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9)笑顔
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天羽ゆかりちゃんの水着フィッティングは淡々と進んだ。
フィッテイングする水着ですら、事前にマネージャーさんたちの厳しいチェックに曝されている。ちょっと小さめの水着を着せ、その露出を楽しむ余地なんてものはなかった。
というわけで、この時間がエロエロ天国ということはありませんでしたよ。
まあ、それでも僕は興奮してましたけど。
「えーと、こういう感じです」などと言って、更衣室から現れた水着姿のゆかりちゃんが、僕たちの前で一回りする。
僕はそんな彼女の水着姿を堪能した。その肌の質感を楽しんではいた。
しかしそれはまだ本当のゆかりちゃんではないというか。
だって当然、胸元チラリとかしてくれないし、お尻を向けてよつんばになったりしない。
ただ単に、健全な姿の水着少女が現れたというだけ。
ゆかりちゃんの身体を堪能させていただくのは、本番の撮影シーンまで待とう。
それよりも僕はゆかりちゃんの笑顔に感じ入っていたのである。
シャイな照れ笑いを浮かべながら僕たちの前に現れるゆかりちゃん、その笑顔はとてもチャーミングだった。
笑顔は重要だ。とても重要だと思う。
暗い雰囲気の女の子では、イメージビデオは楽しくならない。
笑顔なんてどうでもいいよ。エロければいいんだ。そのような諸氏もおられるかもしれないが、しかし僕はそれでは駄目だと思うのだ。
健康的な世界観。ハッピーさ。多幸感。それらはとても重要。僕はこの作品を、夏休みの思い出のような作品にしたいのである。
「では、天羽はこれで終了です」
ゆかりちゃんは全ての衣装を着終えたようで、担当さんが僕にその旨を知らせる。「何か最後に言っておきたいことはありますか?」
「そ、そうね。本番までそんなに時間はないけどさ、少しでも女の子たちと仲を深めたいわけよ。だからゆかりちゃんのさ、ラインとか知っておきたいんだけど」
ゆかりちゃんも、彼女のマネージャーも聞いている。僕はオネエ言葉で担当さんに言った。
最初に僕がオネエ言葉で喋り出したときは、「え、この人ってこういう人だったんだ」という表情を浮かべたゆかりちゃんだったけど、既にそれなりの時間を一緒に過ごしている。僕のその言葉遣いにも馴れたようだ。それはマネージャーさんも同じで、出会ってすぐに示した警戒心もすっかり消えている。
今のところ、オネエ作戦は成功している。
「監督がそう言っているので、ゆかりちゃん、ラインのidを教えてくれないかな?」
「あっ、わかりました」
ゆかりちゃんは一つ返事でイエスと返す。マネージャーさんも別に止める様子はない。
まあ、これから一つの作品を作り上げることになるのだ。そんなことを拒否してくるわけはないだろうが、僕は安堵する。
僕は口下手だけど、文字でのコミュニケーションは得意だ。
というわけで、ラインで出来るだけ撮影前にコミュニケーションを深めておきたい。仲良くなっておきたい。
自分のアピール、この仕事にかける想いなどを彼女に送ろうと思っていたのである。
個人的に仲良くなりたいなんて下心もあるけど、それよりも素晴らしい作品を作りたいという熱意のほうが上回っている。
彼女は女優志望さんだ。この仕事だって女優の訓練になるんだよって、撮影前に洗脳しておきたいのだ。
それで彼女を操って、カメラの前なら何でもやっちゃう女の子にするわけである。
「では、天羽ゆかりはこれで終わりです。椎名美咲は少し遅れているようですけど、あと十分で到着する連絡が入りました」
担当さんが言う。
おお、ついに伝説の美少女、椎名美咲降臨か!
フィッテイングする水着ですら、事前にマネージャーさんたちの厳しいチェックに曝されている。ちょっと小さめの水着を着せ、その露出を楽しむ余地なんてものはなかった。
というわけで、この時間がエロエロ天国ということはありませんでしたよ。
まあ、それでも僕は興奮してましたけど。
「えーと、こういう感じです」などと言って、更衣室から現れた水着姿のゆかりちゃんが、僕たちの前で一回りする。
僕はそんな彼女の水着姿を堪能した。その肌の質感を楽しんではいた。
しかしそれはまだ本当のゆかりちゃんではないというか。
だって当然、胸元チラリとかしてくれないし、お尻を向けてよつんばになったりしない。
ただ単に、健全な姿の水着少女が現れたというだけ。
ゆかりちゃんの身体を堪能させていただくのは、本番の撮影シーンまで待とう。
それよりも僕はゆかりちゃんの笑顔に感じ入っていたのである。
シャイな照れ笑いを浮かべながら僕たちの前に現れるゆかりちゃん、その笑顔はとてもチャーミングだった。
笑顔は重要だ。とても重要だと思う。
暗い雰囲気の女の子では、イメージビデオは楽しくならない。
笑顔なんてどうでもいいよ。エロければいいんだ。そのような諸氏もおられるかもしれないが、しかし僕はそれでは駄目だと思うのだ。
健康的な世界観。ハッピーさ。多幸感。それらはとても重要。僕はこの作品を、夏休みの思い出のような作品にしたいのである。
「では、天羽はこれで終了です」
ゆかりちゃんは全ての衣装を着終えたようで、担当さんが僕にその旨を知らせる。「何か最後に言っておきたいことはありますか?」
「そ、そうね。本番までそんなに時間はないけどさ、少しでも女の子たちと仲を深めたいわけよ。だからゆかりちゃんのさ、ラインとか知っておきたいんだけど」
ゆかりちゃんも、彼女のマネージャーも聞いている。僕はオネエ言葉で担当さんに言った。
最初に僕がオネエ言葉で喋り出したときは、「え、この人ってこういう人だったんだ」という表情を浮かべたゆかりちゃんだったけど、既にそれなりの時間を一緒に過ごしている。僕のその言葉遣いにも馴れたようだ。それはマネージャーさんも同じで、出会ってすぐに示した警戒心もすっかり消えている。
今のところ、オネエ作戦は成功している。
「監督がそう言っているので、ゆかりちゃん、ラインのidを教えてくれないかな?」
「あっ、わかりました」
ゆかりちゃんは一つ返事でイエスと返す。マネージャーさんも別に止める様子はない。
まあ、これから一つの作品を作り上げることになるのだ。そんなことを拒否してくるわけはないだろうが、僕は安堵する。
僕は口下手だけど、文字でのコミュニケーションは得意だ。
というわけで、ラインで出来るだけ撮影前にコミュニケーションを深めておきたい。仲良くなっておきたい。
自分のアピール、この仕事にかける想いなどを彼女に送ろうと思っていたのである。
個人的に仲良くなりたいなんて下心もあるけど、それよりも素晴らしい作品を作りたいという熱意のほうが上回っている。
彼女は女優志望さんだ。この仕事だって女優の訓練になるんだよって、撮影前に洗脳しておきたいのだ。
それで彼女を操って、カメラの前なら何でもやっちゃう女の子にするわけである。
「では、天羽ゆかりはこれで終わりです。椎名美咲は少し遅れているようですけど、あと十分で到着する連絡が入りました」
担当さんが言う。
おお、ついに伝説の美少女、椎名美咲降臨か!
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