息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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12・都合のいい女をやめられない4

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12・都合のいい女をやめられない4


「これが五月の通う学校か」

 昨日の今日、息吹は午後2時頃にとある高校にたどり着いた。四次元と三次元を行き来できる者にとってみれば、門がしまっているだの鍵があるだのは何の関係がない。ただまっすぐ歩いていけばスーッと進んでいける。息吹はいったい何をしにきたのかといえば五月に会うためではない。五月の彼氏こと早川飛沫と話をしたいと思ったからだ。

「1年1組っていうのはどこにあるんだ」

 母校ではないのでなつかしいという感情は湧かないものの、高校という場所特有の空気にはノスタルジーをおぼえる息吹、五月と彼氏が身を置く教室を探す。

 昨晩に会話によれば、本日の五月は学校後にアルバイトがあって彼氏といっしょに帰ったりすることはできないという。だったら彼氏だけをつかまえて話をするっていうのがとてもやりやすいってこと。

「ここか」

 見つけた1年1組なる教室。ドアを開けることなく教室内に入ると、まずは五月の姿を確認。だがここでの本命は五月じゃないということで、ゆっくり教室内を歩き座っている生徒の顔を見ていく。

「あ、こいつ、早川飛沫」

 たとえ制服姿でも昨日に見た顔って記憶と合致した。息吹は生前ホストをやっていたが、その職業柄人の顔をおぼえるのは得意だった

「ふむ……五月があれだけゾッコンって割には……見た目などふつう。どこがいいんだ五月、こいつのどこに熱愛する要素があるっていうんだ」

 四次元から三次元へ声が聞こえるということは、四次元側が意識しない限りは起こらないでぶつぶつ大きな声でつぶやく。そしてただいま行われている授業と、その後のホームルームが終わることを待ち続けた。

 そしてすべてが終わって室内にざわめきが発生。多くの生徒が自由もしくはクラブ活動って時間へ向かうためすぐに立ち上がる。そこには五月も含まれており、彼氏たる飛沫と少し会話をしたら、笑顔で手を振り教室から出ていく。

「さてと……」

 息吹は早川飛沫が学校から出るまでは四次元からの尾行とする。さすがに学校なんて場所で姿を現すと面倒だし、そこでおれは五月の親戚とか叫ぶと迷惑がかかる。生前の息吹曰く、ホストをやる男は礼儀が重要とのこと。

「飛沫、いっしょに帰ろうぜ」

 教室からでた早川飛沫に友人であろう誰かが声をかけた。あぁもう面倒くさいなぁと思う息吹だが、仕方なく2人の後について歩き出す。にぎやかとか青春オーラが満載な校舎から出て、学校という重力が生々しいグランドを横切り、拘束への入り口と自由のへの出口を兼ねる校門を抜けた。

 それから少しばかりすると、飛沫のとなりにいる友人というのがトイレに行きたいとか言い、それならあそこで借りろよと飛沫がすぐそこにあるコンビニを指さす。

(お、これはちょうどいい、利用させてもらう)

 2人を尾行していた息吹はふと閃いた。五月に内緒で五月の親戚と偽り飛沫と話をするつもりだったが、パッと点灯した脳内電球のひらめきを採用することにした。だから息吹もコンビニの中に入り、友人という男子がトイレの中に入ってドアを閉めたところで行動開始。

 シューっと突然に沸きだす白い煙。うん? と驚くより先に、彼の立っていられなくなり、その場にしゃがみ込むと意識を失ってしまう。

「悪いな、これも世のため人のためってことでカンベン」

 息吹はいま他人の姿になっていた。能力のひとつトランスフォームを用い、飛沫の友人に成りすます。もちろん飛沫の友人という記憶もしっかりもらっているので、細かいところでしくじることもない。

「あっと、このまま目覚められるとやっかいか」

 息吹、倒れている者の額に手を当てると、飛沫と一緒だったとかいう情報を記憶から消す。そして大急ぎで学校方面の〇〇駅に行かなければいけないというウソの情報を植え付けておく。こうするとばったり同じ人間が出くわす危険度を一定時間は下げられよう。

「じゃ!」

 男子高校生に成りすまし、ご丁寧に同じ容量の同じカバンを手に持ってトイレから出た。そして何食わぬ顔でコンビニから出た。

「よし、行こうぜ」

 待っていた飛沫がスマホをポケットに入れて歩き始める。

「なぁ、飛沫」

 息吹はさっそく聞いて欲しい話があるんだと持ち掛ける。あまり重々しい感じではないが、でもサラっと見せるから逆に相手は気になってしまうという表情を飛沫に見せて興味を引く。

