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甘い口付けと責め苦
しおりを挟む――口内に水が流れ込んでくる。
乾いた喉に気持ちがいい。蜂蜜の甘みと香草の爽やかな味がした。
「ん……っ」
甘い。美味しい。もっと欲しい。
舌を動かして、唇を塞いでいる柔らかいなにかを舐めて水を強請る。
「はぁ……っ、んんっ……、ふっ、……んっ……」
何度か水を流し込まれて、やっと喉の乾きがなくなった。
薄っすらと目蓋を開けると、紫紺の瞳がこちらを見ていた。窓からの光に透けて、蒼みのある深い紫色に輝く瞳がとても綺麗で、呆然と見入ってしまった。
赤い唇をしっとりと濡らした領主が、「ようやく起きたか」と言って目を細めた。
ぼんやりとしていた意識が、ここでやっとはっきりした。
目の前にいた領主に驚いて「ひっ!」と、身じろぎした途端に全身に激痛が走る。
「ぐ、あっ! い、痛い! もう嫌だぁ……っ!」
寝台に身を沈めて半泣きで怯え震えるシタンの頬を、領主の手がそっと撫でた。この男に気絶するまで犯された今、その優しい手すら恐ろしくてたまらない。
「さ、触るなよぉ……!」
顔を背けて逃げようとすると、顎を掴まれ強引に唇を重ねられた。
「んっ、うぅっ!」
柔らかい唇の感触に、口移しで水を飲まされたことに今さらだが気付いた。羞恥と苛立ちの入り混じった感情が込み上げて顔が熱くなる。
「なっ、なにするんだよ……っ! 対価は、もう払っただろ。や、やめてくれよぉ……」
痛みを堪えて相手の両肩を押しやり。涙声で訴える。
いつの間にか着替えさせられていた白絹の夜着の上から、するりと腕を撫でられた。たったそれだけの動作が、激しい行為の後だからか酷く卑猥に見える。
「腕の対価にはまだ、足りない」
「そ、そんなっ……」
「私が満足するまで、払って貰うぞ」
「やめっ……! ん……っ」
深く唇を奪われた。
挿し込まれた舌が口内を隈なく愛撫し、音を立てて強く舌を吸われる。
「んぅ、ぐっ……!」
下腹と股間のきわどい部分をまさぐられ、ぬるい熱がじわじわと広がる。口と腹への刺激で息が上がり、恐怖で強張っていたはずの体から力が抜けていった。
このまま、また犯されてしまうのか。
恐怖と焦りが募っていく。
「ふぅ……、んぁ、あっ、……ふ……」
舌を吸われる度に脳髄が痺れる。
力の入らない手で押し退けようとしたが、領主の長躯はびくともしない。口づけと愛撫によって、どんどん体が火照っていく。押し退けようとした手は、衣を掴んで縋り付いているだけになっていた。
「淫らな体だ。他の者になど、尻尾を振らぬよう躾けてやろう」
「あ、あんたみたいなのが、他に、いて、あぅ、たまるかぁ……っ」
夜着の前をはだけられた。そして鎖骨や胸元の肌に唇が落とされ、鈍い痛みを感じるほどきつく吸い付かれた。
「やっ、やめっ、いやだっ!」
たまらず大声を上げると、下腹部を強かに掴まれて体が跳ねる。
「いっ!」
夜着で辛うじて目立たないが、一物が僅かに兆して硬くなっていた。
絶頂するまでないかないが、感じない弱さでもない。もどかしい感覚に、滑らかな敷布の上で膝を擦り合わせてしまった。
「はぁっ、あっ……。……も、もう勘弁してくれよぉ……っ、はぁ、あぁ……っ」
頭がおかしくなりそうだった。
涙目になりながら情けなく懇願したが、しばらくのあいだ責め苦は続いた。
「今日のところは、これまでだ」
腹をまさぐっていた手が、やっと離れていく。
「あっ……」
「暫く眠っていろ」
シタンの目頭を、領主の手が覆った。
あれだけ抱かれた上に追い打ちでいやらしい触られ方をされて、すっかり疲れてしまった。息切れが治まってくると、中途半端に高められた熱が少しずつ引いていって眠くなってきた。
目頭を覆う手の温もりを感じながら、シタンはいつの間にか眠ってしまった。
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