鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第七十八幕 探索五日目と暗殺開始

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 家を出ると空は既に茜色の一部が暗闇へと変わろうとしていた。
 それもその筈で海底遺跡から戻ってきた時にはすでに空は茜色に染まっていた。時計が存在しないこの世界で正確な時間を知るには都市などにある鐘の音か、太陽の位置を見るしかない。しかし海底遺跡の中ではその二つを知ることは不可能のためどうしても体内時計に頼ってしまう。しかし魔物に襲われる緊張感や警戒しているなかで正確な時間を計るのは無理と言うものだ。
 暗くなる前にさっさと小屋に戻った千夜を待ち構えていたのは、愛する家族と暖かな料理だった。

「お帰りなさい旦那様」
「ただいま。それにしても今日は随分と豪勢だな」
「私たちは帰るのが早かったこともあって暇つぶしに釣りしてたらウィルが思いのほか釣ってね」
「ご、ごめんなさい」
「なぜ謝る。ウィルのおかげで今日は美味しい魚が食べれるんだ。ありがとうな」
「はい!」
 頭を優しく撫でながら呟くように言った千夜の言葉にウィルは嬉しそうに返事をした。

「それじゃ食べましょうか」
「そうだな」
 合掌して、いただきます。という言葉が重なり室内を満たしたところで全員で楽しくご飯を楽しむのだった。
 夕食を楽しんだあとは全員で毎日行われている話し合いの場に参加した。話し合いの内容は明日探索に向かう冒険者たちが発表されただけで終わった。
 小屋に戻った千夜たちは晩酌しながら明日について話し合う。因みにウィルは疲れたのか既にベッドに入るなり熟睡してしまった。
 エリーゼにお酒を注いで貰い煽るように飲み干す。お酒の度数と鬼の耐性もあってかお猪口程度ではほろ酔い気分にもならない。

「それで明日からはどうするの?」
「クロエには探索中に伝えたが策がある」
「策ですか?」
 他の者たちの代表としてミレーネが問い返す。

「ああ。それを今から話すが正直この役をやる奴は損な役回りだ。危険も伴うしな」
「それってどんな策なの?」
「それは――」
 お猪口をテーブルの上に置いた千夜は真剣な面持ちで作戦を話し始めた。
 その内容にエリーゼ、ミレーネ、クロエは驚き、エルザは不敵な笑みを浮かべるのであった。

「よくもまあそんな作戦が思いつくわね」
「呆れたか?」
「少しね。でも今後の展開を考えればそれしか無いでしょうね」
「本当なら俺が出来れば良かったんだが、そうもいかないからな」
「仕方がありません。センヤさんは探索に強制参加ですから」
「まったくあの依頼主ももう少し考えて貰いたいわね」
「そう言うな」
 エリーゼの愚痴に笑みを零した千夜はエルザにお酒を注いで貰い再び喉に流し込む。

「それじゃ、すまないが明日は頼んだ」
「「「「はい」」」」
 こうして作戦会議とは言えないが明日の暗殺計画がスタートした。


 朝食を終えた千夜はウィルとエリーゼに見送られて海底遺跡へと探索に向かった。
 今日で探索は五日目。今日を入れても残り三日の間に出来るだけ多く財宝を見つけられるのか冒険者たちはその事で頭がいっぱいになっていた。
 今回は用事があると理由でベノワは参加しなかった。その代わり全て千夜に任せると出発前に言われている。
 一階層を気兼ねなく歩く千夜は視線を背後に向ける。
 そこには今日ターゲットの海賊二人が歩いていた。
(タイチともう一人は明日だな)
 千夜にとって予想外だったのは今日中に全員殺せるかと思っていたが、一人は酒の飲み過ぎで、タイチは前の戦いからまだ本調子じゃないという理由で今日の探索を辞退したのだ。

「よし、全員周囲警戒だ」
 その言葉に全員が無言で頷くと千夜たちは二階層へと足を踏み入れた。
 ゆっくりと周囲を警戒しながら進んで行く。
 今回の移動は昨日と同じで五班編成での行動だ。勿論千夜は一斑の先頭だ。そして海賊二人は二班の最後尾を警戒していた。
 調べつくした二部屋を通過し十字路が見えてはじめた時だった。

「ぅわあああああああああぁぁぁ!!」
 突如後ろから悲鳴が通路に響き渡る。

「どうした!?」
 突然の悲鳴に千夜は振り向き状況説明を求めた。
 だが、気が付くと恐怖で二班の連中が走ってこっちにきていた。

「ど、どうやら二班の背後を警戒していた二人がやられたようだ!」
「クソッ!どんな魔物に殺られたんだ!」
 一斑に合流した二班の一人に千夜は状況説明を求めた。

「そ、それが分からないんだ!気が付いたら二人が殺されていて!」
「お、おい大変だ!」
「今度はどうした!」
「ス、スケルトンだ!」
「なにっ!」
 千夜は指差す方向に視線を向けるとそこには50体近いスケルトン軍団が千夜たちを包囲するように待ち構えていた。

「チッ、よりによってグレータースケルトンか!」
「そ、それは本当なのか!」
「ああ。間違いない。ダンジョンで見たことがある。全員武器を構えろ。魔法攻撃が得意な連中は後方支援だ!」
 全員が千夜の言葉に武器を持つ手を強く握りしめる。

「行くぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
 こうしてグレータースケルトンとの戦闘が始まった。
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