「なんだよ、言えよ」

「歩きながらやるのも……どう? あそこのマックでもいかない?」

「あっと、わりぃ、おれ金がない」

「仕方ない、誘ったのはこっちだからコーラとポテトくらいの金は出す」

「悪いなぁ、じゃぁ行こうか」

 早川飛沫は金を出してもらえるとなれば、どこか依存的というか心持ちがあまりよろしくない笑みを一瞬浮かべたりした。こうして2人はマックに入ると人が少ない奥に行き、クリーム色のテーブルにコーラにポテトなどを置いて向かい合う。

「で、なによ話って」

 せっかちっぽい感じで飛沫が聞いてきた。

「いや、その、飛沫の彼女なんだけど、それについてちょっと聞いてみたくて」

 こう言うとほんの一瞬だが飛沫の顔面がピリっとした。まさかおれの女に興味があるとか言わないよな? と、猛獣が警戒するような目を浮かべる。

「いや、おれ人の彼女に手を出す趣味とかないから」

「そうか、じゃぁ何が聞きたいんだ?」

「いくつか思うんだけど……おまえの彼女って……えっとなんていうんだっけ? よく尽くすっていうの……献身的? そういう風に見える。だから同時にちょっとばっかり、おまえの性格が悪いようにも見えちゃうんだ」

「はぁ? なんでおれの性格が悪いとなるんだよ」

「だって、なんか性格のいい女の子を手玉に取っているみたいに見えるから」

「ちゃうちゃう、カン違いするな」

 渋木、これはサラっと流したりはできないぜと姿勢を正す。そしてグイグイっとストローでつめたいコーラを吸い上げてから反論を開始。

「おれが手玉に取ってるんじゃない。あいつがおれに尽くすのを進んでやっているんだ。言っとくけどな、告白してきたのはあいつだし、どこに行く? 何をする? 何がいい? とか決めるのも全部おれ。だってあいつ自分の意見とかないやつだもん。おれが引っ張ってやらなきゃ何にもできない女なんだもん。それが問題というなら悪いのは五月の方。なんでおれが悪者にされなきゃいけないんだよ」

 飛沫はちょいと不機嫌になりかけた。いや、不機嫌の度合いを加速させようとした。しかし何かがうまく作用したのか、割合に冷静さを保つことに成功。その代わり、そもそも悪いのは五月だという話をおちついて念入りにやり始める。

「中2の時にさぁ、五月が勝手な事を言いふらしやがったんだ」

「なんて?」

「早川と外野はすでに出来ていてキスは済ませている。それなのに早川は外野のキモチに疎くて傷つけているって」

「そうなの?」

「そうだよ、おれとすればびっくりだよ。男友だちからはちゃんと避妊しろよとか言われるし、女子からは女を泣かせるやつはクソとか白い目で見られる
。だから言ってやったんだ、勝手な事を言いふらしてんじゃねぇぞ! って」

「それで?」

「そうしたら、中1の時から密かに好きだったとか、そうでもしないと見てもらえないと思ったから勇気を出したとか、まぁ……そういう事を言われるとこっちもちょっとはドキッとする。で、けっこう行動力のある女だなと感心もしたから、じゃぁちょっと友だちからやってみようかって事になったんだ」

「ふむ、それで?」

「そしたらあいつまったく別人みたいなんだ。あの行動力はなんだっていうくらい、いつも一歩引いておれ任せ。最初はかわいいような気がしたんだ、飛沫の行きたいところでいいよとか、飛沫の話を聞いているだけでいいよとか、ナイチンゲールみたいな女だなと思ったりもした。でもだんだん……おまえ自分の意思がないのかよって思い始めて、よくわからなくなってきた。たまに……五月は宇宙人か? とか思ったりする」

「だったら、そんな風に言うんだったら別れたらいいじゃんかよ」

 息吹はポテトの塩味を味わいながら、つき合っているおまえの方にも問題があるんじゃないの? とか、なんとなく五月がかわいそうだとか言ってみる。

「おまえ、男のくせにどっちの味方をするんだよ」

「いやまぁ……可哀想だと思う方の味方」

「なんで五月が可哀想なんだよ、ざけんな」

 これはちょっと聞き捨てならないとばかり、左手の親指を除く4本指の腹でテーブルをバン! と叩く飛沫がいる。

「あのときは勇気ある行動かと思ったけど、今はちがう。たんにブチ切れた行動ってやつ。それで変な既成事実を作ろうとしたあげく、おれと付き合い始めるとひたすら後ろに引いて自分を表に出さない。そうなったらこっちだって考えが沸くだろう。おれがエロいんじゃない、男なら誰だってみんなこう考えるはず」

