天使たちの水浴びシーン

アッシュ出版

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21)理系的説得

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 「じゃあ、ゆかりちゃん、このままの姿勢、そう、このままね。このままパジャマを脱いでいこうか。下のほうからだ」

 え! 

 ゆかりちゃんが声を上げる。監督さん、何てことを言い出すんですか! 

 そのようなリアクションだ。僕が予想していた中での最悪の反応。
 しかし僕は落ち着いて対処する。いや、むしろこの反応を待っていたのである。

 「ゆかりちゃん、立って脱ぐほうが恥ずかしいでしょ? 君にとって初めての脱衣シーンだ。恥ずかしいのは当たり前。だからさ、このまま横になった姿勢で脱いだほうが気が楽よね?」

 僕は少しの迷いを自分の声に滲ませることなく、断固とした口調で言う。これがこの世界の圧倒的常識だぜ、という態度だ。

 あれ、そんなものなのですか??? 

 ゆかりちゃんが困惑している。
 困惑しながらも、僕に騙されようとしている。

 「まあ、理系の学問をかじった人ならば、当たり前のことなんだけど。立った姿勢と、寝転んだ姿勢では、見える面積が違うわけなんだよ。見える面積と比例するからさ、人の羞恥心というのは。とてもわかりやすい話しだと思うけど」

 まるで理系とは縁のない僕は言う。

 「はあ、そういうものですか・・・」

 うん、そういうものなんだよ。

 うぶ過ぎるゆかりちゃんを欺くのは少しだけ心が痛い。
 うん、少しだけだ。それ以上に僕は、「してやったり」という心境。

 「だから、このまま脱ごう、さあ」

 僕は促す。

 「わ、わかりました」

 ゆかりちゃんは返事した。
 わかったと言ったのだ。すなわち彼女は、脱ぎますと言ったのです。

 「あんまり、こうやって脱ぐことなんてないですよ。どうやったら脱げるのかなあ、えーと、えーと」

 ゆかりちゃんは僕も戸惑ってしまう速度で、すぐに脱ぎ始めた。

 もう少し焦らしてくれてもいいのに。しかし少しでも躊躇すれば、逆に脱げなくなってしまうと、彼女なりに判断したのかもしれない。

 もちろん僕はカメラを構えている。ぬかりはない。
 ゆかりちゃんの指が、パジャマのウエストのゴムのあの部分にかかる。彼女は力を込めて、それをずり下げていく。
 ズボンがずり下がっていくと共に、ゆかりちゃんはお尻を突き出していく。
 それはきっとエロティシズムを意識したのではなくて、ただ単にそれが人体の構成上、これが脱ぎやすい姿勢だったからだろう。
 しかしそのエロさ! 

 ズボンがずれていき、上着との隙間に水着の生地が現れる。ゆかりちゃんが手を動かすにつれて、その面積が少しずつ大きくなる。
 そして、「お尻」と呼べるような部位が、僕たちの前に露出されたのだ。

 ゆ、ゆかりちゃん、本当にいいの? 

 僕はそんなことを言いそうになる。これは初体験のときに、言いたかったセリフだ。本当に僕に全部を見せてくれていいの? 
 恋人にそう言いたかった人生であったが、そんなこと言える機会もないまま、この年齢を迎えた。

 しかし思春期に言えなかったそのセリフを、今、言えるチャンスを与えられているのだ、きっと。

 ゆかりちゃん、本当にいいの? 
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