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6)駄目なイメージビデオ、三か条
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それからもう一つ、僕は担当さんにお願いしたいことがあった。
これまで散々我儘を聞いてもらい、更にまた要望を聞いていただくのは申し訳ない気持であったが、提案しないわけにはいかない。
これは素晴らしい作品を作るためには、何がなんでも必要なアイデアだから。
僕が思う駄目なイメージビデオ作品、三か条というものがある。
こういうパターンに陥っている作品は、残念な作品になり果ててしまうという三つの条件。
その第一がこれ。女の子の顔にすぐ、パンしてしまうカメラマン、である。
そもそもアイドルの女の子たちは、カメラ目線をしたがる。自分の顔をアピールしたがる生き物なのである。
それは多分、自分の顔こそ最大の魅力だと思っているからであろう。
でも大いなる勘違いだ。僕たちが見たいのは君の顔じゃない。おっぱいなんだ。お尻なのだ。脇腹なんだ。足の裏なんだ!
いや、もちろん顔も重要だよ。もっと正確に言うと、かわいい女の子のおっぱいであり、お尻である。それは事実なんですけどね。
でもイメージビデオは、身体こそ最重要アイテム。
とにかく女の子たちはカメラ目線をしたがる。たとえば、カメラマンがおっぱいにフォーカスしているとき、必死にカメラを覗き込むような動作をする。
するとカメラマンも優しいからなのか、それともジュニアアイドルのおっぱいをアップで撮影している自分が恥ずかしくなってしまうのか、すぐにおっぱいからカメラを引き上げて、顔にパンしてしまう。
その結果、胸の谷間のカットはわずか、女の子の笑顔ばかりの駄目イメージビデオが出来上がってしまうわけである。
彼女たちが見て欲しいのは、「自分の顔」だ。
それは仕方がない。自分の容姿に自信があればある程、その気持ちは強いだろう。それは理解出来る。
でもアイドルの女の子からの、その圧力に屈してしまったら、優れたイメージビデオは絶対に作れない。
もっと私の顔を撮って。
もっとかわいい私を撮影しなさい。
女の子からのそのアピール、それを撥ね退けるような強い意志を持ったカメラマンが必要だ。
必死でカメラにアピールして、笑顔を作っているアイドルちゃんを無視して、じっとおっぱいを取り続けることが出来るカメラマン。そういう男が必要です!
僕は担当者さんに向かってそれを説明した。
そもそも僕は口下手だし、何となくややこしい話しなので、説明するのに苦労したけれど、優しい担当者さんはまたもや一つ返事で回答をくれた。
「わかりました。撮影の前にカメラマンさんに言い聞かせましょう」
「はい。わかってくれて嬉しいです!」
「私だって出来るだけ良い作品を作りたいんです。出来るだけの協力がしたい」
「実はカメラマン問題で、もう一つお願いがあるのです・・・」
それに関してまだ更に、僕は優しい担当者んに向かって要望しなくてはいけないことがあった。ああ、何という厚かましさ。でも言わなくちゃいけない。
「女の子の自分の顔を撮ってアピール、それに屈しない強いカメラマン。もちろんカメラマンさんに個人的努力を促すのも重要です。でも限界があると思うんです。思わず女の子の笑顔にカメラがいってしまうなんてことがきっと起きてしまう。でも、その問題を根本的に解決することが出来る作戦があるんです」
僕は言った。
「はあ、なんでしょうか?」
「カメラマンを二人用意するんです。メインのカメラとサブのカメラってことです。二つのカメラがあれば、女の子もカメラ目線に必死になるということがなくなるはずです。万が一、一つのカメラで顔を撮ってしまっても、もう一個でばっちりと身体撮影可能のはず」
「ああ、なるほど。しかしもう一人カメラマンを雇うのはね、さすがに予算が・・・」
さすがにあの担当さんも口を濁らせた。
「はい、わかっています。でも大丈夫、それも僕がやりますから」
しかし僕は言う。僕自らでカメラを回すのだ。
「でも監督の仕事が疎かになりませんか?」
「ずっと回しません。ここぞというときだけなので。でも画質を落としたくないので、メインもカメラも同じカメラで撮りたい。それだけです! 僕のお願いは!」
これが叶えば、本当の女の子の真実が撮れるんです! 多角的に撮影出来るというか、何というか。
きっと誰も見たことがないような素晴らしい作品が出来るはずです!
はいはい、いいですよ。それでいきましょう。
担当者さんはこの提案も呑んでくれた。
「あっ、そういえば言い忘れてましたけど」
その打ち合わせの帰り際、担当者さんが僕を呼び止めた。
「同時に三つのビデオを作りましょうって言ったましたよね、でもあれ、なしの方向で」
「はあ?」
椎名美咲ちゃんのソロ、新人さんのソロ、そして二人が競演している作品、その三通りを作るってことになっていた。
一本につき7シーン。作品は三本だから21シーン必要。まだ21のアイデア全て用意していたわけではなかったのだけど、それに向かって僕は我武者羅に努力していた。
「あれはなしで」
しかし担当者さんは言う。
「えーと、つまり」
「共演作一本だけってことになりましたんで。普通、無理でしょ、新人ディレクターに三本なんて」
「それはそうですよね」
「そういうことになりましたから」
「わ、わかりました」
帰り際にギリギリ思い出すことかよ、おい! 最初に言ってくれよ、そんな重要なことは。
僕はそう思うのだけど、まあ、いいか。
これまで散々我儘を聞いてもらい、更にまた要望を聞いていただくのは申し訳ない気持であったが、提案しないわけにはいかない。
これは素晴らしい作品を作るためには、何がなんでも必要なアイデアだから。
僕が思う駄目なイメージビデオ作品、三か条というものがある。
こういうパターンに陥っている作品は、残念な作品になり果ててしまうという三つの条件。
その第一がこれ。女の子の顔にすぐ、パンしてしまうカメラマン、である。
そもそもアイドルの女の子たちは、カメラ目線をしたがる。自分の顔をアピールしたがる生き物なのである。
それは多分、自分の顔こそ最大の魅力だと思っているからであろう。
でも大いなる勘違いだ。僕たちが見たいのは君の顔じゃない。おっぱいなんだ。お尻なのだ。脇腹なんだ。足の裏なんだ!
