鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第七十九幕 退却と先行

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 千夜は含めた前衛は打撃重視の攻撃で押し寄せてくるグレータースケルトン軍団を押し止める。
 その隙に魔法が得意な後衛がアースロックなどの魔法でスケルトンたちを攻撃。
 しかしスケルトンの上位のグレータースケルトンたちのHPは遥かに多く、また統率するグレータースケルトンリーダーによって苦戦を強いられていた。

「どうするセンさんこのままだと全滅だ!」
「仕方が無い、俺が突破口を作る。その隙に一階層まで退却だ」
「分かった!」
 全員が千夜の指示に頷くの確認したところで、千夜はすぐさま一階層へと続く通路を塞ぐグレータースケルトン目掛けて大量のアースヴァレットを放つ。
 無数のアースヴァレットによって粉砕した事によって突破口が生まれる。

「今だ!突き進め!」
「「「「「おおおおおおおおぉぉぉぉ!」」」」」
 飛矢となりグレータースケルトン軍団の間を突き進む冒険者たちはどうにか三班以降の班と合流し、そのまま一階層まで退却することに成功した。

「ど、どうにか戻って来られたな」
「ほ、本当だな……」
 全力疾走による退却で疲れたのか大半の冒険者が肩で呼吸をしていた。
 そんな中千夜は平然として周囲を確認していた。

「各班長は被害報告を頼む」
「二班、死傷者二名、負傷者一名ですが掠り傷程度だ」
「三班は負傷者二名で、どっちも軽く斬られただけで命に別状はない」
「四班は死傷者、負傷者ともに無し」
「5班も同じく」
「そうか」
 グレータースケルトンは一斑と二班を包囲するように現れたため、四班と五班には被害がなかったようだ。しかし三班は包囲したグレータースケルトンの背後から攻撃して戦闘になったため負傷者を出してしまった。

「一斑は負傷者一名だけだ」
「つまり死傷者二名、負傷者四名か。それも軽傷程度」
「奇跡だな」
「ああ、普通なら全滅していてもおかしくない」
「だが、二人も死なせてしまったか」
「センさんが気にすることじゃねぇよ」
「そうだぜ。突然の奇襲にあったのにこの程度で済んだことの方がよっぽど凄いんだからよ」
「だが、これではあの男にまた何か言われてしまうかもしれないからな」
「そん時は俺たちが庇ってやるよ」
「ああ、お前にグレータースケルトン軍団に襲われて戻ってこれるのかってな!」
「すまないな」
 誰もが千夜はリーダーとして認めていた。それはあの突然の襲撃に混乱と焦りで全滅していてもおかしくない状況のなか千夜は相手の正体を瞬時に把握して、的確な指示を出した。そして退却のための突破口まで作った。その結果最初の襲撃で死んだ二人を除いて、負傷者四名で抑えたことは千夜の多大な功績と言えた。

「それでセンさんこれからどうする」
「まだ探索を始めたばかりだしな。それにこのまま戻ればベノワになんて言われるか」
「「「「「あ~」」」」」
 ガミガミと説教される老婆の姿が全員の脳裏に浮かび上がった。

「負傷者の容態はどうなんだ?」
「大丈夫だ回復ポーションを飲んだからな」
「そうか」
 千夜はそこで冒険者全員を見渡す。
 瞳にはまだ戦えるという意思が宿っており誰も戦意喪失はしていなかった。
(まだ戦えるな)

「まず、一斑のみで先行して二階層の状況を確認してくる。グレータースケルトンたちが待ち構えているようだったら話し合いで探索続行か地上に戻るかを決める。姿がないようだったら全員で探索を行う」
「もしもまた襲撃にあったらどうする?」
「勿論その時はここで作戦介護を行うが、正直待ち構えて貰っていた方が楽だ」
 千夜の呟きに誰もが頷く、周囲を警戒するより待ち構えて貰っていたほうが対処も早く先手を取られる事がないからだ。

「よし、行くぞ」
 千夜を含めて一斑は二階層の状況を確かめるべく階段を下りていった。
 二階層入り口を覗くとそこは先ほどまで戦闘していたのは嘘だったかのように静寂が支配していた。

「グレータースケルトンの姿はないな」
「そうみたいだな」
 冒険者の言葉に千夜同意の言葉を漏らす。

「さて、どうする?」
「少し進んでさっき戦ったところまで行ってみるぞ」
「わ、分かった」
 恐怖で声が震えるが我慢して二階層の中を歩き進む。
(マップには何も表示されていないか)
 内心そんな事を思いながらも千夜は警戒を怠ることはない。
 結局先ほど戦闘を繰り広げた場所まで行ったがグレータースケルトン軍団の姿は見当たらなかった。

「一旦戻るぞ」
 探索を済みの部屋を帰り際に覗いてみたが何もいない事を確認して一階層へと戻ってきた。

「それでどうだった?」
「姿はなかった」
「そうか。で、これからどうするだ?」
「探索を続行する。二班に居た奴隷二人は一斑に。冒険者三名は各班に一人ずつ入って行動して貰う」
「つまり4班で行動ってわけか」
「そうだ。でだ、魔物が巨大生物と魚だけでなくグレータースケルトン軍団までいると分かったからな。今まで以上の警戒が必要だ」
 その言葉に全員が頷く。

「よし、行くぞ」
「「「「「おう!」」」」」
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