天使たちの水浴びシーン

アッシュ出版

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32)商品としてのゆかりちゃん、聖なる存在としてのゆかりちゃん

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 真面目で正義感が強くて、誠実で恥ずかしがり屋。それがゆかりちゃんの性格なんだけど、そんな性格の女の子って最高ではないだろうか。

 「そういうことは間違ってると思います!」と、些細なことでプンプンと怒り出す女子。
 実際はウザいかもしれない。お節介が過ぎて嫌になるかもしれない。
 でも、それと逆の性格を想定してみればわかるはずだ。
 その逆、不真面目で正義感が無く、平気で約束を破る厚顔無恥。ってことではない。そういう性格が最悪なのは言うまでもないから。
 「真面目で正義感が強い」の反対は、「清濁併せ持つ相対主義者」ってことではないだろうか。

 「あなたの立場だったら、そういう考えもあり得るかもしれないね」

 「この世界は、キレイごとだけでは渡っていけないもんね」

 つまり、そんな考え方の女子。
 そういう人物自体は、とても素晴らしいと思う。僕はそのような男になりたいよ。
 クリエーターたる者、善とか悪とかってナイーブなことは言ってられないさ。世の中は全て灰色で出来ているって考え方は素晴らしい。それこそが大人。
 しかし、そういう女の子は何か嫌だ。まっすぐで無垢なる存在であることを、僕は女子に求めてしまっているのだろう。
 まるで女子を子供扱いしてはいないか。そういう批判を受けるかもしれない。
 でもそれは事実で、その批判を受け止めなければいけない。とはいえ実際にゆかりちゃんは子供でもあり、つまり聖なる存在で、人間というよりも天使に近くて。

 おっと、本筋から逸れた。とにかく ゆかりちゃんは真面目で正義感が強くて、誠実で恥ずかしがり屋なので、今の自分の姿に戸惑いまくっているということが言いたいわけである。

 初めての撮影なのだから当然だと思う。緊張するのは仕方のないこと。
 今は制服姿だけど、普段、学校に行っているときとほぼ同じ姿だと思うのだけど、しかし完全に同じってわけではないはずで、そのスカートは少しだけ短く、そして多くの男たちが彼女を見ている。

 それより何より、ここにはカメラがあるのだ。
 うぶなゆかりちゃんだって、この撮影の意味というか目的を理解しているだろう。つまり、自分が扇情の対象でいるという事実。

 彼女は商品なのだ。
 いやいや、もちろん人間だよ。憲法で保障されている基本的人権を保持しているさ。
 しかしこの現場のゆかりちゃんは、1人の人間である以上に商品としての価値のほうが上回っている。
 だからこそ彼女は大切に扱われているのだ。そして、僕たちは彼女に要求出来るのだ。「見せろ!」と。

 スカートを翻せ! 
 前屈みになって、胸元をさらせ! 
 髪をかき上げ、舌をチロチロ出しながら、水飲み場で水を飲め! 

 何という異常な要求。しかし彼女は商品なのだから仕方がない。僕たちスタッフは、彼女に要求する権利を有している。ゆかりちゃんとの間に、そういう共通理解が成り立っている。

 彼女が勇気を見せること、彼女がサービスをすること、彼女が少し大胆になること、それだけで作品の価値は大きく変わる。
 彼女もそれをわかっていると思う。だから彼女は躊躇しながらも、本当に恥ずかしがりながら、それに精一杯応えようとしてくれている。

 自分が性的な対象として扱われているということに自覚的だろう。そういうのは面倒な自意識であるが、しかしそのような自意識がない存在は対象外だ。少なくとも僕の興味の対象ではない。
 彼女は思春期の悩める少女なのである。男性の視線に怯え、怯みながら、しかし誘いかけ、魅惑する。
 ゆかりちゃんは性の夢を既に見ている。寝室の暗闇、あの場所で何か営まれるのか、聞き及んでいる実存。

 さっきのこととつなげると、こうなる。真面目で正義感が強くて、誠実で恥ずかしがり屋だけど、大人の世界のことも知っていて、それを汚らわしいと思う一方で、それにも惹かれてしまうアンビバレンツ。
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