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番外編「とある狩人を愛した、横暴領主の話」

14 ハイレリウスとの出会い

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 寂しいばかりかと思われた王都での暮らしは、予想外に騒がしいものになった。

 入学させられた貴族向けの学園で、公爵家の嫡男であるハイレリウスとの出会いがあったからだ。一つ年上の彼はその当時既に学園に馴染んでいて、それなりに派閥を作り上げていた。

 辺境伯の子息である自分が入学するとなれば近付いてこない訳もなく……、関わり合いになりたい気分ではなかったが、上位貴族である彼を無視はできない。成人前とはいえど、貴族として生まれたからにはそういった付き合いは避けられないのだ。

「君が辺境のラズラウディアか。噂通り、宝石みたいに綺麗だね」

 飛び切りの明るい笑顔で、開口一番に掛けられた言葉がこれだった。幼くして亡くなった姉は、宝石姫と謳われていた。その弟であり、姉に酷似している自分の噂も広がっていたのだ。……容姿に関してどうこう言われるのは好きではない。だが、あまり嫌悪を覚えなかったのは、彼の言葉には邪心のようなものが嗅ぎ取れなかったからか。

「遠路はるばる王都へようこそ。私のことはハルと呼んで」
「……ご挨拶頂き恐縮ですハイレリウス様。辺境暮らしゆえ、王都の風には馴染みかねます、ご容赦を」

 ――公爵家だからと大きな顔をして馴れ馴れしくするな。愛称呼びなんてするか。

 公ではない私的な場での慇懃な拒絶。非礼とも無礼とも取れる賢しさのある返しにハイレリウスは一瞬だけ目を丸くしたが、気を悪くした様子はない。逆に面白そうな表情になり、微笑みながらラズラウディアの華奢な肩を軽く叩いた。

「うん、無理はしなくていいよ。ところで君、戦盤は得意かな」

 言動を咎められはしなかったが、遊び相手になることを求められた。

 ……人懐っこいというかしつこい。

「得意というほどではないですが、城に来ていた教師には勝てました」
「ふうん? その教師は厳しい人だった?」
「世辞など言わない人でした」
「そう! それなら期待できそうだね。お世辞を言うような人はちょっとあれだから」

 からからと笑いながら「さっそく君の腕前を見せてもらいたいな」と、言うなり問答無用で娯楽室へと引っ張って行かれた。

 ハイレリウスは多少の棘などものともせずに、人の領域に踏み込んでくる質だった。

 最愛の友との別れに塞ぎ込む暇も与えられず、彼とその取り巻きの貴族令息達に振り回されながらの日々は、刺激的で有意義なものになっていった。

 ――そして、憎めない人柄に絆されて次第に……シタンとはまた違う方向性で……彼を友と認めるようになっていったのだった。
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