息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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17・求める夢に忠実であれ女子校生4

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17・求める夢に忠実であれ女子校生4


「ん?」

 パッと視界が変化すると、その空間は色彩豊かだと思った。複数の色が混在してひとつの固まりになっていると、最初はそう思った。

 しかし、色彩豊かな割にはえらく不安定で落ち着かない気分にさせられるのも事実だと思う息吹、まっすぐ立ち冷静に空間を見渡してみる。

「ようするに絡まった糸って感じか」

 つまりここ、結衣の内面というのは複数の感情がひどい絡み具合になってしまっている。それは融和というよりはただの厄介な混在であり、色彩豊かというのもよくよく見ればブサイクな絵具混ぜみたいなモノ。

「この色か」

 グレーの糸束という空間に映し出される映像を見たらすぐにわかった。結衣の不安気な顔やおびえる表情が浮かんでいるせいだ。それはおそろしい出来事に直面したゆえのモノというよりは、弱い自分の特性というモノ。だからこのグレーの糸は他の糸より少し太いのである。

「で、これが……」

 臆病の糸は他のいろんなところに結びついている。だが何より問題なのは……発奮である赤色とがっちり固く結びついていること。赤糸の方が細いのでグレーの方がパワーを持っている。生まれつきなのか、それとも生まれた後にこういうカタチを本人が作ってしまったのか、今はわからないがとにかく問題である。

「こんなに絡み合っていると解くというのはムリだ。斬るしかない」

 息吹は日本刀を取り出すと、グレーと赤の絡みを斬りほどこうとした。するとどうだろう、突然に後ろからはがいじめを食らう。

「な、なんだ?」

 後ろを見るとそれは泥人形であるが、明らかに結衣であろう事がわかる。髪型も体型も、豊満なふくらみとかいうのをまったく同じ。背丈は息吹の方が高いのだが、それがうまくごまかされているのは夢もしくは精神世界の成せるワザなのかもしれない。

「結衣、なんでジャマをする」

「それを斬ったらわたしはやっていけない」

「なんだ、どういう意味だ」

「なぜって……」

 泥人形が言うには、グレーの糸が赤とつながっているというところには、よく見れば透明のとても太い糸が混じっている。それは心の安定というモノであり、本来は臆病の糸と結びついているモノだ。ただしグレーの糸に負けないほど太いモノとして絡み合っているゆえ、臆病を理由に逃げるのが心地いいと感じさせれるように成り立ってしまっているのだった。

「この太い糸を切ったらわたし怖くなる」

「それはダメなんだよ、結衣。こんなに太いのはダメなんだよ。すべての糸は同じ細さでないとダメなんだ。逃げるのが心地いいなんて結論になるな」

 後ろから取りつく泥人形はおそるべき力である。それは前向きに生きたいと思いながら、それが怖いからイヤだという反動によるものであり、とてつもないマイナスパワーを奮い立たせている。

「エネルギーの使い方をまちがえるな、こんなの不幸になるだけだ」

 息吹、汗を流しながらもグッと体の向きを変えた。その一瞬が泥人形をちょっと驚かせたらしく力がゆがむ。

「邪魔するな!」

 背負い投げ一本。泥人形が背中から倒れ落ちる。

「ダメ、斬らせない」

 スクっと立ち上がった泥人形は息吹の方を向いて力強く言い放つ。

「いつまで臆病をやるんだ?」

「わからない。でも……」

「でも?」

「来年からは心を入れ変える」

「またそれか」

 息吹、泥人形を見つめながら居合抜きの構えに入る。この泥人形がいる限りダメだろうか、人形を斬る事にした。

「わたしの心はわたしが自分で守る」

「それは守っていると言うのではなく、逃げているっていうんだ!」
 息吹の刀がうなった。泥人形の首を飛ばし、両腕を斬り上げ左右の足を斬り落とす。すると泥人形の胴体がゴロゴロと転がる。

「生まれ変われ、結衣」

 日本刀を胴体に突き刺す。すると首も両足も両腕もない一片がググっと悶えるように動く。

「よし、後は糸を斬れば」

 息吹、再び向きを変え糸を切ろうと思った。あの猛烈にがっちり絡み合っているところを斬ってしまえば結衣は変わる事ができると身構える。

 が、しかし……突如としてすごい音が発生。それ前世の記憶を引っ張り出しても見当たらないすごい大群の迫る音と思えた。

「な、なんだ?」

 振り返ると、さっきと同じ泥人形が膨大に……もはや無限大数のごとく走って来る姿が目に映る。

「結衣……そこまでして弱い自分を守りたいか、それで夢をかなえたいとか言うのか」

 一瞬どうしようかと息吹は悩んだ。これはもう重症の領域だから放っておくか? と思わなくもない。ホストをやっていた頃の自分ならそうしただろう。ここまで勇気のない人間が夢を追いかけるんじゃねぇとつめたい言葉で終わりにしただろう。

 しかし……ここで放っておくとこの少女は残念な人生しか送れない。それならチャンスを与えてやるくらいはしてもいいだろうかと思い直す。もしこの糸のぶっ太い絡みを切ったらどうなるか? 少女は変わるかもしれないし変わらないかもしれない。どちらかわからないが、少女の好きな方を取ればいいと結論付けた。

「結衣、臆病な自分を捨ててみやがれ!」

 息吹の刀がついにお目当ての個所を斬った! すると問題の絡み合いがほどける。意図が生き物のように蠢き太さを細さへと変えていく。

―ぎゃーー

 息吹の鼓膜が破れそうになるほどの絶叫が響き渡り、バッタバッタと泥人形が倒れていく。もしすのすべてが上にのしかかっていたら、息吹は何もできなかったとしか思えないほどの数だ。

「これで後は結衣次第」

 息吹はそうつぶやいてから結衣の部屋に戻った。白い電気に包まれた室内の中央に立っち、ベッド上の女子に目を向ける。すると実にばっちりなタイミングで、眠っていた結衣が体を起こす。

「はんぅ!!」

 汗びっしょり……感情が抑え込まれたように青ざめ、両目は大きく開き、肩手を巨乳ってふくらみに当て、少しばかり声を出せない結衣だった。

「ぁ……」

 ゆっくり意識が戻っていく結衣と息吹の目が遭う。

「お目覚め?」

 見下ろす息吹が言ってみると、結衣は大きく深呼吸。そして枕を自分の前に置くと、疲れたとばかり上半身を沈める。

「ハァハァハァ……伊吹さん……」

「うん?」

「人の夢っていうか、人の中に入りましたね」

「悪かった、でもそうしたいと思ったから」

「ん……ぅ……」

 結衣、もう一度深い深呼吸をした後、少し無言の時間を作ってからやや落ち着いたって声で言った。

「伊吹さん……」

「なんだ?」

「いま……何時ですか?」

「午後9時だな」

「明日の夜8時まで時間をください。そしてその時間にまた来てください」

「なんで?」

「わたし、登録した所に自分の作品をアップします。だからわたしの作品を見てください、いえ、見て欲しいんです」

「いいよ、べつに、結衣が行動すればそれで良しだから」

「お願いです、見てください! 笑われてもいいから」

「わかった、そうしよう」

「約束ですよ? 必ず来てくださいよ?」

 明日になっても結局はアップされない可能性も無くはあらず。されど今の結衣は人生初めての熱いやる気を胸に持っていた。
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