いや、もちろん顔も重要だよ。もっと正確に言うと、かわいい女の子のおっぱいであり、お尻である。それは事実なんですけどね。
でもイメージビデオは、身体こそ最重要アイテム。
とにかく女の子たちはカメラ目線をしたがる。たとえば、カメラマンがおっぱいにフォーカスしているとき、必死にカメラを覗き込むような動作をする。
するとカメラマンも優しいからなのか、それともジュニアアイドルのおっぱいをアップで撮影している自分が恥ずかしくなってしまうのか、すぐにおっぱいからカメラを引き上げて、顔にパンしてしまう。
その結果、胸の谷間のカットはわずか、女の子の笑顔ばかりの駄目イメージビデオが出来上がってしまうわけである。
彼女たちが見て欲しいのは、「自分の顔」だ。
それは仕方がない。自分の容姿に自信があればある程、その気持ちは強いだろう。それは理解出来る。
でもアイドルの女の子からの、その圧力に屈してしまったら、優れたイメージビデオは絶対に作れない。
もっと私の顔を撮って。
もっとかわいい私を撮影しなさい。
女の子からのそのアピール、それを撥ね退けるような強い意志を持ったカメラマンが必要だ。
必死でカメラにアピールして、笑顔を作っているアイドルちゃんを無視して、じっとおっぱいを取り続けることが出来るカメラマン。そういう男が必要です!
僕は担当者さんに向かってそれを説明した。
そもそも僕は口下手だし、何となくややこしい話しなので、説明するのに苦労したけれど、優しい担当者さんはまたもや一つ返事で回答をくれた。
「わかりました。撮影の前にカメラマンさんに言い聞かせましょう」
「はい。わかってくれて嬉しいです!」
「私だって出来るだけ良い作品を作りたいんです。出来るだけの協力がしたい」
「実はカメラマン問題で、もう一つお願いがあるのです・・・」
それに関してまだ更に、僕は優しい担当者んに向かって要望しなくてはいけないことがあった。ああ、何という厚かましさ。でも言わなくちゃいけない。
「女の子の自分の顔を撮ってアピール、それに屈しない強いカメラマン。もちろんカメラマンさんに個人的努力を促すのも重要です。でも限界があると思うんです。思わず女の子の笑顔にカメラがいってしまうなんてことがきっと起きてしまう。でも、その問題を根本的に解決することが出来る作戦があるんです」
僕は言った。
「はあ、なんでしょうか?」
「カメラマンを二人用意するんです。メインのカメラとサブのカメラってことです。二つのカメラがあれば、女の子もカメラ目線に必死になるということがなくなるはずです。万が一、一つのカメラで顔を撮ってしまっても、もう一個でばっちりと身体撮影可能のはず」
「ああ、なるほど。しかしもう一人カメラマンを雇うのはね、さすがに予算が・・・」
さすがにあの担当さんも口を濁らせた。
「はい、わかっています。でも大丈夫、それも僕がやりますから」
しかし僕は言う。僕自らでカメラを回すのだ。
「でも監督の仕事が疎かになりませんか?」
「ずっと回しません。ここぞというときだけなので。でも画質を落としたくないので、メインもカメラも同じカメラで撮りたい。それだけです! 僕のお願いは!」
これが叶えば、本当の女の子の真実が撮れるんです! 多角的に撮影出来るというか、何というか。
きっと誰も見たことがないような素晴らしい作品が出来るはずです!
はいはい、いいですよ。それでいきましょう。
担当者さんはこの提案も呑んでくれた。
「あっ、そういえば言い忘れてましたけど」
その打ち合わせの帰り際、担当者さんが僕を呼び止めた。
「同時に三つのビデオを作りましょうって言ったましたよね、でもあれ、なしの方向で」
「はあ?」
椎名美咲ちゃんのソロ、新人さんのソロ、そして二人が競演している作品、その三通りを作るってことになっていた。
一本につき7シーン。作品は三本だから21シーン必要。まだ21のアイデア全て用意していたわけではなかったのだけど、それに向かって僕は我武者羅に努力していた。
「あれはなしで」
しかし担当者さんは言う。
「えーと、つまり」
「共演作一本だけってことになりましたんで。普通、無理でしょ、新人ディレクターに三本なんて」
「それはそうですよね」
「そういうことになりましたから」
「わ、わかりました」
帰り際にギリギリ思い出すことかよ、おい! 最初に言ってくれよ、そんな重要なことは。
僕はそう思うのだけど、まあ、いいか。
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