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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第四幕 どちらが強いと団体戦

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 ベイベルグ皇帝との謁見が終わった千夜はなぜか勇治たちに呼ばれていた。
(早く帰りたい)
 勿論最初は断った。しかし紅葉たちの説得に気圧され仕方なく勇治たちと対面しているのだ。

「で、話ってなんだ?」
「そ、その……ちゃんと誤りたくて……」
「別に誤る必要はない。俺が言いたい事を理解してくれたならそれで構わない」
 そう言って千夜は立ち上がろうとした。

「待って下さい!」
 声を荒立てて発したのは意外な人物。それは、

「お、おいどうしたんだ紅葉」
 動揺を隠し切れない正利。それだけ意外な人物なのだ。

「他に何かあるのか?」
「聞きたい事があります」
「なんだ?」
「千夜さんは今のエリーゼさんたちより強いんですか?」
 そんな疑問だった。
 エリーゼたちや勇治たちからしてみれば何故分かりきった事を聞くのか不思議でならなかったが、千夜は違った。
(流石は紅葉だな。存在進化を果たしたエリーゼたちのステータスを知っている紅葉は思っただろう。もしも俺が強ければ、一体俺は何者なのかと)
 存在進化後の者たちは圧倒的力を持っている。それは人外と呼べる力。にも拘わらずそんなエリーゼたちよりも強いとなるといったい千夜とは何者なのか? それが紅葉が感じた疑問なのだ。
 そして返答しただいでは千夜の正体、おもに種族ではあるがバレる危険性もあるのだ。

「紅葉はどう思っているんだ?」
「私は千夜さんの方が遥かに強いと思っています」
「そうか……なら、そう思っておけば良い」
「……」
 まるで本当はエリーゼたちのほうが強いと言わんばかりの返答。しかしこれが嘘だと分かっていたとしても極僅かな疑問を持たせるのが千夜の狙いなのだ。

「分かりました。それとお願いがあります」
「次はなんだ?」
「エリーゼさんたちと戦わせて貰えませんか?」
 その言葉に千夜も含めて驚きの表情を浮かべる。
 エリーゼたちの事を舐めているわけではない事は本人たちだって分かっている。ただ現在の自分が何処まで出来るのかを試してみたいのだろう。それも存在進化を果たしてハイヒューマン、ハイエルフ、ハイダークエルフ、始祖吸血鬼に。
(だが、それ以外にも目的があるな……勇治の事だな)
 勇治は人を殺した。しかしそれが大切な仲間が危機的状況に陥ったためであって、普通の戦闘時でも、殺意を持って、殺気を纏って戦えるのか心配なのだ。また、自分たちも可能なのか知りたいのだろう。
(エリーゼたちにも、これは良い勉強になるかもな)
 これまだ格上の相手や魔物たちと戦ってきたエリーゼたち。格下だったとしてもそれは命のやり取りを現場のみだけ。それが模擬戦闘で。それも格下の相手と戦うとなるといったいどう対処するのか見たくなった千夜。

「一つ聞くが、それは個人戦か? 団体戦か?」
「団体戦でお願いします」
「分かった」
 こうしてエリーゼたちは反論する隙すら与えられる事無く模擬戦をすることとなったのだった。
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