息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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18・求める夢に忠実であれ女子校生5

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18・求める夢に忠実であれ女子校生5


 次の日、結衣はすがすがしい感じと健康的な興奮と、いくばくの不安を胸にいつもより早めに登校した。そしていつもこのくらいの時間に先着しているって仲良しの友人の席に近づくと、実はあたらしい事を始めたんだと言ってスマホを取り出す。

「あたらしい事ってなに? ユーチューブで巨乳アイドルやるとか?」

「違うから、そんな事死んでもやらないから」

「じゃぁ、何?」

「イラストをアップしてみたんだよ」

「イラスト? マジで?」

「そう、ヘタだけど……見せたから犯罪になるわけじゃないと思って出してみた」

「見せてくれるわけ?」

「見て、どうせなら笑っちゃって」

 友人はピンク色の6インチスマホを受け取ると、並ぶイラストサムネを見てへぇ~と声を出してから、一枚巨大化させてみる。

「おぉっとこれは!」

「うん?」

 友人はここでチラッと結衣に目をやり、ちょい意地悪な事を言ってもいいのかな? と思ったが、言ってみる事にした。

「ヘタウマって部類の絵だね」

「え、ほんとうに?」

「あ、もしかし傷ついた?」

「いや、ヘタウマってホメ言葉だから素直にうれしい」

「へぇ~、結衣がイラストとは……もしかして将来はイラストレーターとか?」

「なれるならなりたいと密かに思っているんだ」

「いいじゃん、そういうのめっちゃいいじゃん」

 このちょっとしたやり取りでパーっと結衣の目の前が明るくなった。それまでおそろしく暗いと思っていた道が、永遠にライトが当たらないのでは? と思っていたところがまぶしくなって開けた。

 なんだ……やってみたらこんな事だったのか……と結衣の胸はとても軽くなった。そうして今までの過ちを清算したように明るいキブンが沸く。

「早く、伊吹さんを呼びたいなぁ」

 時間飛んで午後6時40分ごろ、夕飯を食べ終えた結衣は部屋の中でソワソワしていた。今ここで伊吹さん! と呼んだら出てくるかもしれない。フライング的にそういう事をしたいと胸が疼く。でも自分から午後8時と言ったので、その時刻が到来するまでは待とうとイライラワクワク。

「伊吹さん、出てきてください、伊吹さん!」

 午後8時になると、数秒経過したところで待ちきれないと結衣が声を出す。するといつものように窓ガラスがコンコンとノックされる。結衣は待ってました! とばかり、まるで純情小学生みたいな勢いでドアを開く。

「待ってましたよ、伊吹さん」

「ごきげんだな」

「おかげさまで、ささ、どうぞ、どうぞ」

 爆発寸前という勢いで息吹を室内に招くと、待ちきれないという感じでノートパソコンの前に立つ。

「いいよ」

「はい? なんですか?」

「その結衣の状態で一歩進んだってことはわかるから」

「ダメです、見てください。見ないと自傷します!」

「わかったよ」

 息吹はメタリックピンクのノートパソコン画面、17インチというかなりデカいディスプレイに映しされたイラストを見る。

「これが結衣のイラストかぁ」

「は、はい」

「悪くないんじゃない?」

「も、もうちょっと何か言ってくださいよ」

「絵の事はよくわからないんだよ」

「そこをがんばって何か言うのが人の心ってモノでしょう」

「横顔がへたくそっぽいって気が……あ……」

「いいんです。ちゃんと自覚しています。いま一瞬傷ついたけど、でも後でうまくなって見返してやるからな! ってキモチになれます」

「おぉ、すごい進歩」

「伊吹さんのおかげです、ほんとうに」

「じゃぁ結衣の将来は?」

「イラストレーターです、誰がなんと言おうと」

「親にジャマされるかもよ?」

「ちゃんと正面から話をします」

「いいね、もう何も言う事ない。まだ高校2年生、あきらめなければ絶対に夢は叶うはずだから、がんばってな。めでたし、めでたし」

 息吹はうれしそうに微笑んだら、じゃぁこれでさようならと窓から出て行こうとする。すると結衣が慌ててTシャツの後ろをつかみ引っ張っる。

「この流れでこんなにあっさりさようならとかあり得ないでしょう!」

「なんだよ、この流れって……」

「とにかくまだ出ていかないでください!」

 息吹を部屋の中央付近に立たせると、少し距離を置いて真正面に立つ。そして桃のように頬を赤らめながら、思いつめたような顔を息吹に見せる。

「ありがとうございます、感謝しています」

「べつに礼なんかいらないよ」

「そ、それで、伊吹さん……」

「うん?」

「す、す、好きです……これ、ウソじゃありません」

「それはうれしいな、ありがとう」

「そ、それでですね、その……だ、抱いて欲しいです。わたしは真剣に伊吹さんに抱かれたいと思っているんです」

「それはダメ」

「どうしてですか?」

「おれ一度死んだあげく、ずっとよみがえっていられるわけじゃないはずなんだ。それはもう責任とかいうのが取れない」

「一回だけでもいいとか、わたしが責任を要求しないとか言ってもですか?」

「前のおれだったらやったかもな、そう言われてやらないというのはもったいないと考えた。でもなぁ、一回死んで物悲しさがわかってくると、そういうのってできない。やりたいと思わないんだ」

