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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第二幕 成長と排除
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夕食を終えた千夜たちは交代制でテントの中で体を休ませる。
初めての事で緊張していたのか、ウィルは夕食を食べ終わると直ぐに寝てしまった。
今、外で見張りをしているのは千夜とエリーゼ。本当ならウィルと一緒に寝たかった所だろうが、そうもいかない。今回の依頼はエリーゼにとって重要だからだ。
それでも今は少しだけ家族として母親として妻として千夜に接する。
「それにしてもウィルがあんなに成長していたとは思わなかったわ。子供の成長は凄いわね」
「そうだな。前に会った時とは比べ物にならないぐらい強くなっている」
ウィルに合わせて走ったとはいえ、その速度は尋常ではなかった。
「ウィルはお前とサルヴァの血をちゃんと受け継いでいる。挫けても立ち上がって乗り越える力を持っている。俺に出来る事は戦い方や実戦でのノウハウを教えてやる事ぐらいだからな」
「それも大切な事よ」
「だが、それは父親としてどうかと思う。初めてウィルと会った時からあの子は頭が良かった。礼儀正しく、階級や種族関係無く分け隔てなく接する優しさや大きな器を持っている。人として大切な事を教えないといけないんだろうが、何を教えてやれば良いのかさっぱり解らないんだ」
「それは私だって同じよ。でも良い事と悪い事はちゃんと教えるのはあたりまえだけど、普通では教えられない事なんかを旦那様なりに教えて上げれば良いと思うわよ」
「そうか?」
「ええ」
そこで会話が途切れると二人はゆらゆらと揺れ動く炎を見詰める。
十数分して千夜が口を開く。
「エリーゼ」
「なに?」
「領地の境界線まで後どれぐらいだ?」
「………」
話題が変わり家族の事から依頼の事になると表情に影が落ちる。
「……今のペースだと明後日の昼前には領地に入れるわ」
「そうか。エリーゼそれまでに覚悟しておいてくれ」
「解っているわ」
数年前まで自分が護ってきた領地が闇ギルドと代官によって汚された事に怒りを覚える。そして、
「エリーゼ、今回の事はお前のせいではない。私利私欲のために平然と他人を傷つける代官と闇ギルドが全て悪い」
「分かっているわ。でも、どうしても自分を責めちゃうのよ」
「その怒りは正当の物だ。だが、その怒りを自分に向けるのは間違っている。その怒りは代官と闇ギルドの連中に向けるべきだ」
「……分かったわ」
「それじゃあ、話を始める。質問するから答えてくれないか?」
「解ったわ」
千夜はエリーゼが治めていた領地について幾つか質問する。
「人口はどれぐらいだ?」
「私がまだ領主をしていた頃は領地全体でおよそ15万人。そのうちに3万人が私たちルーセント家がある都市に住んでいたわ」
「そうか。じゃあ都市ルーセント以外にそれなりに大きな街はあるのか?」
「そうね……都市ルーセントから東北東に二日行った所に人口2万人の都市【ケアド】があるわ。後、南に三日行った所にも【ダラ】って名前の都市があるわ。正確には港だけど。私の領地の一部が海に面しているから塩や海の特産品もあるの。そこの人口は1万5千人の都市ね。私の領地で都市と言えるのはこの3つだけよ。後は村や小さな町だけ」
地面に描いた領地にそれぞれの都市の印を入れていくと形は不恰好な三角形になった。
「そうか……」
(こういった場合小説だと間違いなく面倒事になるわけだが、さてどう対処したものか)
「どうしたの?」
「いや、ちょっとな。エリーゼ、都市と都市を繋ぐ中間に町はないのか?」
「あるわよ。でも、あるのはそれぞれ都市ルーセントと結ぶ中間でけなの。 ケアドとダラの中間に町はないわ。あるのは複数の村だけ」
「なるほど、ならこのまま都市ルーセントに向かう途中に村はあるか?」
「ええ。幾つかあるわ。それぞれ100人位の村で多いところで250人の村だけど」
「なら、最初はその村で情報集めだな」
(絶対に直ぐに代官や闇ギルドの連中に知られる事になるだろうがな。念のためにラッヘンとスケアクロウに調べさせておくか)
「二人とも出て来い」
千夜の言葉にエリーゼは誰かが盗み聞きしているのかと警戒するがすぐに杞憂に終わると解ると剣から手をのける。
地面に直径2メートルの赤黒い光を発する魔方陣からスケアクロウとラッヘンが跪いた状態で出現した。
「「御呼びでしょうか、創造主様」」
「ああ、二人に命を与える。まず、ラッヘンはここから4日ほどの所にあるケアドのと言う都市に向かい情報収集すること、俺が次の指示を出すまではその都市で過ごせ。スケアクロウも同じだ。お前はダラという都市に向かえ。解ったな」
「「畏まりました」」
跪いたまま軽く頭を下げると、二人は即座に姿を消した。
「旦那様、そこまでする必要があったの?」
「ああ、闇ギルドと代官が手を組んでいるという事は都市ルーセントだけが被害を受けているとは考え難いからな。元締めを、頭を倒した所で第二、第三の代官や組織が出る恐れだってあるしな。それに……」
「それに?」
「エリーゼが愛した、大切に思っている都市を領地を汚す奴は誰であろうと全て排除する」
「旦那様……」
不敵な笑みを浮かべる千夜の姿を見て恐怖で背筋が凍りそうになるが、それよりも自分のために動いてくれるという想いがエリーゼの胸を熱くさせ、鼓動を早めるのだった。
