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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第五十四幕 盗賊出現と幸運
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次の日、テントの中で目を覚ました千夜はまだ寝ているミレーネたちを起こさないように外に出る。
「あら旦那様、おはよう」
「おはようエリー」
「お早う御座います、主。どうぞお水です」
「おはようルーザ。ありがとう」
エルザから貰った水を飲み干すと千夜は鬼椿をアイテムボックスから取り出す。
「朝稽古?」
「ああ、やっておこうと思ってな」
「今日ぐらい休めばいいのに」
「やらなければ、鈍るからな。それに習慣だからな。しないと落ち着かない」
「そうれなら仕方ないけど」
「朝食の準備が出来次第お呼びします」
「ああ、頼む」
千夜は少し離れた森の中で抜刀する。
刀を構え振るう。形などない。ゲーム時代と同じ動きを淡々と繰り返す。
時々自分が考えた動きを混ぜ合わせながら新しい剣術の試行錯誤も行う。
「主、朝食の準備が整いました。すでに全員起きて集まっています」
「ああ、直ぐに向かう」
時が流れるのを忘れ没頭していた千夜はエルザの呼びかけで我に戻ると、納刀しエルザと一緒にみんなの許へ戻るのだった。
朝食を終えた千夜たちは都市ダラに向けて出発した。
ダラまではあと4日かかる。
千夜たちが本気で走ればすでに到着しているが、今回は護衛依頼のためそれは出来ない。
荷馬車に揺られながらゆっくりと進む。
結局何事も起きる事無く一日を終えた。
都市ルーセントを出発して3日目。
大陸の南側とはいえ、この時期はまだ肌寒さを感じさせる。
途中、都市ルーセントに向かう行商人とすれ違いながらもゆっくりと街道を進んでいく。
お昼休憩を終え、進んでいると突然千夜たちが臨戦態勢へと移る。
その行動に御者を行うドルンも背中で感じ取っていた。
「お、おいどうした。まさか盗賊か?」
「ああ、その通りだ。この先、800メートルほど進んだところで待ち構えている」
「は、800メートル……」
そんな離れた先に盗賊が潜んでいる事に気付ける千夜たちの凄さに驚きを隠せないドルンとその弟子たち。
「そ、それで盗賊の数は?」
「13人といったところか」
「よくそんなこまけぇ数字まで言えるな」
「ま、経験の賜物だ」
話を打ち切ると今度は千夜が指示を出した。
「このまま真っ直ぐ進んでくれ。あとは俺たちで対処する」
「わ、解った」
「エリーとウィルは荷馬車の護衛。ミーナとクーエは戦闘開始次第援護射撃を開始、魔法と弓で攻撃。ルーザと俺は荷馬車から降りて戦闘だ。質問はあるか?」
「俺たちはどうすれば良い?」
「そのままで良い。戦闘が終わり次第止まってくれ」
「もしもお前たちがやられたら?」
その言葉にエルザは顔を顰めるがドルンたちには見えていないので気にしない。
「その時は全力で逃げろ」
「わ、解った」
指示が全員に行き渡るとドルンは震える手で手綱を握り締めたまま進んでいく。
数分後、千夜たちが断言した800メートルにまもなく到着するというところで盗賊たちが道の両側から出てきて道を塞ぐ。
気がつけば既に後ろにも回りこまれ、完全に包囲されていた。
(前方に7人。後方に6人といったところか。リーダーらしき人物の姿はなし。森の中にも伏兵なし)
マップと危機察知スキルを使い敵の情報を出来るだけ集める。
(それにしてもあいつらの武器、ただの盗賊が手に入れられる物じゃないだろうに)
