僕等の世界は鬼の中

悠奈

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Case.5 霊鬼

第二十四話

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「なんなんだよこの数ー!」
「名津、うるさい」
  ははは……。この人達は流石だなぁ。こんな状況でもびくともしないや。
「つーか、凛津はともかく、何でオレがここまで来てんの?」
  大分今更な疑問を、名津君が口にする。
「うーん……。何でだろうね」
  と言いつつも、私でも答えはわかってる。あの騒動以来、凛津ったら、名津君がいないと、全然駄目なんだもん。
  夏休みに、校外で出た鬼を退治したときは大変だったなぁ~……。
  教室を出た私達を待っていたのは、今まで見たこともないような、鬼の群れ。有名なものから、名前も知らないものまで、色々な種類が入り交じっている。名津君が音をあげるのも仕方ない。
  今、この場の鬼を対処しているのは、私と凛津と名津君の三人。他の先輩方は、そこらじゅうに溢れる鬼の対処に向かった。
  特に、中庭の状況は酷い。下校時刻直前ということで、人っ子一人いない。その代わりに鬼がひしめいていた。
  その対処は、清水先輩がしている。「これくらいなら大丈夫だよ~」という台詞と笑顔、そして直後の術の激しさが怖かった。
  凛津が思わず「うわぁ、凄い」と言うものだから、相当なんだろう。敵じゃなくてよかったと、本気で思った。
  会長さんと鬼頭先輩も、至るところから湧き出てくる鬼を討伐している。そこは中等部の校舎の近くだ。
  中等部の専部の子達の救援だ。二人しかいないのに巻き込んでしまって、本当、申し訳ない。
  高等部の校舎から〈酒呑童子〉の封印場所まではかなり距離がある。
  早く、早くと急かす自分がいる。
  その気持ちとは逆に、そううまくいかないよと、現実に教えられる。
  いくら倒しても、鬼の量は減らない。さっきみたいな余裕もない。
「おい、澪!  ちょっと待てよ!」
  一人でずんずん進んでいく私に、名津君が声をかけた。
  それも気にせず、私はある場所で足を止め、こう呟いた。
「ここが、〈酒呑童子〉の封印場所だ」
  その場所から、数えきれないほどの鬼が湧き出てきていた。
「……ほんっとに切りがねえな」
  名津君さえもうんざりした顔をしている。
「大将を叩かないと終わらない。あいつ、そんなに強くないくせに、引き付ける力だけはすごいみたい」
  前に会長さんが、〈酒呑童子〉や〈茨木童子〉──鬼頭先輩──が来たときも、一時的に鬼が活発化したと言っていた。今回も似たような状況なのだろう。
「何でそんなに引き付けてくんのかなぁ……」
  名津君はまだ文句を言っている。
  私も彼も、鬼について詳しいわけじゃない。だから、凛津の知識に頼るしかないんだけど──。
「……知らない」
  あ、ソウデスカ。
「でも、これだけは確か。鬼の数がどんどん増えてるってことは、〈霊鬼〉の力が増してるってこと。つまり──」
「時間切れが近い?」
「ご名答」
  凛津は微笑んでいる。彼女に誉められるのって、なんだか変な感じだ。
「ここが封印場所だったんでしょ?」
  私の記憶が確かなら。
──ううん。こんな自信がないような答え方じゃ、駄目だ。
「……そう」
「じゃあ、頑張ってきて」
  凛津はそう言いながら、私の頭をなでてくる。
  どう返せばいいのかわからなくて、されるがままになる。
  強いて言うなら、こんなやり取りしてないで、独りで戦ってる名津君助けてあげようよ。
「あ、あの、凛津……」
  私が弱々しくそう言ったところで、凛津は私の頭から手を離した。
「それ、凛津なりの励ましらしいよ」
  名津君が補完してくれた。
  照れているのか、凛津は「うるさい」と言いながら、名津君の横腹をつついている。
  緊張感全くないなぁ……。
「私なら大丈夫だよ。多分、有馬先輩もいる」
  そう言って、低木の影の前に立つ。
  私がこれを見つけなかったら、こんなことにはなっていなかった。有馬先輩も、真冬さんも、犠牲になることはなかった。
  これは、私のけじめでもあるんだ。
「ももに責任はない」
  唐突に言われたのは、そんな言葉だった。
「……珍し。凛津が他人のこと気にするとか」
  名津君が口を挟む。
「いいでしょ、別に」
  凛津が頬を膨らませる。
  なんたが凛津、ここ数週間で、感情の起伏が凄い激しくなったような……。
「ももが〈酒呑童子〉の封印を解いたのは事故。有馬先輩達が巻き込まれたのも事故」
  確かに凛津の言う通りかもしれない。だけど、私がいなかったら、こんなことになっていなかったのも事実。
「澪はほんとに頑固だよな~」
  名津君が笑いながら言う。
「いっつも気にする必要ないこと全部背負ってさ。疲れないの?」
  その自覚はない。
「えっと……。いつも?」
「「いつも」」
  二人の声が揃う。
「あの〈霊鬼〉。……マユさん?  のことも、独りで責任感じて、探し回ってたんだろ?」
「それは、ほとんど私のせい」
  凛津は淡々と言う。あのときマユちゃんが消えたのは、凛津の〈言霊〉と、それを消した私のせいだ。
「真冬さんは、まだ生きてる。これは、ももにしかできないことだから──」
「……うん」
  これからのことを考えるのは、後でいい。
  もう一度薙刀を握り直す。
  一気に振り下ろした。
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