R18【同性恋愛】究極純愛♡僕日AG real＊『もう、この手を離さないで』

１ それぞれの事情

７・【失踪】

　＊＊＊＊♡Side・瀬戸遥（後輩）

　利久と海斗は自分にとって、一学年上の先輩に当たる。何も、たかろうと思って二人を訪ねているわけじゃない。一昨年の夏、それまで仲の良かった二人が一切会話をしなくなった。

『ねえ、セト。僕カイに嫌われちゃったのかな……』
　泣きながら自分を頼って来た利久のことが心配だからだ。
　一年半ぐらい話もしなかった二人はそのまま卒業した。
　しかしＫ学園大学部で最近二人は再会し、その理由が明らかになったという。

　【大崎海斗】は無口でクールで、自分の中にため込みやすい性格。
　【姫川利久】は嫌われるのが怖くて自分の気持ちをなかなか海斗に伝えることが出来ない。

　瀬戸は人見知りで他人を信用することの出来ない人間であった。
　だが、唯一幼い頃から一緒に居て楽なのが利久と海斗。二人が信頼し合っているからこそ、彼らの傍は居心地も良かった。二人が離れてしまってからは瀬戸も落ち着かなかったのだ。

　そんな三人の共通点はＡＧというバーチャルリアリティーゲームをしているという事だ。最近海斗がチームを立ち上げ、瀬戸もそこに所属している。自分は少し面倒なことに巻き込まれてしまったのだが、そこで出逢ったある一人の少年のことがとても気になっていた。
　というのも、アバターの見た目が兄が少年だった時にそっくりだからだ。

　瀬戸には失踪してしまった兄がいる。彼が居なくなったのはもうずいぶん前だ。恐らく四年ぐらいになるだろう。仲の良かった兄の突然の失踪。何があったのだろうか。
　厳格な父は兄がどこぞの者とも分からない人物と駆け落ちし、行方をくらましたのではないかと言っていた。
　それ以来家族の中では、兄はいない者扱い。確かに二人兄弟だったはずなのに、一人っ子だったような父の振る舞いにゾッとした。どうしてそこまで冷徹になれるのだろうかと。

　そしてＡＧというバーチャルリアリティーゲームの中で、兄の子供の頃とそっくりな容姿を持ったアバターの者と出逢ったのだ。
　ＡＧにはリアルの自分をスキャンして作るタイプのアバターと自分でパーツを組み合わせ作るアバターという二種類のタイプがある。もしリアルならば、兄に関係あるのではないかと推測できたし、一から作ったのだとしたらその顔がタイプな可能性がある。何処かで兄に遭遇しているのではないかと、思ったのだ。

　──俺は”霧島美桜”という少女を探している。

　結論から言えば、そのアバターの持ち主は男性ですらなかった。
　その少女はある人物に逢いたいがために、性別、年齢を誤魔化してＡＧにいるのだ。詳しい話を聞きたかったがゲーム内で問題が起きてしまい、接触することが難しくなってしまったのだ。
　もう少し詳しく話が聞けたならば直接逢いに行けたのかもしれないが、何とか掴むことが出来た情報は名前だけだったのである。