【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり

文字の大きさ
7 / 70
本編

4  よーし! 頑張ってガッツリ胃袋掴んでやるぞ!

しおりを挟む
 ――心臓に悪い自己紹介だった。


 ま、まあ、なるようになれだ!

 とにかく初仕事だ。頑張ろう! 朝飯を作るっていう任務を遂行するぞ。カムロさん、さっきお腹空いてきたって言ってたし、早くしないと。心臓がまだばくばくしてるけど、もう気にしてる場合じゃない。

「あの、朝飯作りますよ。好き嫌いありますか?」
「激辛は苦手です」
「もしかして甘党ですか」
「はい。どちらかと言えば」
「当たった。棚に甘いお菓子が置いてあったから、そうかと思ったんですよ」
「なるほど。よく見ていますね」

 喋りながら、身の周りの物を詰め込んだバッグを肩から下ろして、キッチンもとい調理場のすみっこに置いておく。びっくりの連続で、下ろすの忘れてたんだよ……。

 蛇口を捻って水でざぶざぶと手を洗う。水道完備とはさすがだ。これがなくて井戸で水汲みが当たり前の家だってまだたくさんあるんだよ。便利な魔道具も色々あるし、きっと仕事がはかどるぞ!

「出来上がったら呼びますね」
「見ていたいです。駄目でしょうか」

 ……目をキラキラさせながらこっち見ないでくれぇ! 眩しいっ!

「あはは。お好きにどうぞー」

 野郎の料理姿なんて、見て楽しいもんでもなさそうだけど。ま、雇い主がそうしたいならいいのかな。おっと、一応エプロンしとこう。シャツが汚れる。バックから黒いエプロン引っ張り出して装備した。

 よぉし、やるぞ!

 ささっと材料を取り出して、ザクザク切ったり混ぜたりして下ごしらえをば。メニューは消化にいい温野菜サラダとオムレツにするぞ。

 サラダのドレッシングはシンプルに塩コショウとオイルで。あと、卵とミルクでパンプティング。砂糖ほどほどパン多め。ナイフとフォークで食べやすい感じの水分加減にしとこう。フライパンにバターをしっかり敷いて、コンガリと香ばしく焼いて仕上げる。

 うぉー! いい匂い! 

 ……軽く朝飯食ってきたけど、腹減ったなー。後で自分の分も作ろうそうしよう。

「味見させてください」
「我慢したらもっと美味しくなりますよ。もうすぐですから。あ、飲み物はどうします?」
「うっ、それなら我慢します……。ああ、自分で淹れますよ」

 ティーメーカーって魔道具に水と茶葉を入れるだけで完璧な紅茶が飲めるらしい。「手で淹れる方が気分が出ますけど、楽ですから」だって。

 やり方を教えてもらった。覚えたぞ! 簡単だ。なので、今度からは俺が淹れるって話になった。

「ハスさんも飲んでみてください。美味しいですから」って、勧めてくれたから遠慮なく頂こう。うわぁお! いい香りだ。焼き菓子とかに使っても美味いんじゃないかなこの茶葉。母さんが教えてくれたクッキー思い出すな。久しぶりに焼いてみるかな。

 うう、また家に帰りたくなってきた!

 ……気を取り直して朝飯作り完了。見るからに高級な食器に盛り付けたぞ! おお、お手軽な料理がちょっぴりだけど高そうなメニューに見える。

「どこで食べますか」

 隣に食堂っぽいスペースが見えるけどそこかな。

「もう待ちきれません。ここで食べます」

 はい、左様ですか。

 それなら調理用のテーブルに並べてしまえ。ここにもなんでか椅子があるから座れるしな。焼きたてのパンプティングには、ちょっと高かったけど気合で買ってきた蜂蜜をたっぷり掛けてあげた。うはぁ! 贅沢な甘い香りと黄金色の輝きが食欲を超そそる! 甘党にはたまらない一品になったぞおおぉ!

「はい。ではどうぞお召し上がりください」
「いただきます!」

 真っ先にパンプティングに手を付けたカムロさん、ひと口食べた瞬間に「美味しい!」って叫んだ。美味しい! 頂きました! 思わず「やった!」って拳を握る。こういう言葉は、何度言われても嬉しいもんだよな。

 温野菜サラダもオムレツもぺろりと残さず食べてくれた。よしよし、良い感じ。……それにしてもこの紅茶、うまぁ! 魔道具が凄いのか、お茶が高いからなのか分からないけど、うまぁっ!

「はぁ……。美味しかったです。ハスさん、凄いです」

 食後の紅茶を飲みながら、満足顔なカムロさん。お気に召して頂けてなにより。

「ありがとうございます。料理屋してる父さんに教えられてるんで、それなりに色々レシピは知ってるんです。だから、父さんが凄いんですよ」

 なんだかんだで手伝わされてたからな。店で働いてる人と一緒にまかない作ったり、おやつを作ったりもしたなぁ。騎士に憧れ始めるまでは、調理場に立たない日がないくらいだった。

「そうなんですか。ハスさんを立派に育てて下さったお父様にも、いつかお会いしたいですね」
「あはは。じゃあ、そのときは俺が実家の店に案内しますよ」
「ぜひ。一緒に行きましょう」

 ……父さん、びっくりするだろうな。

 最近、手紙書いてないなぁ。元気にしてるとは思うけど。国の南端にあるから王都からだと遠いんだよ。簡単には帰れない。

「昼と夜も、お願いしますね」
「はい。すぐ出せるように下ごしらえしときますんで」
「ふふ。楽しみにしていますよ」

 おお、期待されてる。しっかりメニューを考えないとだ。

 騎士団にいるときは節約で、簡単手抜き自炊ばっかりだったけど、それが仕事なら話は別だ。手軽なのだけでなくて、時間を掛けて凝った料理も作って、喜んでもらえるようにしよう。父さんのお陰でなんとかクビにならずに済みそうだよ! ありがとー!

 よーし! 頑張ってガッツリ胃袋掴んでやるぞ! 







※当作品の調理の描写や料理名は割とふわっとした適当なチョイスです。
 実際とは違うところもありますので悪しからず。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。 ​死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。

完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。 その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー? 十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。 転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。 どんでん返しからの甘々ハピエンです。

処理中です...