「つまり?」

「なんでも寄り添うような女なら、もっと深く付き合ってセックスまで持ち込みたい。これ当たり前だろう? ちがうのか? おれ何かまちがっているか?」

「いやまぁ……男ならそう考えるのは当然とは思うけど……」

「なんだよ、言えよ」

「これは飛沫と五月の会話がたまたま聞こえたことがあるから分かったって事なんだけど、おまえデートとか全部五月に払わせてるんじゃないの? それはさすがにひどいという気がするんだけど」

「あ、それな、それこそおれが被害者」

「は?」

「いいか、よーく聞けよ。おれだって最初は自分の分は自分で払うつもりでいた。女に払ってもらってイェー! と思うようなクズじゃない。だけどあいつ、わたしに任せて! と絶対おれに金を出させようとしない。最初はびっくりした。次にちょっと心地いい気がした。でもそれが当たり前になってくると、だんだんマヒするんだ。これはさすがにダメだと思っても、飛沫は気にしないで! となれば、五月が金を払うのが約束事になるわけで、おれは自分のサイフを取り出すことすらバカらしくなる。おれだって何度も金を出そうとしたんだ。それでもおれが悪いのか?」

「んぅ……」

「それにな……おれは知ってしまったんだ」

「なにを?」

「五月……あいつが他の女子と話をしているのが偶然耳に入った。あいつ、将来はおれと結婚して養ってもらうから、そのためにも飛沫にはいい会社で稼いでもらいたいからアルバイトはさせない。わたしが全部払うデート代は、将来において返してくれたらいいんだと抜かしていた」

「あっちゃ……」

「これあざとくね? こんなのナイチンゲールじゃねぇよ、羊の皮をかぶった腐れ悪女だろう、ちがうか!」

「まぁ……な、でもまぁそれは……女がやる将来設計ってやつだから」

「何が将来設計だ、結局男に依存しているだろう」

「そう思うんだったら別れたらいい。そうすればお互いリセットできるじゃん」

「おまえ、おれの話をちゃんと聞いていたか?」

「うん?」

「たとえ腐れでも女、しかも巨乳。男なら絶対にセックスはしたいじゃんかよ」

 飛沫は言う。五月という彼女に対しては妙な想いが強まっている。それは愛情のような気がしつつ、もしかすると人として危なっかしいゲスなモノかもしれないと不安にもなる。だからなおさらセックスせねばならないと力説。

「セックスして五月への愛情が確かにあると思うなら、おれは五月と結婚せねばなるまい。五月だってセックスしたら少しはキャラが変わるかもしれない。そうなんだよ、セックスは必要なんだよ、マジメな話として」

 ハァハァと息切れする息吹、ここで一旦キモチを落ち着かせようと静かになった。でもどうしても腹が立つという事があり、静かになった中ですぐさまはげしい上昇へ向かうためのつぶやきをこぼす。

「五月……あいつ……マジでムカつくんだ」

「なにがだ?」

「あいつ、自己主張とかせず、いつもおれに合わせるだけで金も全部払うとかやるくせに、一つだけ絶対に応じない事がある。セックス……これに関してだけはなぜか不思議なくらい応じないんだ。普段あれだけおれに合わせてトロっとしたキブンにさせておきながら、もっとも重要なセックスって話は絶対応じない。セックスは結婚してからってババアみたいな事を抜かして、おれがどれだけ求めてもこれだけは見事に拒否する。これっておれが可哀想だろう。キモチを弄ばれているのはおれの方だろう、ちがうか?」

 テーブルの上をグチャグチャにするような爆発が起こりそうな感じだったが、飛沫はそういう事をしなかった。グワー! っと盛り上がったものの、とても大きな新古急によってみっともないサマをさらさずに終わらせた。

「仮にセックスしないとしてもだ、つき合って3年になると、せっかく存在する彼女を失いたくないと思うのも当然じゃないか?」

「まぁな……」

「おれだって可哀想なんだよ、五月にだって問題はあるんだ。おれだけを悪者にされたらたまったもんじゃねぇよ」

 こうして疲れてしまった飛沫は、怒ったりイライラする気力はなくなったといううつろな目をして立ち上がる。一人考え事をしたいからおれはこれで退散するといい、自分のトレーを持って歩き出そうとした。だがそのときクイっと振り返り、おせっかいな友人に一言アドバイスをしてやるのだった。

「おまえさぁ、おれや五月がどうとか気にしているヒマがあったら、自分こそ彼女を作れってんだよ。人の事をとやかく言うやつに限って大して幸せじゃなかったりするらしいからな、おれと五月の話に首を突っ込むな、おまえはおまえの人生だけ見つめていればいいんだよ」

 そんなセリフを言った飛沫がマックから出ていったら、息吹はため息を落としてから顔を上に向けてつぶやく。

「ちっ、高校生のくせに名言っぽい事を吐きやがって」

 相手をさりげなく言い負かすつもりでいた事もあり、年下にやられてしまったと悔しさをかみしめる息吹だった。
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