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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第七十七幕 鞭と美人の上官
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魔族撃退の知らせは直ぐに帝都知らされた。
その事にベルグたち重鎮達は歓喜の声を上げる。
その後詳細が伝えられるとベルグの指示で全世界に伝えられた。それにより帝都にすむ住民達は安堵しまるでお祭り騒ぎとさっていた。
公開出来る情報には限度があるが、なるべく詳細に伝えられた。その中には今回の功労者である月夜の酒鬼、和也、そして勇者たちの事も伝えられた。勇者たちの事はサイロの気遣いによるところが大きかった。
そんな帝都王宮会議室では、
「まさかこれ程早く魔族軍を撤退できるとは思いませんでしたな」
「ええ、まったくです」
会議そっちのけで誰もが笑顔で会話を楽しんでいた。テーブルにはワイン、酒が置かれており完全に小さな祝勝パーティーが開かれていた。
「ライラ殿」
「何でしょうか皇帝陛下」
「貴方はとても優秀な部下をお持ちのようだ。報告によれば敵の主力戦力の一部を一人で倒しただけでなく、危機的状況を何度か救ったとあったぞ」
「お褒めに頂きありがとうございます。教皇様にも良い知らせが出来ました」
嬉しくもあったがライラは正直和也の事が心配なのだ。
(嬉しさのあまり遣りすぎていないだろうな)
あまり自国の戦力を他国に教えたくはない。兵士の数が知られたところであまり問題はないが個人の能力が知られる事だけは避けたいライラ。
(部下が強いとなれば間違いなく上司が強いと思われてしまうからな)
その後も笑い声が途絶える事は無く、ちゃんとした会議は和也たちが戻ってきてからに改めてすることとなった。
**************************************
その頃とある一室では一人の人物が苛立ちのあまりワイングラスを壁に投げつけていた。甲高い音を発しながら割れたワイングラスは中身のワインを壁と床に撒き散らした。
「まったく余計な事をしよって。これでは私の作戦が無駄になっただけではないか! 帝国の馬鹿共を少しでも弱らせる筈が身内の活躍で失敗するなど末代までの恥ではないか!」
息を荒くする人物は息を整えるべくオフィスチェアに体重を預ける。
「だが、ワシにはまだあれがある。最強の薬がな」
新たなワイグラスに高級なワインを注いぐと喉を潤す。
豪華な部屋一人の人物は不敵な笑みを浮かべる。その部屋には数人の女が倒れ込んでいた。
「さてと休んだ事だしまたこいつらを痛めつけて遊ぶとするか」
男は無造作に置かれていた鞭を手にすると女達の許にへと歩み寄る。
「下等生物と愚者どもはワシに従っておけばよいのだ。ほら、さっさと立て!」
振り下ろされる鞭によって、乾いた音と悲鳴が室内に響き渡るのだった。
**************************************
あれから数日が経ち、月夜の酒鬼。和也、勇者たちは帝都へ帰還する事になった。
月夜の酒鬼と和也は出来るだけは早く帝都に戻りたかったが、勇者の疲労――勇治の精神――が思った以上に酷かったため馬車で帰ることとなった。それなら勇者たちを無視して戻れば良い話なのだが、そうもいかない。ベルグの指示で凱旋パレードをする事が決まったためだ。
帰還するにあたって馬車が3台用意されたが、和也は断った。月夜の酒鬼、勇者たち、和也とそれぞれのる馬車が違うからだ。一人で乗るのが寂しい訳ではない。一人だけしか乗らないのに馬車を出すのはあまりにも効率が悪いからと和也は断ったのだ。結局和也は一人だけ乗馬で帰ることとなった。
「それでは月夜の酒鬼、勇者様方、フィリス聖王国の騎士今回は真にありがとうございました」
