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24)見せない女子
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とても良い天気。太陽の光がキラキラしている。カメラは正面。椎名美咲ちゃんが自転車に乗る。
学生カバンを籠に入れ、サドルにまたがろうとする美咲ちゃん。
美咲ちゃんがゆっくりと足を上げる。そのとき、まばゆい光が画面に降り注ぐ。スカートが少しめくれて、さっきまでは隠れていた美咲ちゃんんの白い太ももが見える。
しかし下着、というか実際は水着であるわけであるが、それは見えない。
見える気配、すなわち、スカートの中の暗闇が一瞬だけ映る。
でも肝心の下着だか水着だかは見えない。
ところで水着だけど下着、下着だけど水着、そのあやふやな何物かに名前をつけなければいけないであろう。
下水着、水下着、駄目だ、センスが無さすぎる。水と下が続くと、「下水道」感が漂ってしまう。何か良いネーミングはないであろうか。
いや、そんなことよりも撮影。
「カット! オーケー」
僕は頷く。
しかし美咲ちゃんが首を傾げている。
「ちゃんと見えました? 見せたほうがいいんですよね?」
美咲ちゃんがそんなことを言ってくる。
ああ、なるほど。彼女はそのことを案じていたのか。
「いや、ここはまだ見せなくていいんだ」
「そうなんですか」
「ごめん、事前に言っておくべきだったかもしれないね。自転車に乗っているシーンも別に見せないでいいよ」
まず、椎名美咲ちゃんは「見せない女子」として出現するのだ。
校則通りのスカート。少しお転婆だけど、身持ちの堅そうな振る舞い。その全てに清楚感が溢れている、そんな女子。
彼女は普通の日常で生活している、普通の女の子の行動しか取らない。短過ぎるスカートで登場して、わざと中身を見せつけるような真似はしない。
だって下品じゃないか。ありえないじゃないか。そんな女の子が魅力的なわけじゃないじゃないか。
もちろん見せつける場面では見せつけて貰うわけだけどさ、でも、ちょっとしゃがんだだけで見えてしまうスカートは嫌いだ。僕の趣味に合わない。
まあ、この作品を観ている方々は、しばらく退屈してしまうかもしれない。全然エロくないぞ。こんなのが見たかったわけじゃない。そのような憤りを感じる人もいるだろう。
ただ、可愛い女子が、自転車に乗っているだけ。何だよ、この教育番組みたいな健全さは。ファック過ぎるぜ。
それでいい。まずは彼らを落胆させる。
しかしそれはネタふりなんだ。見せないはずの女の子のが見えてしまったという偶然を演出するための。そのとき、君たちは本当のエロスを目撃するはずなのだ。
「自転車に乗っているシーンは、とにかく自然に振る舞うことが重要なんだ。坂道では立ち漕ぎして、信号待ちでは片足だけ下して」
美咲ちゃんは頷く。撮影再開。自転車に乗っている美咲ちゃんを、並走するカメラで捉えるシーン。
突然だけど、僕は自転車が好きだ。いや、自転車に乗っている女子が好きなのだろう。
サドル、ペダル、ハンドル、車輪、髪を乱す爽やかな風。
自転車に乗る女の子たちは、あらゆるイメージビデオに溢れている凡庸な光景だ。しかしそれは僕たち日本人の日常の風景であり、その日常の中で僕たちは生活している。
少しも特別ではない。普通に街で出くわす場面。それなのに、自転車に乗っている制服女子はヤバい。
スカートと自転車との相性が、きっと良過ぎるからだ。いや、女性側からすれば、悪過ぎるのかもしれないけれど。
ただ彼女たちは移動しているだけなのに、まるで僕たちを誘惑しているかのようだ。スカートをめくり、太ももを露出し、いや、もちろん勘違いなのだけど、でもこちらはそう思ってしまうのだから仕方がない。
日常生活では、僕たちは自転車女子から目を逸らしてしまうはずだ。恥ずかしくて、見てはいけないと自分を抑制して。
でもこの作品を見るあなたたちは、そんなこと気にすることはない。思う存分に、見て欲しい。自転車に乗る美少女、椎名美咲ちゃんの姿を。
