【完結・加筆修正中】横暴領主が平民狩人の俺に執着してくるんだけど、どうしたらいいと思う?

ゆらり

文字の大きさ
27 / 110

29 溺れていく

しおりを挟む

 一度目は、無理矢理だった。


 二度目は、気持ち良さに負けて、最後はもう合意だった。


 三度目は、求められた嬉しさに絆されて自分からも欲しがって、隅々まで貪るように抱かれてぐすぐすに溶けるように気持ちよくて長い夜だった。

 
 それからは、領主との交わりに溺れていった。


 片手で足りる回数を超えても、放り出される気配がない。城では相変わらず老人にかいがいしく世話を焼かれるし、美味い飯と蜜酒にありつけて、我を忘れるような快楽を与えらえる。

 こんなのは変だ。愛人かなにかじゃないのか。

 今、小屋の棚には城で出された特上の蜜酒が置いてある。いらないと啖呵を切ったのに、結局は土産として持たされた。優しい笑顔を浮かべながら手渡してくる老人に対して突き返す気になれず、加えて老人の背後で恐ろしい目つきで睨む領主に逆らえなかった。

 小屋にいるときは、自分で買った酒を飲んでいる。

 そんなことをしたとろこで、慰みに抱かれる現実が変わるわけではないが。

 ……そんな日々に体が馴染み始めてしまったある日。怠さが抜けない体に鞭打って、シタンは森の奥深くまで狩りに出かけていた。
 
「はぁ。上手く仕留められて良かった」

 首に巻いた手拭いで、額の汗を拭う。ついでに襟に指を引っ掛けて胸板を覗き込むと、そこには赤く歪なうっ血がいくつも付いている。

「消えないなぁ……」

 領主に吸い付かれた痕だ。

 抱かれる度に執拗に痕を付けられて、首筋などを晒せなくなっていた。これでは嫁になりそうな娘と付き合えない。もっとも、ここ数年は枯れたみたいに付き合いを求めなくなっていたが、それとこれとは別というやつだ。

 「嫌がらせかな」と、ため息をつきながら念入りに手拭いを巻き直した。

 シタンの足元には、鮮やかな紫の毛並みをした獣が横たわっている。

 仕留めたばかりの獲物だ。

 ねじ曲がった角が生えた獣のこめかみや脚に、深々矢が刺さっている。

 腰に吊るした水筒を手に取り、勢いよく飲み干す。

「ぷは」

 休憩時間もそこそこに、獣を手近な樹に吊るして血抜きを始める。

 粗方の血が抜け切った頃合いを見計らって縄を外して草地に下ろし、小刀で素早く皮を剥いだ。

 角は石鎚いしづちで叩き折り、肉や臓物を切り取って大きな葉っぱに包んで草紐で結わえ、それを布袋に丁寧に詰めて肩に下げる。

 毛皮と角は別の袋に入れて、背嚢はいのうに詰め込んだ。

「久しぶりに肉がいっぱいだなぁ。干し肉、また作っておくか」

 子供の頃は、やることなすこと大抵が覚束なかったが、父親に繰り返し教わってどうにか必要なことは覚えられた。

 始末を終えて、首に下げた笛を強く吹き鳴らす。

 「ギィッ! ギャ!」と、けたたましい鳥の鳴き声がして、生い茂る木々の枝が大きく揺れた。

 派手な羽ばたきの音と共に、亡骸の上に降り立ったのは、赤子ほどの大きさの鳥の群れだった。

「片付けは頼んだよ」

 軽い調子で声をかけると、群れの中でも一際大きな体をした鳥が頭を上げて一声鳴いた。

 騒がしく食事を始めた彼らに背を向けて、シタンは足早に森を抜けて町へと向かった。

 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

カワウソの僕、異世界を無双する

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
本編完結いたしました♡コツメたん!無双おめでとう㊗️引き続きの番外編も完結しました💕 いつも読んでいただきありがとうございます♡ ほのぼのとワクワク、そしてコツメたんの無双ぶりを楽しんで下さい! お気に入り1200越えました(new)❣️コツメたんの虜になった方がこんなにも!ʕ•ᴥ•ʔキュー♡ ★★★カワウソでもあり、人間でもある『僕』が飼い主を踏み台に、いえ、可愛がられながら、この異世界を無双していく物語。 カワウソは可愛いけどね、自分がそうなるとか思わないでしょ。気づいたらコツメカワウソとして水辺で生きていた僕が、ある日捕まってしまった。僕はチャームポイントの小さなお手てとぽっこりお腹を見せつけながら、この状況を乗り越える!僕は可愛い飼い主のお兄さん気分で、気ままな生活を満喫するつもりだよ?ドキドキワクワクの毎日の始まり! BLランキング最高位16位♡ なろうムーンで日間連載中BLランキング2位♡週間連載中BLランキング5位♡ イラスト*榮木キサ様

処理中です...