ロングソード、ショートソード、弓矢など武器を構えるが、その全てが綺麗に磨かれ新品当然に見えた。
(やはりあいつらも暗霧の十月の捨て駒の一つだろうな)
荷馬車から降りた千夜は鬼椿を抜刀する。
エルザもまた双剣を抜き構える。
「おいおい、この状況下で俺たちと殺り合うつもりかよ」
ゲラゲラと笑う盗賊たち。しかしそれは千夜たちにとって絶好のチャンスでしかない。
未だに笑い続ける目の前の男に対して容赦無く一閃。
笑みを浮かべた生首が宙を舞い、血飛沫が噴水のように溢れ出る。
一瞬の出来事に盗賊たちは言葉を失い、固まる。それは先ほどまで森に響き渡っていた不快な笑い声すら無くなり静寂を意味していた。
「て、てめぇ――!」
我に返り憤りを爆発させようとした男もまた首を刎ね飛ばされ絶命する。
そこからは一方的な狩の時間だった。
刀や剣で斬られ、魔法で突かれ、矢で射られと完全に立場が逆転していた。
数が多いからと油断していたことが敗因に感じられるが、それは違う。いや、それもあっただろう。それのお陰で殺り易くなったと言うべきだろう。
相手の力量すら測ることが出来ないのだから自業自得言えばそうなのかもしれないが、見ている方からすればそれは驚きを越え恐怖を感じる程だった。
「終わったな。ドルン」
「………」
「おい、ドルン」
「お、おう! なんだ?」
「こいつらの後片付けをするから少し待っててくれ」
「わ、解った」
そうして千夜たちは一箇所に盗賊たちの死体を集めだす。
その光景にドルンは思わず荷馬車の中で護衛をするエリーゼに問いかける。
「な、なあ」
「なに?」
「いつもあんな事をしているのか?」
「あんな事って?」
「盗賊と戦ったりとかだよ」
「ま、まあそうね。冒険者だし」
「怖くないのかよ」
「怖くないと言えば嘘だけど。一番怖いのは大切な家族が死んでしまうこと。だから私たちは強くなって互いに守りあってるの」
「そ、そうか。それにしてもお前らは本当に強いな」
「まあね」
この時ドルンは千夜たちが自分たちの護衛の依頼を受けてくれたことに喜びを覚えるのだった。
「あら旦那様、おはよう」
「おはようエリー」
「お早う御座います、主。どうぞお水です」
「おはようルーザ。ありがとう」
エルザから貰った水を飲み干すと千夜は鬼椿をアイテムボックスから取り出す。
「朝稽古?」
「ああ、やっておこうと思ってな」
「今日ぐらい休めばいいのに」
「やらなければ、鈍るからな。それに習慣だからな。しないと落ち着かない」
「そうれなら仕方ないけど」
「朝食の準備が出来次第お呼びします」
「ああ、頼む」
千夜は少し離れた森の中で抜刀する。
刀を構え振るう。形などない。ゲーム時代と同じ動きを淡々と繰り返す。
時々自分が考えた動きを混ぜ合わせながら新しい剣術の試行錯誤も行う。
「主、朝食の準備が整いました。すでに全員起きて集まっています」
「ああ、直ぐに向かう」
時が流れるのを忘れ没頭していた千夜はエルザの呼びかけで我に戻ると、納刀しエルザと一緒にみんなの許へ戻るのだった。
朝食を終えた千夜たちは都市ダラに向けて出発した。
ダラまではあと4日かかる。
千夜たちが本気で走ればすでに到着しているが、今回は護衛依頼のためそれは出来ない。
荷馬車に揺られながらゆっくりと進む。
結局何事も起きる事無く一日を終えた。
都市ルーセントを出発して3日目。
大陸の南側とはいえ、この時期はまだ肌寒さを感じさせる。
途中、都市ルーセントに向かう行商人とすれ違いながらもゆっくりと街道を進んでいく。
お昼休憩を終え、進んでいると突然千夜たちが臨戦態勢へと移る。
その行動に御者を行うドルンも背中で感じ取っていた。
「お、おいどうした。まさか盗賊か?」
