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番外編「とある狩人を愛した、横暴領主の話」
20 求められたい
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一昼夜を過ぎても、シタンは眠り続けていた。
粗方の勤めを終えて彼の眠る寝室へと足早に戻ったラズラウディアは、寝台の端に腰かけて彼の硬質な銀髪を弄びながら、こう囁いた。
「……シタン……。すまない。お前に触れずにはいられなかった……」
秘め続けてきた想いの丈を吐き出し欲を満たした充足感と、劣情に身を任せ強引に体を暴いてしまったことへの罪悪感が胸中で渦を巻いてせめぎ合い、それによって生じた鈍い胸の痛みに小さく溜息を漏らす。
後悔などしていない。
これは単なる感傷だ。幼い自分たちが過ごした、温かく優しい日々への郷愁じみた想い。もう二度と、あの頃のように笑い合えはしない。それでも、大切な絆を壊してまでも、シタンを手に入れたかったのだ。
昨日のうちに清めた長躯は白絹の夜着で包まれている。解かれた髪が敷布の上に広がり、まるで銀糸をあしらったしとねに横たえられているようだ。青白い顔で眠る姿は陽光の下で優しい顔をして笑う幼い頃の彼とは真逆の、冒し難い風情を醸し出していた。
寝姿に見入っているうちに、薄っすらと開いた唇が渇いているのに気付く。
「少し、水を与えた方がいいか……」
脇机に置かれた水差しの水を杯に注いだうえで口に含んで唇を重ね、少しずつ流し込むと「ん、く……」と、小さく声を漏らしながら舌を動かして唇を舐めてくる。水を無意識にねだっているだけだと理解はしているが、求められていることに喜びが胸に沸き立つ。
「んっ、はぁ……」
何度か水を与えていると、大きく体が震えて目が開いた。まだ夢と現の狭間にいるのか、呆けた表情でじっとこちらを見詰めてくる。射し込む陽光が蜂蜜色の瞳をまるで砂金を流し入れた宝石のように輝かせた。この男はこれほどまでに美しい瞳をしていたのかと、いまさらながらに思う。
「ようやく起きたか」
「ひっ! ぐっ、あっ! い、痛い……っ。も、もう嫌だぁ……っ」
声を掛けると呆けた顔に怯えの表情が浮かび、苦痛の声を上げた。貪られた体がよほど痛むのだろう。涙を浮かべ震える彼の頬を思わず撫でると「さ、触るなよぉ!」と、嫌そうに顔を背けられてしまった。そんな態度を取られたのが口惜しくて、両手で顔を挟んで向き直らせ唇を塞ぐ。
「ん、うっ! このっ、何すんだっ! 対価は、もう払っただろ。や、止めてくれよぉ……」
弱々しい力で肩を押されるのに逆らわず、身を離す。羞恥にか、怒りにかはわかりかねるが、顔を赤らめて先ほどよりも潤んだ瞳で懇願するシタンに胸がとくりと躍る。成人した……それも長躯の男だというのに、どうしようもなく愛らしい姿だ。
「腕の対価にはまだ、足りない」
「そ、そんなっ……」
「私が満足するまで、払って貰うぞ」
「やめっ……! ん……っ、ぐ、ふぅ……んぁ、あっ、……ふ……」
つい数時間前に術を使ってまで体を拓き気を失うまで貪ったというのに、己の中で今また激しい情欲が唸り声をあげるのを聞いた。衝動のままに再び唇を深く奪い下腹部を弄れば、甘く蕩けた吐息を漏らして体を熱くしながら腰を揺らし始める。
「淫らな体だ。ほかの者になど、尻尾を振らぬよう躾けてやろう」
「あ、あんたみたいなのが、ほかに、いて、あぅ、たまるかぁ……っ」
こんな体で、狙われないと思っているのか。
手に入れた獲物の危機感のなさに苛立ちを覚えながら夜着の前をはだけさせ、肌にきつく吸い付いてやると、哀れなほどに小さく弱々しい悲鳴を上げた。掛け布の下で忙しなく動く脚が、愛撫に感じているのだと伝えてくる。
「はぁっ、あぁ……っ、も、もう勘弁してくれっ、あ、あっ、ひっ! はぁつ、は、はぁ……っ」
息をするのもやっとの様子で、顔色を失くして苦し気に喘ぎ始めたのを見て、次第に頭の中が冷えていく。ひとつひとつの仕草に心を乱され煽られて、自身の行動が制御できない。
――苦しめたいのではないのだ。ただ、どうしようもないほどに恋しくて、愛しい。手籠めにしておいてなにをと言われるのだろうが、できることならばシタンに求められたい。
「今日のところは、これまでだ」
下腹部から手を引き、両目を覆う。
「暫く眠っていろ」
腹へとわずかに注いでいた魔力を散らせば 淫らな腰の揺れが止まり、目に見えて体から力が抜けていく。荒くなっていた苦し気な呼吸は静かになり、やがて安らかな寝息が聞こえ始める。
