、どんなに嬉しかったことか。
自分は父王が嫌いだった。
妹を見捨て、母をいつまでも縛り付けるあの人が。
母が床に臥せてしまったのは、あの人のせいではないのか。母はあの人など愛してはいない。
もちろん妹を死に追いやった犯人は許せない。必ずこの手で裁きを下す。
妹だけじゃない、愛しいレンやクライスにも危害を加えようとしたのだ。奴は遅かれ早かれ捕まることだろう。
しかし、父王は違う。
───母を、宮廷から救い出さなければならない。
レンの発情期が終わり次第行動に移そうと決意したカイルは、自室のドアを開ける。レンの起きている気配がした。
「レン、食事にしよう」
給仕の者がカイルに続きリビングのへ進んでいく。
カイルはベッドルームに向かうと、
「起きられる?」
と声をかけた。
彼の疲れ切った表情。
「カイル……」
発情期で失われるのは体力だけではない。
自分でない自分が記憶も意識もないままに、意志に反して性を求めるのはどんなに辛かろうと思った。
母を宮廷から連れ出す作戦についてレンに意見を求めようとした居たカイルは、彼が両腕を伸ばすのを見てただ優しく彼を抱きしめる。
きっと、今はその時ではないと。
「愛してるよ、カイル」
ちゃんとした恋人関係になってからは、いつだってカイルのことを気遣ってくれる、レン。愛しかった。
「俺もだよ。一緒にご飯を食べようね」
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今頃クライスは寂しい想いをしてはいないか、カイルは心配になりながらもレンを抱き上げたのだった。
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