天使たちの水浴びシーン

アッシュ出版

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31)衆目に晒される罰

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 新人のゆかりちゃんは、美咲ちゃんをお手本にして、カメラの前でどのように振る舞えばいいのか必死に真似ている。
 まあ、僕がそれを彼女に頼んだんだけど。出来るだけ同じように動いて欲しいと。
 それが我が演出法、と言うと偉そうで、「私は息子をこうやって東大に合格させました」的な本を出版する母親みたいで嫌な感じがするけど。
 ただ単に、具体的に指示を出すよりも、「先輩の真似をして」という手抜き演出に過ぎなくて、結果的に上手くいっているけれど、上手くいっているのは運が良いだけに過ぎないわけで、別に自慢出来ることではない。

 しかし上手くいっていることは事実なのだ。彼女は美咲ちゃんの振る舞いを盗み見して、それをさり気くな真似して、実行に移してくれている。
 美咲ちゃんがブランコを漕ぐと、ゆかりちゃんも同じように漕いで。美咲ちゃんが滑り台を滑ると、彼女も滑り台を滑る。

 ゆかりちゃんが美咲ちゃんの真似をするとどうなるか、スカートの長さが違うわけであるから、「見える率」も変わってくる。
 真似しているだけなのに、結果的に丸見え。
 でもゆかりちゃんは恥ずかしがりまくっているから必死に隠してもいて、それが丁度良い感じのエロティックさになっていて。

 ゆかりちゃんは今、二種類の悩みを抱えていると思う。彼女はカメラの前でどう振る舞えばいいのかわからない。まずそれが第一の悩み。
 だから仕方なく美咲ちゃんの真似をする。すると恥ずかしいことになってしまい、彼女は慌てふためく。それが第二の悩み。

 ゆかりちゃんはさっきからその二つの悩みを行ったり来たりしている。それはまるで犬が自分の尻尾をかむためにクルクルと回る姿に似ていて、何とも愛おしくなってくる。
 しかし彼女にすれば、けっこう深刻な悩みのはずで。

 彼女は真面目だ。とても誠実で、ハートの熱い女子なのだ。
 それゆえ精一杯、僕たちの応えようとしている。
 しかしシャイで恥ずかしがり屋、まあ、同じ意味だけれど。それも事実で、自分の置かれている状況にとても居心地が悪そうであるもある。

 「どうすればいいんだろう?」

 「困ったなあ・・・」

 「頑張らないといけないし!」

 「でも頑張れば頑張るほど恥ずかしいことになって・・・」

 実際に彼女がそんなことを考えているかどうかわからないけれど、僕は彼女の胸の裡をそんなふうに想像する。

 ゆかりちゃんは頬を赤らめている。挙動不審に周りをキョロキョロ見回して、笑顔もひきつっている。
 泣きそうな表情にも見える。馴れないことを無理にさせられていて、心細げに見える。
 痛々しい姿に見える人だっているかもしれない。逆に、「エロさを掻き立てやがるぜ」って思う輩もいるだろう。初々しい姿が僕たちの欲情を抱かせるのだ。

 さらし者。

 そんな彼女の姿を観ていると、僕の頭の中にはその言葉が浮かんできた。

 さらし者というのは、何か悪事を犯したものが、自分の犯した罪が書かれた札を首にぶら下げて、衆目に晒される罰。
 近代以前、人権意識なんてものが皆無だった時代の酷い刑罰。
 その刑に処せられし者たちは、「パンを盗みました」とか、「夫以外の男性と姦淫しました」とか書かれた札をぶら下げて、広場を歩かされるのである。

 軽蔑の眼差しで見られるだろう。罵声を浴びせられることもあるだろう。石を投げられたりすることだってあったと思う。
 罪人はうつむき、恥じ入り、泣きながら、もう二度と罪を犯しませんと反省する。
 ゆかりちゃんは何の悪事を犯していないのに、そんな刑罰に処せられているかのように、うつむき、恥じ入っている。

 いや、ゆかりちゃんだって罪を犯している。短いスカートをはき、扇情的な姿で、男を誑かしているという罪。
 別に彼女が進んでやっていることではないのだけど。僕たちがそのようにしてくれと注文しているからだけど。

 しかし僕は酷い男だ。そんなゆかりちゃんを更に辱めるために、彼女にあからさまな視線を送ってしまうのだ。
 つまり、「見えた」というその瞬間、「お!」という顔をするのだ。

 ゆかりちゃんは僕の表情に気づいて、ますます恥ずかしそうな表情を浮かべる。その表情に僕は興奮してしまい、ますます彼女を辱めたくなる。
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