息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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168・キャラクターの反乱バトル12

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168・キャラクターの反乱バトル12


 本日の午後3時、書矢はとあるネットカフェに足を運んだ。ほんとうは繁華街の店に出向こうと思っていたが、あえて〇〇駅近くにあるマイナー感ただようネットカフェを選んだ。もちろんそれにはちゃんとした理由がある。

「ここ数日マジで不調だわ……」

 ネットカフェに入店した書矢は小さな声でぼやく。そう、ここ数日にわたってまったくアイデアが出ないのだった。

 先日、小説の中からブルーノが出てきて番外エピソードを作ってくれとか言ってきた。だからそれは書いた。しかし本編の続きに対しては頭が空っぽ。だからという感じで意欲も湧かない。

「このままだとダメ人間になってしまうな」

 グラスにドバドバ気前よく氷とペプシを入れたら、自分の空間に入って腰を下ろす。

「こういう場所に来ればキブンが変わってアイデアでも浮かぶんじゃないかなぁと、おれは思った」

 いったい誰に言っているのかわからないが一人つぶやき、座ったら上着のポケットからUSBメモリを取り出す。中にはネットで連載中って小説の原稿が入っており、なんとかして続きとなるあたらしいエピソードを書きたいと思う書矢だった。

「ふわぁ……ダメだ……やる気しねぇ……」

 ネットカフェにまで足を運び、でる時は金を払わなければいけないというのに、やる気スイッチが入らないからユーチューブでエロ動画を見てしまう。

「エロかぁ……やっぱりエロなんだよなぁ、小説も読者を惹きつけるのはエロ。こうなったらおれ……エロ小説オンリーの作家になろうかな」

 そんな風につぶやいたら、ふと考えが湧いた。もしかしてこれはいいアイデアでは? と思ったので、意識を整理するためユーチューブ画面を消す。そして座りマウスを握ったまま、ゆっくりつぶやいて考えを確認。

「本編でエロをやると……おれの小説だというのに、そこに登場するキャラがイヤがる。ふざけんなよって話だ。まぁ、カルロスは喜ぶのかもしれないが、アデリーヌもビアンカもブルーノもイヤがる。でも、番外編だったらどうだ? 番外エピソードって形にすれば、それなら読者を惹きつけ、かつおれのキャラクターも渋々納得するのでは? それまさに一石二鳥では?」

「よし、書いてやるぞ!」

 瞬間湯沸かし器みたいに元気が出た。すぐさまドエロ丸だしな番外エピソードを書き始める。

「そうだな……Eカップってアデリーヌが、それより上の爆乳ってビアンカにあこがれてレズに発展。その2人が愛し合っている現場を偶然見てしまったカルロスとブルーノが参戦して4Pに発展するという流れにするか」

 それは本編には使われない番外編。だから、もしかすると……まっとうな仕事ではないのかもしれない。自分が本来やるべきは本編の続きを作成する事では? などと、心の深い所では悩む。だが停滞している自分を活気づけるためには、どうしてもエロのパワーが必要だと書矢は割り切る。

「おぉ、ノッて来た、ノッて来たよぉ」

 苦しそうにハァハァやりだしたが、それは綴られるエロが快調だという事。この世の真実として、作者の股間が熱くならないエロは読者がついてこない。よってその逆もしかり。

 こうして3時間ほどかけて外道度の高いエロ小説が完成。それをネットにアップせんとマイページを開く。

「番外編という文字を入れておかないとな、本編で出したら色々と面倒が起ってしまうからな」

 ブツブツ言いながらアップするための準備はちゃくちゃくと進む。そうしてついに送信ボタンを押せばオーケーというところまできた。

「作者だってたまには息抜きしなきゃいけないんだ……そしてこれは番外編。だったら、おれの小説に登場するキャラは作者であるおれを許すべき。そうだ、これは罪でもなんでもない。おれがおれの小説で読者を獲得するために必要な事なんだ」

 こうしてついに書矢はポチっとクリックをした。そうなったら一瞬でアップ完了。番外という名のドエロは大勢の人間に提供された。

「いま、6時過ぎか……せっかくだ、あと3時間くらいここに居座るか。読者数とか反応も見てみたいからな」

 言って畳の床にマットの上にゴロンとなり、一仕事終えた先生らしく眠そうな目でスマホを耳に当て家に連絡をしておく。

「あぁ、母さん、悪いけど今日はちょっと外で食ってから帰るよ」

 これでよし、2時間くらい寝ようということで室内にある毛布をかぶって安楽モードに突入した。

(ん……)

 それから2時間くらいして、体中が痛いとか思いながら起き上がる。そうしてパソコンよりUSBメモリを忘れないよう抜いて上着のポケットに入れたら、さっそく番外編の盛り上がりはどんなモノかと確認。

「おぉ、めっちゃPVも読者数もめっちゃすげぇ、ブックマークも星の数ほどついている。やっぱりエロなんだよ、成功するためにはエロが必要なんだよ」

 次にレビューを見てみた。するとそのすべてが肯定してくれていた。その中には読み終えるまでに2回もヌキましたなんて報告まである。

「よし、元気が出てきた」

 意気揚々と立ち上がって上着を着ると、伝票を手に持つ。このまま店を出ようと歩き出したが、途中にあるドリンクバーで足が止まった。ひとまずもう一杯コーラでも飲んで、ちょっとエロ動画を見てから店を出ようと考えが変わる。

 しかし……左手にたっぷり過ぎる氷とペプシの入ったグラスを持った書矢が部屋に戻ろうとしていたとき、ある事に気づく。

「うん?」

 マンガ棚コーナーに立ち寄っていた時、そこから自分の部屋があるスペースに目をやって青ざめた。思わず手に持っているコーラを落としかける。

「あ、あれって……アデリーヌ……」

 そう、そうなのだ、アデリーヌの姿がある。いやいや、ビアンカとかブルーノとかカルロスなんて奴らの姿も出てきたではないか。

「なんで……って、もしかして番外編に腹を立てたっていうのか」

 ここからアデリーヌとビアンカの顔を見ると、明らかに怒りがこもっているとわかる。ゆえに、番外編で変な事をさせられた復讐をしたいと出てきたのだろう。

「ネットカフェのパソコンからでも出てこられるのかよ」

 これはまずい、つかまったらマジで殺されてしまう! とビビる書矢。そして偶然とはいえ上着もUSBメモリも伝票もすべて持っている事を神に感謝。だからすぐさま回れ右して出口へと急ぐ。

「早く、早く、早く……」

 命がかかっているときの焦りというのは各別だ。ポケットから財布を出すといささやかな行為ひとつだって滑って転ぶみたいになる。

「早く、早くしろよ」

 伝票のバーコードを読み取らせ表示された金額を入れる。そうして後はお釣りを取るだけだが、一秒がすごく長く感じるから焦る。そのサマはハリウッド映画に例えるなら、機械に向かって「カモーン!」 とか言うシーンみたいなものだろうか。

「ん……」

 ギュッとお釣りを取ると、それを突っ込んだ財布をポケットに入れる。そうして改札をくぐり抜け、エレベーターに目を向ける。だが最上階で止まっているという事実が、いまの書矢には耐えられない。だからすぐ横にある階段を駆け下りる事にする。

「あ、いた! クソ野郎発見!」

 ここででっかく響くはアデリーヌの声。その後ろにはビアンカにブルーノのにカルロスなども揃っている。

「誰がクソ野郎だ、チンチクリン」

 なんて怒っている場合ではない。書矢は音速ロケットみたいな速度で階段を降り始めた。そして離れたところから怒りの声が言っているのを耳にした。

「書矢、絶対に逃がさない!」
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