「ああ、その通りだ。この先、800メートルほど進んだところで待ち構えている」
「は、800メートル……」
そんな離れた先に盗賊が潜んでいる事に気付ける千夜たちの凄さに驚きを隠せないドルンとその弟子たち。
「そ、それで盗賊の数は?」
「13人といったところか」
「よくそんなこまけぇ数字まで言えるな」
「ま、経験の賜物だ」
話を打ち切ると今度は千夜が指示を出した。
「このまま真っ直ぐ進んでくれ。あとは俺たちで対処する」
「わ、解った」
「エリーとウィルは荷馬車の護衛。ミーナとクーエは戦闘開始次第援護射撃を開始、魔法と弓で攻撃。ルーザと俺は荷馬車から降りて戦闘だ。質問はあるか?」
「俺たちはどうすれば良い?」
「そのままで良い。戦闘が終わり次第止まってくれ」
「もしもお前たちがやられたら?」
その言葉にエルザは顔を顰めるがドルンたちには見えていないので気にしない。
「その時は全力で逃げろ」
「わ、解った」
指示が全員に行き渡るとドルンは震える手で手綱を握り締めたまま進んでいく。
数分後、千夜たちが断言した800メートルにまもなく到着するというところで盗賊たちが道の両側から出てきて道を塞ぐ。
気がつけば既に後ろにも回りこまれ、完全に包囲されていた。
(前方に7人。後方に6人といったところか。リーダーらしき人物の姿はなし。森の中にも伏兵なし)
マップと危機察知スキルを使い敵の情報を出来るだけ集める。
(それにしてもあいつらの武器、ただの盗賊が手に入れられる物じゃないだろうに)
ロングソード、ショートソード、弓矢など武器を構えるが、その全てが綺麗に磨かれ新品当然に見えた。
(やはりあいつらも暗霧の十月の捨て駒の一つだろうな)
荷馬車から降りた千夜は鬼椿を抜刀する。
エルザもまた双剣を抜き構える。
「おいおい、この状況下で俺たちと殺り合うつもりかよ」
ゲラゲラと笑う盗賊たち。しかしそれは千夜たちにとって絶好のチャンスでしかない。
未だに笑い続ける目の前の男に対して容赦無く一閃。
笑みを浮かべた生首が宙を舞い、血飛沫が噴水のように溢れ出る。
一瞬の出来事に盗賊たちは言葉を失い、固まる。それは先ほどまで森に響き渡っていた不快な笑い声すら無くなり静寂を意味していた。
「て、てめぇ――!」
我に返り憤りを爆発させようとした男もまた首を刎ね飛ばされ絶命する。
そこからは一方的な狩の時間だった。
刀や剣で斬られ、魔法で突かれ、矢で射られと完全に立場が逆転していた。
数が多いからと油断していたことが敗因に感じられるが、それは違う。いや、それもあっただろう。それのお陰で殺り易くなったと言うべきだろう。
相手の力量すら測ることが出来ないのだから自業自得言えばそうなのかもしれないが、見ている方からすればそれは驚きを越え恐怖を感じる程だった。
「終わったな。ドルン」
「………」
「おい、ドルン」
「お、おう! なんだ?」
「こいつらの後片付けをするから少し待っててくれ」
「わ、解った」
そうして千夜たちは一箇所に盗賊たちの死体を集めだす。
その光景にドルンは思わず荷馬車の中で護衛をするエリーゼに問いかける。
「な、なあ」
「なに?」
「いつもあんな事をしているのか?」
「あんな事って?」
「盗賊と戦ったりとかだよ」
「ま、まあそうね。冒険者だし」
「怖くないのかよ」
「怖くないと言えば嘘だけど。一番怖いのは大切な家族が死んでしまうこと。だから私たちは強くなって互いに守りあってるの」
「そ、そうか。それにしてもお前らは本当に強いな」
「まあね」
この時ドルンは千夜たちが自分たちの護衛の依頼を受けてくれたことに喜びを覚えるのだった。
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