南城門前で集結する人々。かれらはこれから出発する和也たちを――主に月夜の酒鬼だが――見送りに来ていた。その中には腕などを骨折した兵士の姿もあった。
「サイロ殿」
「なんだ、カズサ殿」
「これを負傷した兵士達に使ってくれ。それとこれはみんなで食べてくれ」
和也はアイテムボックスから大量の――これまでの狩りで手に入れた――食料と中級回復ポーションをサイロに渡そうとした。
「すまないが、これは受け取れない。フィリス聖王国の騎士である貴殿にこれ以上迷惑は掛けられぬからな」
「そうか。なら、一友人としては駄目か? 正直俺は元冒険者って事もあってフィリス聖王国が掲げる人間至上主義が理解できないんだ。こうして人間と他種族が手を取り合い共に暮らしている。それなのにどうして他の種族を卑下にするのかまったく理解出来ないんだよ」
フィリス聖王国の人間と言う事もあり、普通なら誰も信じなかっただろう。だが、和也の口から語られる言葉、一言一句に誰もが真実だと思った。
「なら、なぜカズサ殿はフィリス聖王国の騎士になった。貴殿の力なら何処でも直ぐに採用してくれそうだが?」
サイロの口から吐かれた質問は当然の疑問だと言えた。
「何故だろうな。スカウトしてくれた上官が美人だったからかもな」
はぐらかす言葉に全員が笑い出す。きっと言えない事情があるのだろうとサイロは悟った。
「それでこれは受け取って貰えるのか?」
「ああ、ありがたく受け取ろう。これで兵士も民達も喜ぶ」
「それは良かった」
「もしもフィリス聖王国に居辛くなったらレイーゼ帝国に来ると良い。その時は喜んで歓迎する」
「それは嬉しいな。だが軍の勧誘なら美人の上官で頼む」
「ああ、探しておこう」
再び南城門前に黄色い笑い声が生まれる。
こうして和也たちは帝都ニューザに向けて都市ロアントを出発した。
必要ないと思えるが護衛に囲まれながら出発した和也たちに笑顔浮かべて手を振る都市ロアントの住民達。
そんな彼らの笑顔を背に和也は馬の手綱を改めて握りなおすのだった。
その事にベルグたち重鎮達は歓喜の声を上げる。
その後詳細が伝えられるとベルグの指示で全世界に伝えられた。それにより帝都にすむ住民達は安堵しまるでお祭り騒ぎとさっていた。
公開出来る情報には限度があるが、なるべく詳細に伝えられた。その中には今回の功労者である月夜の酒鬼、和也、そして勇者たちの事も伝えられた。勇者たちの事はサイロの気遣いによるところが大きかった。
そんな帝都王宮会議室では、
「まさかこれ程早く魔族軍を撤退できるとは思いませんでしたな」
「ええ、まったくです」
会議そっちのけで誰もが笑顔で会話を楽しんでいた。テーブルにはワイン、酒が置かれており完全に小さな祝勝パーティーが開かれていた。
「ライラ殿」
「何でしょうか皇帝陛下」
「貴方はとても優秀な部下をお持ちのようだ。報告によれば敵の主力戦力の一部を一人で倒しただけでなく、危機的状況を何度か救ったとあったぞ」
「お褒めに頂きありがとうございます。教皇様にも良い知らせが出来ました」
嬉しくもあったがライラは正直和也の事が心配なのだ。
(嬉しさのあまり遣りすぎていないだろうな)
あまり自国の戦力を他国に教えたくはない。兵士の数が知られたところであまり問題はないが個人の能力が知られる事だけは避けたいライラ。
(部下が強いとなれば間違いなく上司が強いと思われてしまうからな)
その後も笑い声が途絶える事は無く、ちゃんとした会議は和也たちが戻ってきてからに改めてすることとなった。
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その頃とある一室では一人の人物が苛立ちのあまりワイングラスを壁に投げつけていた。甲高い音を発しながら割れたワイングラスは中身のワインを壁と床に撒き散らした。
