24 / 26
Case.5 霊鬼
第二十四話
しおりを挟む
「なんなんだよこの数ー!」
「名津、うるさい」
ははは……。この人達は流石だなぁ。こんな状況でもびくともしないや。
「つーか、凛津はともかく、何でオレがここまで来てんの?」
大分今更な疑問を、名津君が口にする。
「うーん……。何でだろうね」
と言いつつも、私でも答えはわかってる。あの騒動以来、凛津ったら、名津君がいないと、全然駄目なんだもん。
夏休みに、校外で出た鬼を退治したときは大変だったなぁ~……。
教室を出た私達を待っていたのは、今まで見たこともないような、鬼の群れ。有名なものから、名前も知らないものまで、色々な種類が入り交じっている。名津君が音をあげるのも仕方ない。
今、この場の鬼を対処しているのは、私と凛津と名津君の三人。他の先輩方は、そこらじゅうに溢れる鬼の対処に向かった。
特に、中庭の状況は酷い。下校時刻直前ということで、人っ子一人いない。その代わりに鬼がひしめいていた。
その対処は、清水先輩がしている。「これくらいなら大丈夫だよ~」という台詞と笑顔、そして直後の術の激しさが怖かった。
凛津が思わず「うわぁ、凄い」と言うものだから、相当なんだろう。敵じゃなくてよかったと、本気で思った。
会長さんと鬼頭先輩も、至るところから湧き出てくる鬼を討伐している。そこは中等部の校舎の近くだ。
中等部の専部の子達の救援だ。二人しかいないのに巻き込んでしまって、本当、申し訳ない。
高等部の校舎から〈酒呑童子〉の封印場所まではかなり距離がある。
早く、早くと急かす自分がいる。
その気持ちとは逆に、そううまくいかないよと、現実に教えられる。
いくら倒しても、鬼の量は減らない。さっきみたいな余裕もない。
「おい、澪! ちょっと待てよ!」
一人でずんずん進んでいく私に、名津君が声をかけた。
それも気にせず、私はある場所で足を止め、こう呟いた。
「ここが、〈酒呑童子〉の封印場所だ」
その場所から、数えきれないほどの鬼が湧き出てきていた。
「……ほんっとに切りがねえな」
名津君さえもうんざりした顔をしている。
「大将を叩かないと終わらない。あいつ、そんなに強くないくせに、引き付ける力だけはすごいみたい」
前に会長さんが、〈酒呑童子〉や〈茨木童子〉──鬼頭先輩──が来たときも、一時的に鬼が活発化したと言っていた。今回も似たような状況なのだろう。
「何でそんなに引き付けてくんのかなぁ……」
名津君はまだ文句を言っている。
私も彼も、鬼について詳しいわけじゃない。だから、凛津の知識に頼るしかないんだけど──。
「……知らない」
あ、ソウデスカ。
「でも、これだけは確か。鬼の数がどんどん増えてるってことは、〈霊鬼〉の力が増してるってこと。つまり──」
「時間切れが近い?」
「ご名答」
凛津は微笑んでいる。彼女に誉められるのって、なんだか変な感じだ。
「ここが封印場所だったんでしょ?」
私の記憶が確かなら。
──ううん。こんな自信がないような答え方じゃ、駄目だ。
「……そう」
「じゃあ、頑張ってきて」
凛津はそう言いながら、私の頭をなでてくる。
どう返せばいいのかわからなくて、されるがままになる。
強いて言うなら、こんなやり取りしてないで、独りで戦ってる名津君助けてあげようよ。
「あ、あの、凛津……」
私が弱々しくそう言ったところで、凛津は私の頭から手を離した。
「それ、凛津なりの励ましらしいよ」
名津君が補完してくれた。
照れているのか、凛津は「うるさい」と言いながら、名津君の横腹をつついている。
緊張感全くないなぁ……。
「私なら大丈夫だよ。多分、有馬先輩もいる」
そう言って、低木の影の前に立つ。
私がこれを見つけなかったら、こんなことにはなっていなかった。有馬先輩も、真冬さんも、犠牲になることはなかった。
これは、私のけじめでもあるんだ。
「ももに責任はない」
唐突に言われたのは、そんな言葉だった。
「……珍し。凛津が他人のこと気にするとか」
名津君が口を挟む。
「いいでしょ、別に」
凛津が頬を膨らませる。
なんたが凛津、ここ数週間で、感情の起伏が凄い激しくなったような……。
「ももが〈酒呑童子〉の封印を解いたのは事故。有馬先輩達が巻き込まれたのも事故」
確かに凛津の言う通りかもしれない。だけど、私がいなかったら、こんなことになっていなかったのも事実。
「澪はほんとに頑固だよな~」
名津君が笑いながら言う。
「いっつも気にする必要ないこと全部背負ってさ。疲れないの?」
その自覚はない。
「えっと……。いつも?」
「「いつも」」
二人の声が揃う。
「あの〈霊鬼〉。……マユさん? のことも、独りで責任感じて、探し回ってたんだろ?」
「それは、ほとんど私のせい」
凛津は淡々と言う。あのときマユちゃんが消えたのは、凛津の〈言霊〉と、それを消した私のせいだ。
「真冬さんは、まだ生きてる。これは、ももにしかできないことだから──」
「……うん」
これからのことを考えるのは、後でいい。
もう一度薙刀を握り直す。
一気に振り下ろした。