カメラは今、彼女のめくれ上がりそうなスカートと、太陽に眩しい白い太ももを映している。
学生カバンを籠に入れ、サドルにまたがろうとする美咲ちゃん。
美咲ちゃんがゆっくりと足を上げる。そのとき、まばゆい光が画面に降り注ぐ。スカートが少しめくれて、さっきまでは隠れていた美咲ちゃんんの白い太ももが見える。
しかし下着、というか実際は水着であるわけであるが、それは見えない。
見える気配、すなわち、スカートの中の暗闇が一瞬だけ映る。
でも肝心の下着だか水着だかは見えない。
ところで水着だけど下着、下着だけど水着、そのあやふやな何物かに名前をつけなければいけないであろう。
下水着、水下着、駄目だ、センスが無さすぎる。水と下が続くと、「下水道」感が漂ってしまう。何か良いネーミングはないであろうか。
いや、そんなことよりも撮影。
「カット! オーケー」
僕は頷く。
しかし美咲ちゃんが首を傾げている。
「ちゃんと見えました? 見せたほうがいいんですよね?」
美咲ちゃんがそんなことを言ってくる。
ああ、なるほど。彼女はそのことを案じていたのか。
「いや、ここはまだ見せなくていいんだ」
「そうなんですか」
「ごめん、事前に言っておくべきだったかもしれないね。自転車に乗っているシーンも別に見せないでいいよ」
まず、椎名美咲ちゃんは「見せない女子」として出現するのだ。
校則通りのスカート。少しお転婆だけど、身持ちの堅そうな振る舞い。その全てに清楚感が溢れている、そんな女子。
彼女は普通の日常で生活している、普通の女の子の行動しか取らない。短過ぎるスカートで登場して、わざと中身を見せつけるような真似はしない。
だって下品じゃないか。ありえないじゃないか。そんな女の子が魅力的なわけじゃないじゃないか。
もちろん見せつける場面では見せつけて貰うわけだけどさ、でも、ちょっとしゃがんだだけで見えてしまうスカートは嫌いだ。僕の趣味に合わない。
まあ、この作品を観ている方々は、しばらく退屈してしまうかもしれない。全然エロくないぞ。こんなのが見たかったわけじゃない。そのような憤りを感じる人もいるだろう。
ただ、可愛い女子が、自転車に乗っているだけ。何だよ、この教育番組みたいな健全さは。ファック過ぎるぜ。
それでいい。まずは彼らを落胆させる。
しかしそれはネタふりなんだ。見せないはずの女の子のが見えてしまったという偶然を演出するための。そのとき、君たちは本当のエロスを目撃するはずなのだ。
「自転車に乗っているシーンは、とにかく自然に振る舞うことが重要なんだ。坂道では立ち漕ぎして、信号待ちでは片足だけ下して」
美咲ちゃんは頷く。撮影再開。自転車に乗っている美咲ちゃんを、並走するカメラで捉えるシーン。
突然だけど、僕は自転車が好きだ。いや、自転車に乗っている女子が好きなのだろう。
サドル、ペダル、ハンドル、車輪、髪を乱す爽やかな風。
自転車に乗る女の子たちは、あらゆるイメージビデオに溢れている凡庸な光景だ。しかしそれは僕たち日本人の日常の風景であり、その日常の中で僕たちは生活している。
少しも特別ではない。普通に街で出くわす場面。それなのに、自転車に乗っている制服女子はヤバい。
スカートと自転車との相性が、きっと良過ぎるからだ。いや、女性側からすれば、悪過ぎるのかもしれないけれど。
ただ彼女たちは移動しているだけなのに、まるで僕たちを誘惑しているかのようだ。スカートをめくり、太ももを露出し、いや、もちろん勘違いなのだけど、でもこちらはそう思ってしまうのだから仕方がない。
日常生活では、僕たちは自転車女子から目を逸らしてしまうはずだ。恥ずかしくて、見てはいけないと自分を抑制して。
でもこの作品を見るあなたたちは、そんなこと気にすることはない。思う存分に、見て欲しい。自転車に乗る美少女、椎名美咲ちゃんの姿を。
カメラは今、彼女のめくれ上がりそうなスカートと、太陽に眩しい白い太ももを映している。
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