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25)禁じられた覗き見
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さて、次は天羽ゆかりちゃんも登校シーンの撮影。
彼女も自転車に乗って、学校に向かっている。
ゆかりちゃんのスカートは短い。椎名美咲ちゃんのよりもずっと。
ありえないほどに短いわけではないけれど、おいおい、ヤバいだろというくらいの短さ。
太ももは見えている。前屈みになれば、後ろから下着がギリギリ見えてしまうサイズ。
椎名美咲ちゃんと天羽ゆかりちゃんの役割りは違う。
美咲ちゃんはそれなりのキャリアもあり、この世界では有名人、成功者なのだ。既に彼女のイメージは出来上がっている。
そのイメージをなぞり、裏切り、新しい美咲ちゃんの魅力を演出する。それが僕の仕事。
美咲ちゃんは今までの作品において、それなりに大胆なことをやってきている。自分でスカートをめくりあげたり、スクール水着の胸の部分を開けて、谷間を見せつけたり。
可愛いのに大胆。それが美咲ちゃんである。
一方の天羽ゆかりちゃんは新人である。しかも何かとNGが多い。
美咲ちゃんのような大胆な脱ぎっぷりを見せることは無理である。これは契約上、不可能だ。
枠がある。リミットがある。
その範囲内で、どれだけ素晴らしい作品が作れるか、それが僕のミッション。
ゆかりちゃんは見せない女子だ。
水着にはなるのに、スカートの中の水着は見せない。
なぜかこの業界では、水着姿よりも、パンチラのほうが(水着チラに過ぎないわけであるが)、価値があることになっていて、惜しみなく水着姿を晒すアイドルであっても、スカートの中の水着は見せない。
それは胸の場合も同じであろう。水着の胸の谷間は見せてくれるけど、前屈みになったとき、襟が開いて、胸の谷間を見せてくれるアイドルは少ない。
窃視がいけないのかもしれない。覗き見が禁じられているに違いない。
隙間から見えてしまう、そのような行為が不健全で、そのアイドルの価値を貶めてしまうものであると考えられているのだろう。
しかしだからこそ、とてもエロチックなのである。我々はそれを待望しているのである。
僕たちはそのルールをかいくぐり、ゆかりちゃんの魅惑的部分を撮影しなければいけないわけだ。
当然のこと、撮影現場では、不可抗力で見えてしまう。見えるか見えないからくらいのサイズのスカートなのだから仕方がない。
スタッフにとってはラッキー。客が見れないものを、俺たちは見れるという優越感。
しかし僕は別にそんなことは望んでいない。その撮影現場の興奮を、作品に収めたいわけであって、現場のせこいエロで満足する気はない。
つまり、みんなと共有したいんだよ。そのためにはゆかりちゃんのマネージャーさんを説得しなければいけない。これをやれば、ゆかりちゃんにとって得だということを納得させるのだ。
さて、ゆかりちゃんも自転車に乗っている。けっこう短めのスカートだけど、意外と大丈夫なもので、カットせずに、全ての映像がそのまま使えそうだ。つまり、下着というか水着は見えない。
画面には彼女の健康的な太ももだけが躍動している。
スカートの裾はアクロバティックなダンスをして、ひるがえり、めくれ上がり、太ももの露出は激しい。だけどギリギリで見えない。
でも僕の中で、何か物足りない。不満というか、作品としてはこれで良いわけなのだけど、どこか心が満たされない。
結局のところ、ゆかりちゃんのスカートの中が見えていないということが残念なのかもしれない。
現場のせこいエロなんて求めていないと言ったくせに、やっぱり僕はそれが見たいのだろう。
本当に情けないことである。だけど見たい。見たいのだ。わりと、今すぐに。
パジャマから着替えるときに撮影したあの白の水着を。水着であるが、スカートの中から見えるとき、下着に変わる魔法の素材。
そんな僕の気も知らず、ゆかりちゃんが自転車を押して僕たちのところに戻ってきた。
ゆかりちゃんの頬は赤く上気していた。自転車を走らせて、ひと汗かいたという趣き。一つの仕事を終えて満足しているけど、こんな感じで良いのですかと不安げな表情もしている。
「もう一回撮りたいんだけど」
そんなゆかりちゃんに僕は言う。
「も、もう一回ですか?」
「そうだな、あの坂を立ち漕ぎで上るシーンが欲しいな」
ちょうど右手側に坂があった。それほど急勾配ではない。緩やかな坂だ。でも長い。それを見て、僕はピンと来たのだ。
「は、はい、わかりました」
スタッフにも不満はないようだ。撮影は簡単だからだ。ただ単に自転車に乗っているゆかりちゃんを、バイクに乗って追いかければいいだけだから。撮影の準備なんて不必要。
不満があるとすれば、美咲ちゃんサイドだろうか。美咲ちゃんの自転車シーンはあっさりと終了したのに、ゆかりちゃんは別のテイクも撮る。ゆかりちゃん贔屓? そう思われても仕方がない。
しかし美咲ちゃんは無言。別に怒ったっていう表情もしていない。
「カメラマンさんたちは横からで。で、僕も後ろから追いかけて撮ろうかな」
僕は言う。その言葉で少しだけ現場はざわついた。カメラマンの仕事に何か不満があるのかと受け取られたからだ。
しかしカメラが二つというのが、そもそものこの作品の趣旨。
「僕を後ろに乗せて、誰かにバイクを運転して欲しいのだけど?」
僕はスタッフを見渡しながら言う。一人のADが頷く。そういうわけで、別テイクの撮影開始。
立ち漕ぎをしている自転車女子を後ろから撮影する。すると何が起きるのか、僕は知っている。
彼女も自転車に乗って、学校に向かっている。
ゆかりちゃんのスカートは短い。椎名美咲ちゃんのよりもずっと。
ありえないほどに短いわけではないけれど、おいおい、ヤバいだろというくらいの短さ。
太ももは見えている。前屈みになれば、後ろから下着がギリギリ見えてしまうサイズ。
椎名美咲ちゃんと天羽ゆかりちゃんの役割りは違う。
美咲ちゃんはそれなりのキャリアもあり、この世界では有名人、成功者なのだ。既に彼女のイメージは出来上がっている。
そのイメージをなぞり、裏切り、新しい美咲ちゃんの魅力を演出する。それが僕の仕事。
美咲ちゃんは今までの作品において、それなりに大胆なことをやってきている。自分でスカートをめくりあげたり、スクール水着の胸の部分を開けて、谷間を見せつけたり。
可愛いのに大胆。それが美咲ちゃんである。
一方の天羽ゆかりちゃんは新人である。しかも何かとNGが多い。
美咲ちゃんのような大胆な脱ぎっぷりを見せることは無理である。これは契約上、不可能だ。
枠がある。リミットがある。
その範囲内で、どれだけ素晴らしい作品が作れるか、それが僕のミッション。
ゆかりちゃんは見せない女子だ。
水着にはなるのに、スカートの中の水着は見せない。
なぜかこの業界では、水着姿よりも、パンチラのほうが(水着チラに過ぎないわけであるが)、価値があることになっていて、惜しみなく水着姿を晒すアイドルであっても、スカートの中の水着は見せない。
それは胸の場合も同じであろう。水着の胸の谷間は見せてくれるけど、前屈みになったとき、襟が開いて、胸の谷間を見せてくれるアイドルは少ない。
窃視がいけないのかもしれない。覗き見が禁じられているに違いない。
隙間から見えてしまう、そのような行為が不健全で、そのアイドルの価値を貶めてしまうものであると考えられているのだろう。
しかしだからこそ、とてもエロチックなのである。我々はそれを待望しているのである。
僕たちはそのルールをかいくぐり、ゆかりちゃんの魅惑的部分を撮影しなければいけないわけだ。
当然のこと、撮影現場では、不可抗力で見えてしまう。見えるか見えないからくらいのサイズのスカートなのだから仕方がない。
スタッフにとってはラッキー。客が見れないものを、俺たちは見れるという優越感。
しかし僕は別にそんなことは望んでいない。その撮影現場の興奮を、作品に収めたいわけであって、現場のせこいエロで満足する気はない。
つまり、みんなと共有したいんだよ。そのためにはゆかりちゃんのマネージャーさんを説得しなければいけない。これをやれば、ゆかりちゃんにとって得だということを納得させるのだ。
さて、ゆかりちゃんも自転車に乗っている。けっこう短めのスカートだけど、意外と大丈夫なもので、カットせずに、全ての映像がそのまま使えそうだ。つまり、下着というか水着は見えない。
画面には彼女の健康的な太ももだけが躍動している。
スカートの裾はアクロバティックなダンスをして、ひるがえり、めくれ上がり、太ももの露出は激しい。だけどギリギリで見えない。
でも僕の中で、何か物足りない。不満というか、作品としてはこれで良いわけなのだけど、どこか心が満たされない。
結局のところ、ゆかりちゃんのスカートの中が見えていないということが残念なのかもしれない。
現場のせこいエロなんて求めていないと言ったくせに、やっぱり僕はそれが見たいのだろう。
本当に情けないことである。だけど見たい。見たいのだ。わりと、今すぐに。
パジャマから着替えるときに撮影したあの白の水着を。水着であるが、スカートの中から見えるとき、下着に変わる魔法の素材。
そんな僕の気も知らず、ゆかりちゃんが自転車を押して僕たちのところに戻ってきた。
ゆかりちゃんの頬は赤く上気していた。自転車を走らせて、ひと汗かいたという趣き。一つの仕事を終えて満足しているけど、こんな感じで良いのですかと不安げな表情もしている。
「もう一回撮りたいんだけど」
そんなゆかりちゃんに僕は言う。
「も、もう一回ですか?」
「そうだな、あの坂を立ち漕ぎで上るシーンが欲しいな」
ちょうど右手側に坂があった。それほど急勾配ではない。緩やかな坂だ。でも長い。それを見て、僕はピンと来たのだ。
「は、はい、わかりました」
スタッフにも不満はないようだ。撮影は簡単だからだ。ただ単に自転車に乗っているゆかりちゃんを、バイクに乗って追いかければいいだけだから。撮影の準備なんて不必要。
不満があるとすれば、美咲ちゃんサイドだろうか。美咲ちゃんの自転車シーンはあっさりと終了したのに、ゆかりちゃんは別のテイクも撮る。ゆかりちゃん贔屓? そう思われても仕方がない。
しかし美咲ちゃんは無言。別に怒ったっていう表情もしていない。
「カメラマンさんたちは横からで。で、僕も後ろから追いかけて撮ろうかな」
僕は言う。その言葉で少しだけ現場はざわついた。カメラマンの仕事に何か不満があるのかと受け取られたからだ。
しかしカメラが二つというのが、そもそものこの作品の趣旨。
「僕を後ろに乗せて、誰かにバイクを運転して欲しいのだけど?」
僕はスタッフを見渡しながら言う。一人のADが頷く。そういうわけで、別テイクの撮影開始。
立ち漕ぎをしている自転車女子を後ろから撮影する。すると何が起きるのか、僕は知っている。
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