「名津、うるさい」
ははは……。この人達は流石だなぁ。こんな状況でもびくともしないや。
「つーか、凛津はともかく、何でオレがここまで来てんの?」
大分今更な疑問を、名津君が口にする。
「うーん……。何でだろうね」
と言いつつも、私でも答えはわかってる。あの騒動以来、凛津ったら、名津君がいないと、全然駄目なんだもん。
夏休みに、校外で出た鬼を退治したときは大変だったなぁ~……。
教室を出た私達を待っていたのは、今まで見たこともないような、鬼の群れ。有名なものから、名前も知らないものまで、色々な種類が入り交じっている。名津君が音をあげるのも仕方ない。
今、この場の鬼を対処しているのは、私と凛津と名津君の三人。他の先輩方は、そこらじゅうに溢れる鬼の対処に向かった。
特に、中庭の状況は酷い。下校時刻直前ということで、人っ子一人いない。その代わりに鬼がひしめいていた。
その対処は、清水先輩がしている。「これくらいなら大丈夫だよ~」という台詞と笑顔、そして直後の術の激しさが怖かった。
凛津が思わず「うわぁ、凄い」と言うものだから、相当なんだろう。敵じゃなくてよかったと、本気で思った。
会長さんと鬼頭先輩も、至るところから湧き出てくる鬼を討伐している。そこは中等部の校舎の近くだ。
中等部の専部の子達の救援だ。二人しかいないのに巻き込んでしまって、本当、申し訳ない。
高等部の校舎から〈酒呑童子〉の封印場所まではかなり距離がある。
早く、早くと急かす自分がいる。
その気持ちとは逆に、そううまくいかないよと、現実に教えられる。
いくら倒しても、鬼の量は減らない。さっきみたいな余裕もない。
「おい、澪! ちょっと待てよ!」
一人でずんずん進んでいく私に、名津君が声をかけた。
それも気にせず、私はある場所で足を止め、こう呟いた。
「ここが、〈酒呑童子〉の封印場所だ」
その場所から、数えきれないほどの鬼が湧き出てきていた。
「……ほんっとに切りがねえな」
名津君さえもうんざりした顔をしている。
「大将を叩かないと終わらない。あいつ、そんなに強くないくせに、引き付ける力だけはすごいみたい」
前に会長さんが、〈酒呑童子〉や〈茨木童子〉──鬼頭先輩──が来たときも、一時的に鬼が活発化したと言っていた。今回も似たような状況なのだろう。
「何でそんなに引き付けてくんのかなぁ……」
名津君はまだ文句を言っている。
私も彼も、鬼について詳しいわけじゃない。だから、凛津の知識に頼るしかないんだけど──。
「……知らない」
あ、ソウデスカ。
「でも、これだけは確か。鬼の数がどんどん増えてるってことは、〈霊鬼〉の力が増してるってこと。つまり──」
「時間切れが近い?」
「ご名答」
凛津は微笑んでいる。彼女に誉められるのって、なんだか変な感じだ。
「ここが封印場所だったんでしょ?」
私の記憶が確かなら。
──ううん。こんな自信がないような答え方じゃ、駄目だ。
「……そう」
「じゃあ、頑張ってきて」
凛津はそう言いながら、私の頭をなでてくる。
どう返せばいいのかわからなくて、されるがままになる。
強いて言うなら、こんなやり取りしてないで、独りで戦ってる名津君助けてあげようよ。
「あ、あの、凛津……」
私が弱々しくそう言ったところで、凛津は私の頭から手を離した。
「それ、凛津なりの励ましらしいよ」
名津君が補完してくれた。
照れているのか、凛津は「うるさい」と言いながら、名津君の横腹をつついている。
緊張感全くないなぁ……。
「私なら大丈夫だよ。多分、有馬先輩もいる」
そう言って、低木の影の前に立つ。
私がこれを見つけなかったら、こんなことにはなっていなかった。有馬先輩も、真冬さんも、犠牲になることはなかった。
これは、私のけじめでもあるんだ。
「ももに責任はない」
唐突に言われたのは、そんな言葉だった。
「……珍し。凛津が他人のこと気にするとか」
名津君が口を挟む。
「いいでしょ、別に」
凛津が頬を膨らませる。
なんたが凛津、ここ数週間で、感情の起伏が凄い激しくなったような……。
「ももが〈酒呑童子〉の封印を解いたのは事故。有馬先輩達が巻き込まれたのも事故」
確かに凛津の言う通りかもしれない。だけど、私がいなかったら、こんなことになっていなかったのも事実。
「澪はほんとに頑固だよな~」
名津君が笑いながら言う。
「いっつも気にする必要ないこと全部背負ってさ。疲れないの?」
その自覚はない。
「えっと……。いつも?」
「「いつも」」
二人の声が揃う。
「あの〈霊鬼〉。……マユさん? のことも、独りで責任感じて、探し回ってたんだろ?」
「それは、ほとんど私のせい」
凛津は淡々と言う。あのときマユちゃんが消えたのは、凛津の〈言霊〉と、それを消した私のせいだ。
「真冬さんは、まだ生きてる。これは、ももにしかできないことだから──」
「……うん」
これからのことを考えるのは、後でいい。
もう一度薙刀を握り直す。
一気に振り下ろした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる