息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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19・シアワセにはヒビを入れたくなる1

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19・シアワセにはヒビを入れたくなる1


「椎奈、あんた最近若返ってない?」

 白いテーブルをはさんで向かいに座る友人が、32歳の伊藤椎菜をホメた。そしてうらやましいという感情も付加価値としてつけた。

「なんか秘訣があったら教えてよ、なんかあるでしょう?」

「いや、別にないよ、ふつうに生きているだけ」

「ほんとうに? なんか信じられないなぁ」

「なんでそんなに疑うの?」

「だって……」

 椎奈と同じ年齢の友人いわく、人のシアワセというのはここで良し! というモノがない。ゆえに真の安らぎは死ぬ事によってしか得られないという。

「だってさ椎奈、一人のときは彼氏が欲しいと思い、彼氏ができると結婚したいと思い、結婚したらハッピー! と思いきや全然ちがう。若さを吸い取られるだけじゃん。もうね、結婚した女の日常なんてストレスと劣化を歓迎するようなモノでしょう。わたしも椎奈も結婚して……5年。子供はいないけど、多分……出来たらもっとストレス三昧になるとわたしは思っている」

「まぁね……」

「なにが、まぁね……よ、どうしてあんた若く見えるの?」

「なんかやってない?」

「別に何も?」

「もしかして椎奈……」

「うん?」

「浮気とかやってない? 浮気は若返りの栄養とか言うしね」

「やってない、やってない」

 こんな会話がされたとき、最後の方にウソが生じた。つまり椎奈はこっそり浮気中という生活をしており、密会とそこで行われるセックスが抜けた水分の補給代わりになる満喫中だった。

「さてと……」

 友人と別れた後、午後1時に〇〇駅の前に到着。するとスーツ姿の男性が椎菜に向かって手を振る。それは旦那でも友人でもなく、営業マンという名の浮気相手。

「今日もまたきれいだな」

「そっちは口がうまくなっちゃって」

 32歳の女と28歳の男が人目も憚らず軽くイチャラブする。浮気してナンボ! という裏サイトに椎菜が登録し、飛びついてきた来たのがこの営業マンこと宇和木太郎。

「昼は?」

「先に済ませたわ。そっちは?」

「おれも同じ。じゃぁすぐに行こうか」

 こうして2人はラブホテル「密の味」へ直進。なんら迷いがないのは、密会の回数がけっこう多い事を証明している。

「椎奈……」

 真昼間のラブホテル、窓ガラスを前に立っている椎奈の後ろに立つ太郎。

「太郎」

 耳元に顔を近づけられ目を細める椎菜。

「おれ、自分の奥さんより椎菜とセックスする方がキモチいい」

「わたしも旦那とやるより太郎とのセックスが最高」

「体の相性がバツグンって事かな」

「そうね」

 2人はそう言って互いを脱がし合い、全裸になったら無邪気に浴室へと向かう。そうしてシャワーで体の垢を落とすと、白く大きなベッドで体を重ね汚れた愛し合いに時間を費やすのだった。

 椎奈にはわかっている。体の相性が合うという以上に、浮気というシチュエーションがセックスの快感にはこの上なく合うと。

「ハァハァ……太郎、太郎」

 悪い事をしている。幸せを全壊させたくない。そんな風に思いながら、すぐに修復できるくらいのヒビを入れたくなる。そうして旦那に気づかれないようたのしむと快感が数倍はね上がると知ってしまった。

「た、たろ……ぁんんぅぅ!!!」

 良からぬ興奮剤をたっぷり混ぜたようなオーガズムに達すると、旦那とのマンネリセックスでは味わえない満足感が心身の隅々にまで広がる。こうして乱れたベッドの上で余韻をたのしむようにべったり抱き合いキスをし、時間が来たらラブホテルを後にし、何食わぬ顔で家に戻るのであった。
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