「まったく余計な事をしよって。これでは私の作戦が無駄になっただけではないか! 帝国の馬鹿共を少しでも弱らせる筈が身内の活躍で失敗するなど末代までの恥ではないか!」
息を荒くする人物は息を整えるべくオフィスチェアに体重を預ける。
「だが、ワシにはまだあれがある。最強の薬がな」
新たなワイグラスに高級なワインを注いぐと喉を潤す。
豪華な部屋一人の人物は不敵な笑みを浮かべる。その部屋には数人の女が倒れ込んでいた。
「さてと休んだ事だしまたこいつらを痛めつけて遊ぶとするか」
男は無造作に置かれていた鞭を手にすると女達の許にへと歩み寄る。
「下等生物と愚者どもはワシに従っておけばよいのだ。ほら、さっさと立て!」
振り下ろされる鞭によって、乾いた音と悲鳴が室内に響き渡るのだった。
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あれから数日が経ち、月夜の酒鬼。和也、勇者たちは帝都へ帰還する事になった。
月夜の酒鬼と和也は出来るだけは早く帝都に戻りたかったが、勇者の疲労――勇治の精神――が思った以上に酷かったため馬車で帰ることとなった。それなら勇者たちを無視して戻れば良い話なのだが、そうもいかない。ベルグの指示で凱旋パレードをする事が決まったためだ。
帰還するにあたって馬車が3台用意されたが、和也は断った。月夜の酒鬼、勇者たち、和也とそれぞれのる馬車が違うからだ。一人で乗るのが寂しい訳ではない。一人だけしか乗らないのに馬車を出すのはあまりにも効率が悪いからと和也は断ったのだ。結局和也は一人だけ乗馬で帰ることとなった。
「それでは月夜の酒鬼、勇者様方、フィリス聖王国の騎士今回は真にありがとうございました」
南城門前で集結する人々。かれらはこれから出発する和也たちを――主に月夜の酒鬼だが――見送りに来ていた。その中には腕などを骨折した兵士の姿もあった。
「サイロ殿」
「なんだ、カズサ殿」
「これを負傷した兵士達に使ってくれ。それとこれはみんなで食べてくれ」
和也はアイテムボックスから大量の――これまでの狩りで手に入れた――食料と中級回復ポーションをサイロに渡そうとした。
「すまないが、これは受け取れない。フィリス聖王国の騎士である貴殿にこれ以上迷惑は掛けられぬからな」
「そうか。なら、一友人としては駄目か? 正直俺は元冒険者って事もあってフィリス聖王国が掲げる人間至上主義が理解できないんだ。こうして人間と他種族が手を取り合い共に暮らしている。それなのにどうして他の種族を卑下にするのかまったく理解出来ないんだよ」
フィリス聖王国の人間と言う事もあり、普通なら誰も信じなかっただろう。だが、和也の口から語られる言葉、一言一句に誰もが真実だと思った。
「なら、なぜカズサ殿はフィリス聖王国の騎士になった。貴殿の力なら何処でも直ぐに採用してくれそうだが?」
サイロの口から吐かれた質問は当然の疑問だと言えた。
「何故だろうな。スカウトしてくれた上官が美人だったからかもな」
はぐらかす言葉に全員が笑い出す。きっと言えない事情があるのだろうとサイロは悟った。
「それでこれは受け取って貰えるのか?」
「ああ、ありがたく受け取ろう。これで兵士も民達も喜ぶ」
「それは良かった」
「もしもフィリス聖王国に居辛くなったらレイーゼ帝国に来ると良い。その時は喜んで歓迎する」
「それは嬉しいな。だが軍の勧誘なら美人の上官で頼む」
「ああ、探しておこう」
再び南城門前に黄色い笑い声が生まれる。
こうして和也たちは帝都ニューザに向けて都市ロアントを出発した。
必要ないと思えるが護衛に囲まれながら出発した和也たちに笑顔浮かべて手を振る都市ロアントの住民達。
そんな彼らの笑顔を背に和也は馬の手綱を改めて握りなおすのだった。
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