17 / 92
17)二人きりの密室
しおりを挟む
「えーと、マネージャーさん、ここは僕に任せてくれないかしら」
僕は自分がオネエキャラだということをかろうじて思い出す。
「撮影直前になって、タレントがごね始めるなんて問題ですよね? そもそも、これはあなたの責任じゃないのかしら?」
このマネージャーさんの力不足でこのような事態を招いたことは事実である。無茶な言いがかりではないはずだ。
そこを厳しく突っ込めば、マネージャーさんも言い返すことは出来ないだろう。
「ああ、はい」
確かにそうかもしれません。しかし密室で男性とこの子を二人にするわけにはいかないのです。
はっきりとそういうわけではないが、このような言葉をマネージャーさんはモゴモゴと言ってくる。
「彼女、降板させたいの?」
僕は言った。「このままじゃそうなるよね?」
「いえ、私がちゃんと説得します」
「あなたじゃ無理なの」
「そんなことありません」
「僕を信頼して」
僕は言った。「ゆかりちゃんもそっちのほうがいいでしょ?」
ゆかりちゃんはまだ顔を伏せたままだったけど、コクリと頷いた。
そうなのである。そもそも、ゆかりちゃんとこのマネージャーさんとの間がしっくりといっていないようなのだ。
マネージャーさんは中年の女性。真面目で堅物。性的なことを忌み嫌っているところがある。そういう雰囲気を言葉の端々から感じる。
そんな彼女の前で水着姿になるのが恥ずかしい。ゆかりちゃんが怖気ついた理由の中には、そういう事情もある。
僕はそれも知っていた。だからこそ、このような強気なセリフが言えたのである。
ゆかりちゃんを解放的な気分にさせるのは、この過保護な保護者から切り離す必要があるのだ。
「彼女が降板ってことになったら、あんたも会社の偉い人に怒られるでしょ。ここは僕に任せて」
僕はウインクしながら言った。こいつはおかまだ。二人きりにしても丈夫だろう。そういう油断をさせるためのウインクである。
「しかしですね」
「じゃあ、ゆかりちゃんと二人で相談して。三分、時間をあげるから。二人で答えを出して」
「わかりました」
マネージャーさんはゆかりちゃんと小声で相談を始める。ゆかりちゃんは頷いたり、首を振ったりしている。大丈夫です。そのような声も聞こえる。
「どこか触られたりしたら、大きな声を出しなさいよ」
マネージャーさんは言う。多分、わざと僕に聞こえるようにだ。
「わかってます」
「水着は脱がなくていいのよ」
「あ、当たり前ですよ・・・」
ゆかりちゃんも心配性のマネージャーさんに苦笑いだ。
とはいえ、話し合いは終わったようだ。
「仕方ありません、ではここはあなたに任せます」
「何も心配はありませんよ」
マネージャーさんは少し恨めし気に僕をにらみつつも、すみやかに部屋を出ていく。ああ、これでゆかりちゃんと二人きりか。
僕はゴクリと唾を飲み込みながら、ゆかりちゃんを見る。彼女は扉から出ていくマネージャーさんを見送っている。
そのパジャマの後ろ姿。薄い生地越しに水着のラインが透けて見えそうだ。
水着がお尻の割れ目に食い込んでいるかもしれない。立ったり座ったりしていたから、そうなっていて当然だ。そもそも、彼女の大きなお尻をすっかり隠してしまう水着なんてないだろう。
僕は自分がオネエキャラだということをかろうじて思い出す。
「撮影直前になって、タレントがごね始めるなんて問題ですよね? そもそも、これはあなたの責任じゃないのかしら?」
このマネージャーさんの力不足でこのような事態を招いたことは事実である。無茶な言いがかりではないはずだ。
そこを厳しく突っ込めば、マネージャーさんも言い返すことは出来ないだろう。
「ああ、はい」
確かにそうかもしれません。しかし密室で男性とこの子を二人にするわけにはいかないのです。
はっきりとそういうわけではないが、このような言葉をマネージャーさんはモゴモゴと言ってくる。
「彼女、降板させたいの?」
僕は言った。「このままじゃそうなるよね?」
「いえ、私がちゃんと説得します」
「あなたじゃ無理なの」
「そんなことありません」
「僕を信頼して」
僕は言った。「ゆかりちゃんもそっちのほうがいいでしょ?」
ゆかりちゃんはまだ顔を伏せたままだったけど、コクリと頷いた。
そうなのである。そもそも、ゆかりちゃんとこのマネージャーさんとの間がしっくりといっていないようなのだ。
マネージャーさんは中年の女性。真面目で堅物。性的なことを忌み嫌っているところがある。そういう雰囲気を言葉の端々から感じる。
そんな彼女の前で水着姿になるのが恥ずかしい。ゆかりちゃんが怖気ついた理由の中には、そういう事情もある。
僕はそれも知っていた。だからこそ、このような強気なセリフが言えたのである。
ゆかりちゃんを解放的な気分にさせるのは、この過保護な保護者から切り離す必要があるのだ。
「彼女が降板ってことになったら、あんたも会社の偉い人に怒られるでしょ。ここは僕に任せて」
僕はウインクしながら言った。こいつはおかまだ。二人きりにしても丈夫だろう。そういう油断をさせるためのウインクである。
「しかしですね」
「じゃあ、ゆかりちゃんと二人で相談して。三分、時間をあげるから。二人で答えを出して」
「わかりました」
マネージャーさんはゆかりちゃんと小声で相談を始める。ゆかりちゃんは頷いたり、首を振ったりしている。大丈夫です。そのような声も聞こえる。
「どこか触られたりしたら、大きな声を出しなさいよ」
マネージャーさんは言う。多分、わざと僕に聞こえるようにだ。
「わかってます」
「水着は脱がなくていいのよ」
「あ、当たり前ですよ・・・」
ゆかりちゃんも心配性のマネージャーさんに苦笑いだ。
とはいえ、話し合いは終わったようだ。
「仕方ありません、ではここはあなたに任せます」
「何も心配はありませんよ」
マネージャーさんは少し恨めし気に僕をにらみつつも、すみやかに部屋を出ていく。ああ、これでゆかりちゃんと二人きりか。
僕はゴクリと唾を飲み込みながら、ゆかりちゃんを見る。彼女は扉から出ていくマネージャーさんを見送っている。
そのパジャマの後ろ姿。薄い生地越しに水着のラインが透けて見えそうだ。
水着がお尻の割れ目に食い込んでいるかもしれない。立ったり座ったりしていたから、そうなっていて当然だ。そもそも、彼女の大きなお尻をすっかり隠してしまう水着なんてないだろう。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる