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抜けられなくなった巨乳を救出せよ3
しおりを挟む「お兄さん、たすけてくれますよね?」
女子がウルウルとやったら、当たり前だとおれは即答。この流れで助けないのは鬼だ、外道だ、人でなしなのだから。
「でも……」
「でも……なんですか?」
「助けてやるから、ちょっといくつか質問させろよ」
「な、なんですか?」
「おまえ、名前なんていうんだ?」
「ん……わたしは音川美依(みより)です」
「美依かぁ、いいね! それでその、おほん!」
「なんですか?」
「おっぱいは何cmだ?」
「な、なんですか、急に」
「急にじゃねぇよ。おまえさっき言ったんじゃんか、早くからおっぱいの大きい巨乳女子だって」
「で、でもそれは、話に必要な事だから言っただけです、お兄さんにおっぱいの情報を教えたくて言ったんじゃありません」
「おまえ、世の中の事がなんにもわかっていないな」
「え……どういうことですか?」
「おまえみたいなかわいい女の子が、早くからおっぱいが大きい巨乳女子とか言ったら、誰だって、特に男はドキドキしてしまうんだよ。それで何cmとか教えないのは犯罪なんだよ。人の心を弄ぶという重罪なんだよ」
「そんな……」
「おれはおまえみたいに魅力的な巨乳女子が犯罪者なるなんて耐えられない!」
「わ、わたし……おっぱいは今のところ93cmです」
「おぉ、デカ……じゃなくステキだ、ステキだよほんとうに。で、ブラジャーのサイズは?」
「ぶ、ブラは……え、Fカップです。F80ってサイズです」
「中2でFカップ! さすがっていうか……魅力的すぎるよ、美依は」
ここで一瞬空気がロマンティックな色合いに変わった。それは人が恋というタイトルのエッセイを書きたくなる心そのものだ。
「美依……」
「は、はい?」
「おれ……ダメだ、やっぱり言えない……」
「なんでですか、この流れで言わないとか許さないです」
「お、おれ、美依みたいな巨乳女子がすごい好みだ。その好みって言葉が人間になったら、それは美依って女の子でしかないわけで」
「ん……ぅ……」
「悪い、おれの方が年上なのに……年下の美依にこんな事を言うなんて……おれもダメだな、全然ダメだな、18歳になっても全然大人じゃないな」
「あ、泣かないで、泣かなくていいですから……わたし……お兄さんの声を聞いてこの巨乳って胸いっぱいにドキドキしていますけれど、でも……決して悪い気はしていませんから」
おれはけっこう久しぶりに素直なキモチを表に出していたと思う。それは少しばっかり気恥ずかしくて、でもそれは人にはものすごく大事な事なんだよ? と女神さまに教えてもらっているような、そんな感じだと思った。
「そ、それで、それでさ、美依……」
「はい?」
「お願いだ……美依の巨乳っておっぱいに甘えたい、ちょっとでいいから、ちょっとでいいから、美依の巨乳に甘えてみたい、お願い!」
「な、なにを……」
「頼む、この通り!」
それは純情な青春が奏でるメロディーみたいなモノだったんだ。おれはその場に土下座なんかして、お願いだ! と言っていたけれど、その行為を恥ずかしいと思わなかった。それは人の世を生きる上でもっとも重要な誠実さと信じることができたから。
「ダメです……」
「じゃぁ、たすけない!」
「んぅ……お兄さんの甘えん坊!」
「美依が悪いんだ、魅力的な巨乳女子だから、好みだ……と思っているおれの前に現れたりするから、だからおれの純情が哀しくなってしまう。美依が悪い、美依が悪い、全部美依が悪い、すべて美依が悪いんだ、美依が悪いんだよぉ!」
おれはいま少しワガママになっているけれど……でもこれ……おれは無罪、悪いのは美依って、ほんとうにそう思うしかなかった。だってこんな展開……男が有罪になる根拠なんてどこにもひとつもないのだから。
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