鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

文字の大きさ
216 / 351
第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第百二幕 帝都帰還と言葉を失う

しおりを挟む
 千夜たちがレイーゼ帝国に向かって歩いている頃、フィリス聖王国から各国にある情報が伝えられた。
 それは一体の魔族の襲撃にあったというものだ。
 その内容は突如王城に現れた魔族。なんとか倒す事が出来たものの、騎士総大将レイと大将となったばかりのカズヤ、フーリッシュ枢機卿を失ったと言う物だ。勿論内容は嘘である。だが、真実を話せば先日の魔族軍襲撃に関与した事が公になるため、しかたなく偽情報を伝えたのだ。
 その事に各国は色々な反応を見せた。喜ぶ者、憤りを感じる者様々だった。
 敵対する国としては喜ばしく、同じ目的にあった国としては戦力ダウンに憤りを覚えた。
 他にもこの情報を知ったのは国の重鎮達だけではない。クラン「月夜の酒鬼」、セレナ、そして勇者たちである。勿論、エリーゼたちは信じなかった。だが、念の為にとラッヘンに命令して千夜に念話で連絡をとってもらい真実を知った。その事をエリーゼたちはセレナにも伝えた。そのためエリーゼたちは何の反応も示さなかった。だが、勇治たちは違う。縁を切ったとはいえ、それは和也からの一方的なもの。覚悟も決意も諦めもついていない時に知らされた内容に全員が寝込んでしまった。
 そしてその情報は各国の民にまで知るものとなる。国によって反応は違うが一つだけ共通していた事は魔族への恨みが大きくなっただけだった。それを考えれば一番の被害者は魔族とも言えなくは無いが、今回の事は一部の魔族ともつながりがあったため仕方が無いとも言えるかもしれない。
 そんなこんなで時は流れ、千夜たちは一ヶ月掛けてようやくレイーゼ帝国帝都ニューザに到着した。
 千夜に助けられた女たちは徐々に亜人種が増える事に安堵した者も居れば、怯えつつも好奇心の目で見る者もいた。

「ここが帝都ニューザセンヤさんが活動している都市ですか」
「そうだ。俺はここで暮らしている」
「でも、こんなに時を空けて良かったんですか? 冒険者は一定期間以内に依頼をこなさないと冒険者としての資格を剥奪されると聞きましたけど」
「大丈夫だ」
 見栄を張るわけでも自身でもなく、簡素な返答に彼女たちは疑念を覚えてならないが、それは直ぐに解消される事となる。
 城門前まで来た千夜たちはようやく通行審査を行う事になる。

「あれ、センヤ様今日は外に出ておられましたか?」
「ああ、息は別の城門から出たからな」
「そうでしたか。で、後ろの女性たちは?」
「彼女たちは依頼の帰りに人攫いに捕まってたから助けてきた」
「そうでしたか、ありがとうございます」
「なに、気にしなくて良い。それよりも早く彼女たちを通れるように水晶で調べてくれ。これが通行料だ」
 千夜は兵士に銀貨60枚を渡す。

「解りました」
 十数分して通行許可を貰うと千夜たちは帝都内へと入る。

「センヤって有名人なのね」
「ん? まあな」
 自慢するわけでも遠慮がちに言うわけでもなく平然と答える。そんな時、

「あ、漆黒の鬼夜叉様だ!」
 一人の子供が千夜を指差して叫ぶ。

「こら、人を指指さないの! す、すいません」
「何、気にしなくて平気だ」
 親子との会話も終わり歩き出す千夜だったが、助けた女性たちが付いて来ていない事に気付き振り返る。

「どうしたんだ? 早く行くぞ」
「嘘、貴方が漆黒の鬼夜叉なの?」
「Xランク冒険者の?」
「龍殺しの?」
「吸血鬼50人斬りの?」
「そうだが、言わなかったか?」
「「「「「「聞いてないわよ!」」」」」」
 異口同音で叫ぶ女性たちに千夜は気圧されそうになる。

「最初に自己紹介した筈だが、千夜って」
「それで誰がXランク冒険者漆黒の鬼夜叉って気付くのよ!」
「確かにそうだな。悪かった」
 精神的疲労を感じた女性陣だったが直ぐに怒るのをやめて千夜の後に続く。
 大通りを歩く事数分、一際行列を作るお店があった。

「あ、オールリキュール!」
「嘘、本当だ!」
「未だにあれだけの行列が出来るなんて凄い!」
「私も飲んでみたいな~」
 各々楽しそうに話して居る時オールリキュールから獣人の店員が外に出てきた。行列の数を数えているようだ。
 数分して数え終わり店に戻ろうとしたとき、獣人は千夜の姿に気付き近づいてきた。

「センヤさんお久しぶりです!」
「久しぶりだな、アスカ。店のほうは大丈夫か?」
「はい。今ではもう仕事に慣れました。ルールを破らない客は月に3人居るか居ないかですしね。あ、それからお客様からの要望で新しいお酒や新しい種類の果実酒は無いのかってのが最近多いですね」
「解った。今日はこの後王宮に行くから、明日にでも宿舎に行く時間はまだ決めてないから伝えられないが、その時にでも新しいお酒の案を出し合うとしよう」
「解りました。あ、それと奥様たちが最近異常にお酒を飲むようになったので在庫の数が少し減ってしまいまして」
「美味いからって飲みすぎるなってあれほど言ったのに。解った俺から注意しておこう。迷惑かけてすまないな」
「いえ、これも仕事ですので」
「こんなに優秀なら給金をアップした方が良いかもな。セバスと相談してみる事にしよう」
「いえいえ! これいじょう上げられても買う物とかあんまり無いですし! 逆に困ります。貯金するのが好きなレアムなんて3つ目に突入しているぐらいですから!」
「そうか。まあ、考えておこう」
「お願いしますね」
 話も終わり別れようとした時だった。

「「「「「「ちょっと待って!」」」」」」
「何だ?」
「話の内容を聞く限りセンヤさんが関わって居るように聞こえるんですけど」
「センヤさん彼女たちは?」
「新しい職員として雇うかと」
「今でも十分人は居ますけど」
「まだ確定じゃないが第二店舗も考えてるからな」
「そうなんですか! おめでとうございます!」
「ありがとう」
「「「「「「話を聞けえええぇぇ!!」」」」」」
「なんだ?」
「だからちゃんと説明してください!」
「センヤさん教えてないんですか?」
「そう言えば教えてないな」
「なら、この反応も分かりますよ。仕方が無い、ここは私が説明します。初めまして私はアスカ。オールリキュールで働く職員です。で、こちらに居られるセンヤさんは私たちの雇い主であり、オールリキュールの社長兼オーナーです。以上」
「解ったか?」
「「「「「「……………」」」」」」
 まさか会ってみたい、行ってみたい場所全てに千夜が関わっている事に言葉を失うのであった。
しおりを挟む
感想 694

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。