「じゃぁ、わたしはどうしたらいいんです?」

「おまえにはもう恋人ができたじゃんか」

「はい? どういう意味ですか?」

「イラストが恋人。絵を描くのが自分のすべてって思ってみなよ。むちろん永遠にそれはムリだろうけど、20代の真ん中くらいまではそういう思いを夢に捧げてみたらいい。まさかおまえ、おれに抱かれる方が夢より大事だとは言わないよな?」

「ん……」

 これで話は終わったという空気が部屋に漂う。これ以上話を蒸し返すのは野暮だという感も生々しく浮かぶ。だから結衣はほんの一瞬、ここで息をのみ込んで話を終わらせようと思った。

 が、しかし……せっかく前向きな自分になれたのだからというキモチが息を吹き返す。どうしても息吹に抱かれたいという意識が加速する。

「わたし、本気なんです、ほんとうに伊吹さんに抱かれたいんです」

 結衣、両腕をクロスさせるとイエローTシャツをギュッと掴む。そして思いつめた自分に偽りなし! と叫ぶような勢いを持って捲り上げる。

 ボワン! と揺れ動いた白いフルカップブラのふくらみ。それはG80というサイズであり、ふっくらやわらかそうな谷間もかすかに揺れて呼吸した。

「好きです……伊吹さん」

 Tシャツを足元に落とすと、背筋を伸ばして真っ直ぐ立ち、息吹が何も言わないから左手を谷間に当てて切な気な両目を浮かべる。

「一度でいいです、抱いてください」

 そう言ってみるが息吹は首を縦に振らない。それどころか両手を横に振り、一度って言葉を軽々しく使うなとあきれたように言う。

「ど、どういう意味ですか?」

「たとえば夢だったら、成功したい……たった一回でいいから! となる。その一回が大変なんだよ。だったらおまえ……処女だろう? 最初の一回をこういう物語で使ってしまうと後で後悔するかもよ」

「しません、断言します」

「そうか、でもおれがイヤなんだよ。一度死んでしまったんだぜ? 売れっ子ホストになってこれからって時に殺されたんだ、それでよみがえりをさせられて、なんとなく悟りみたいなモノが胸にさっくり沸いてしまって、仕方ねぇかってキモチになったんだ。それなのに今ここで結衣とセックスするというのは……進化した自分に対する裏切りみたいなモノになる。それがおれはイヤなんだ」

「でも……伊吹さんは言いました」

「なんだっけ?」

「おとなしくてダメなやつはババを引く……だったと思います。だからここではおとなしく引き下がりたくありません」

 クッと唇を噛んだ結衣、少し前かがみになって両腕を色白ムッチリな背中に回す。そうして左右のふくらみがフルフルっと揺れ動く中、後ろのホックを外す。そしてゆっくり顔を上げるとそこには息吹の顔がある。

「ぅ……」

 いきなり至近距離となっていたので結衣がびっくりして固まる。

「結衣」

 息吹が言うとぶたれる! と思った結衣は両目を閉じた。しかし実際にはぶたれるのではなく頬にクッととてもやさしい口づけを一つされただけだった。

「せっかく前向きな自分になれたんだ。そういうエネルギーは正しく使え。余計なことに使っている場合じゃないぞ」

「い、伊吹さん……」

「誰に遠慮することなく夢を追って叶えればいい。そのためにエネルギーとか若さがあるんだ。いらぬ事に費やすな、いいな?」

 息吹はそういうともう一度口づけをして結衣から離れる。ブワっと少女の両目に涙が浮かんだものの、後はもう窓から出ていくだけ。

「じゃぁ」

 息吹がそう言って窓から出て行った。すると夜の中にスーッとその姿が消えてしまう。後は一人部屋の中で立ち尽くす女子がひとりいるだけ。

「余計な事にエネルギーを使うな……か」

 こぼれそうな涙を振り払うため顔をブンブンと横に振った結衣、ブラを着け直しバストを整えたらTシャツを纏い、いまどうしても描きたくなったイラストをつくろうと取り掛かる。

「忘れないうちに描いておこう」

 今なら息吹の顔は覚えている。それを忘れないうちに描いておき、しばらくは心の支えにしようと考える。しかしずっとそれにすがりたい考えるべきではないと自分に言い聞かせる。イラストレーターになる夢と同時に、息吹よりいい男をつかまえハッピーな生活を送ろうと思うからだった。
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