触れていた手をそっと離して握り締め、身をひるがえし寝室を後にした。
粗方の勤めを終えて彼の眠る寝室へと足早に戻ったラズラウディアは、寝台の端に腰かけて彼の硬質な銀髪を弄びながら、こう囁いた。
「……シタン……。すまない。お前に触れずにはいられなかった……」
秘め続けてきた想いの丈を吐き出し欲を満たした充足感と、劣情に身を任せ強引に体を暴いてしまったことへの罪悪感が胸中で渦を巻いてせめぎ合い、それによって生じた鈍い胸の痛みに小さく溜息を漏らす。
後悔などしていない。
これは単なる感傷だ。幼い自分たちが過ごした、温かく優しい日々への郷愁じみた想い。もう二度と、あの頃のように笑い合えはしない。それでも、大切な絆を壊してまでも、シタンを手に入れたかったのだ。
昨日のうちに清めた長躯は白絹の夜着で包まれている。解かれた髪が敷布の上に広がり、まるで銀糸をあしらったしとねに横たえられているようだ。青白い顔で眠る姿は陽光の下で優しい顔をして笑う幼い頃の彼とは真逆の、冒し難い風情を醸し出していた。
寝姿に見入っているうちに、薄っすらと開いた唇が渇いているのに気付く。
「少し、水を与えた方がいいか……」
脇机に置かれた水差しの水を杯に注いだうえで口に含んで唇を重ね、少しずつ流し込むと「ん、く……」と、小さく声を漏らしながら舌を動かして唇を舐めてくる。水を無意識にねだっているだけだと理解はしているが、求められていることに喜びが胸に沸き立つ。
「んっ、はぁ……」
何度か水を与えていると、大きく体が震えて目が開いた。まだ夢と現の狭間にいるのか、呆けた表情でじっとこちらを見詰めてくる。射し込む陽光が蜂蜜色の瞳をまるで砂金を流し入れた宝石のように輝かせた。この男はこれほどまでに美しい瞳をしていたのかと、いまさらながらに思う。
「ようやく起きたか」
「ひっ! ぐっ、あっ! い、痛い……っ。も、もう嫌だぁ……っ」
声を掛けると呆けた顔に怯えの表情が浮かび、苦痛の声を上げた。貪られた体がよほど痛むのだろう。涙を浮かべ震える彼の頬を思わず撫でると「さ、触るなよぉ!」と、嫌そうに顔を背けられてしまった。そんな態度を取られたのが口惜しくて、両手で顔を挟んで向き直らせ唇を塞ぐ。
「ん、うっ! このっ、何すんだっ! 対価は、もう払っただろ。や、止めてくれよぉ……」
弱々しい力で肩を押されるのに逆らわず、身を離す。羞恥にか、怒りにかはわかりかねるが、顔を赤らめて先ほどよりも潤んだ瞳で懇願するシタンに胸がとくりと躍る。成人した……それも長躯の男だというのに、どうしようもなく愛らしい姿だ。
「腕の対価にはまだ、足りない」
「そ、そんなっ……」
「私が満足するまで、払って貰うぞ」
「やめっ……! ん……っ、ぐ、ふぅ……んぁ、あっ、……ふ……」
つい数時間前に術を使ってまで体を拓き気を失うまで貪ったというのに、己の中で今また激しい情欲が唸り声をあげるのを聞いた。衝動のままに再び唇を深く奪い下腹部を弄れば、甘く蕩けた吐息を漏らして体を熱くしながら腰を揺らし始める。
「淫らな体だ。ほかの者になど、尻尾を振らぬよう躾けてやろう」
「あ、あんたみたいなのが、ほかに、いて、あぅ、たまるかぁ……っ」
こんな体で、狙われないと思っているのか。
手に入れた獲物の危機感のなさに苛立ちを覚えながら夜着の前をはだけさせ、肌にきつく吸い付いてやると、哀れなほどに小さく弱々しい悲鳴を上げた。掛け布の下で忙しなく動く脚が、愛撫に感じているのだと伝えてくる。
「はぁっ、あぁ……っ、も、もう勘弁してくれっ、あ、あっ、ひっ! はぁつ、は、はぁ……っ」
息をするのもやっとの様子で、顔色を失くして苦し気に喘ぎ始めたのを見て、次第に頭の中が冷えていく。ひとつひとつの仕草に心を乱され煽られて、自身の行動が制御できない。
――苦しめたいのではないのだ。ただ、どうしようもないほどに恋しくて、愛しい。手籠めにしておいてなにをと言われるのだろうが、できることならばシタンに求められたい。
「今日のところは、これまでだ」
下腹部から手を引き、両目を覆う。
「暫く眠っていろ」
腹へとわずかに注いでいた魔力を散らせば 淫らな腰の揺れが止まり、目に見えて体から力が抜けていく。荒くなっていた苦し気な呼吸は静かになり、やがて安らかな寝息が聞こえ始める。
触れていた手をそっと離して握り締め、身をひるがえし寝室を後にした。
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