「センヤ、交代の時間なのじゃ」
テントから出てきたミレーネのクロエの姿を見て千夜とエリーゼはテントへの中に入るのだった
初めての事で緊張していたのか、ウィルは夕食を食べ終わると直ぐに寝てしまった。
今、外で見張りをしているのは千夜とエリーゼ。本当ならウィルと一緒に寝たかった所だろうが、そうもいかない。今回の依頼はエリーゼにとって重要だからだ。
それでも今は少しだけ家族として母親として妻として千夜に接する。
「それにしてもウィルがあんなに成長していたとは思わなかったわ。子供の成長は凄いわね」
「そうだな。前に会った時とは比べ物にならないぐらい強くなっている」
ウィルに合わせて走ったとはいえ、その速度は尋常ではなかった。
「ウィルはお前とサルヴァの血をちゃんと受け継いでいる。挫けても立ち上がって乗り越える力を持っている。俺に出来る事は戦い方や実戦でのノウハウを教えてやる事ぐらいだからな」
「それも大切な事よ」
「だが、それは父親としてどうかと思う。初めてウィルと会った時からあの子は頭が良かった。礼儀正しく、階級や種族関係無く分け隔てなく接する優しさや大きな器を持っている。人として大切な事を教えないといけないんだろうが、何を教えてやれば良いのかさっぱり解らないんだ」
「それは私だって同じよ。でも良い事と悪い事はちゃんと教えるのはあたりまえだけど、普通では教えられない事なんかを旦那様なりに教えて上げれば良いと思うわよ」
「そうか?」
「ええ」
そこで会話が途切れると二人はゆらゆらと揺れ動く炎を見詰める。
十数分して千夜が口を開く。
「エリーゼ」
「なに?」
「領地の境界線まで後どれぐらいだ?」
「………」
話題が変わり家族の事から依頼の事になると表情に影が落ちる。
「……今のペースだと明後日の昼前には領地に入れるわ」
「そうか。エリーゼそれまでに覚悟しておいてくれ」
「解っているわ」
数年前まで自分が護ってきた領地が闇ギルドと代官によって汚された事に怒りを覚える。そして、
「エリーゼ、今回の事はお前のせいではない。私利私欲のために平然と他人を傷つける代官と闇ギルドが全て悪い」
「分かっているわ。でも、どうしても自分を責めちゃうのよ」
「その怒りは正当の物だ。だが、その怒りを自分に向けるのは間違っている。その怒りは代官と闇ギルドの連中に向けるべきだ」
「……分かったわ」
「それじゃあ、話を始める。質問するから答えてくれないか?」
「解ったわ」
千夜はエリーゼが治めていた領地について幾つか質問する。
「人口はどれぐらいだ?」
「私がまだ領主をしていた頃は領地全体でおよそ15万人。そのうちに3万人が私たちルーセント家がある都市に住んでいたわ」
「そうか。じゃあ都市ルーセント以外にそれなりに大きな街はあるのか?」
「そうね……都市ルーセントから東北東に二日行った所に人口2万人の都市【ケアド】があるわ。後、南に三日行った所にも【ダラ】って名前の都市があるわ。正確には港だけど。私の領地の一部が海に面しているから塩や海の特産品もあるの。そこの人口は1万5千人の都市ね。私の領地で都市と言えるのはこの3つだけよ。後は村や小さな町だけ」
地面に描いた領地にそれぞれの都市の印を入れていくと形は不恰好な三角形になった。
「そうか……」
(こういった場合小説だと間違いなく面倒事になるわけだが、さてどう対処したものか)
「どうしたの?」
「いや、ちょっとな。エリーゼ、都市と都市を繋ぐ中間に町はないのか?」
「あるわよ。でも、あるのはそれぞれ都市ルーセントと結ぶ中間でけなの。 ケアドとダラの中間に町はないわ。あるのは複数の村だけ」
「なるほど、ならこのまま都市ルーセントに向かう途中に村はあるか?」
「ええ。幾つかあるわ。それぞれ100人位の村で多いところで250人の村だけど」
「なら、最初はその村で情報集めだな」
(絶対に直ぐに代官や闇ギルドの連中に知られる事になるだろうがな。念のためにラッヘンとスケアクロウに調べさせておくか)
「二人とも出て来い」
千夜の言葉にエリーゼは誰かが盗み聞きしているのかと警戒するがすぐに杞憂に終わると解ると剣から手をのける。
地面に直径2メートルの赤黒い光を発する魔方陣からスケアクロウとラッヘンが跪いた状態で出現した。
「「御呼びでしょうか、創造主様」」
「ああ、二人に命を与える。まず、ラッヘンはここから4日ほどの所にあるケアドのと言う都市に向かい情報収集すること、俺が次の指示を出すまではその都市で過ごせ。スケアクロウも同じだ。お前はダラという都市に向かえ。解ったな」
「「畏まりました」」
跪いたまま軽く頭を下げると、二人は即座に姿を消した。
「旦那様、そこまでする必要があったの?」
「ああ、闇ギルドと代官が手を組んでいるという事は都市ルーセントだけが被害を受けているとは考え難いからな。元締めを、頭を倒した所で第二、第三の代官や組織が出る恐れだってあるしな。それに……」
「それに?」
「エリーゼが愛した、大切に思っている都市を領地を汚す奴は誰であろうと全て排除する」
「旦那様……」
不敵な笑みを浮かべる千夜の姿を見て恐怖で背筋が凍りそうになるが、それよりも自分のために動いてくれるという想いがエリーゼの胸を熱くさせ、鼓動を早めるのだった。
「センヤ、交代の時間なのじゃ」
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