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番外編「とある狩人を愛した、横暴領主の話」
31 そばにいてくれ※
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――想いを燻らせながら月日は過ぎていき、禁猟期が間近に迫ったある日。
夜更けの交わりのあと、気怠げに微睡むシタンの髪を弄びながら「禁猟期は、私の城に来い」と、言うと横たわる体が大きく震えて、蜂蜜色の潤んだ瞳がこちらを凝視した。
「えっ、な、なんだよそれ」
「私の傍仕えをさせてやろう」
以前から考えていたことだ。
狩りを生業とするシタンを城に閉じ込めるのは、彼らしさを失わせる。……それゆえ、数日に一度の逢瀬に留めていた。だが、禁猟期となると狩りはしなくなる。この期間は、狩人達は収入を得るため農園などに出稼ぎに行くことが多い。
「はぁっ? 傍仕えぇ? むっ、無理だよ! 貴族の傍仕えなんて平民がぱっとできるわけ、ないだろぉ……」
「なにからなにまでこなせとは言っていない。足りない部分は爺が補う。あの貧相な小屋になど帰らずに、毎日ここで寝起きすればよいだけのことだ。お前にできないことを、私は望んだりはしない」
どこかの農園などに出稼ぎに行かせてしまうと、しばらくは彼と会えなくなる。そうなるくらいなら、城で雇えばいいのだ。彼は稼ぐことができるし、ラズラウディアは愛しい狩人をそばに置くことができるのだから、互いにとって悪い条件ではないだろう。
……我ながらいい考えだと思いながら、話をこうして切り出したのだが……。
「ひっ、貧相って。あんたには貧相でも、俺にとっては自分の城なのに……。なんでそんな酷いこと言うんだよ……」
言葉選びを間違えたようだ。彼の住む小屋のことを悪く言ったつもりなどなかったのだが、見る間に萎れた花のように表情を曇らせたかと思えば、「なんでそんな酷いこと言うんだよ……」と、寝返りを打ち背を向けられてしまった。
「小屋のことなど、どうでもよい。お前が住まうには貧相だと言いたかっただけだ。別段、あの小屋が悪いというわけではない」
「うん……?」
知らず知らずのうちにシタンを見下げていた自分を恥じた。あの小屋は、おそらくシタンが家を出てから自分の稼ぎで建てた小屋なのだろう。彼にとっては確かに『城』であり、それを『貧相』などと言うこと自体が愚行だ。
丸められた身に抱き付いて「言い方が悪かったようだな。貶すつもりはなかった……」と、言葉を尽くして機嫌を取ると、小さく震えてそのまま大人しく腕の中にいてくれた。
それから少し間を置いて「えっと、あの、でもさ、狩りができないから、出稼ぎとかしなくちゃいけない時期だし」などと、傍仕えを遠回しに断られた。
「ただ、傍にいて欲しいだけだ。他意はない。傍仕えとしての給金も与える。出稼ぎなどする必要はない」
「ま、まってよ。……あのさ、城にずっと住めって言ってるわけじゃ、ないよな?」
「それでも構わないが」
「いや、さすがにそれは、ちょっと……」
居心地悪げに身じろぎしながら、色よい返事を返さないシタンにしびれを切らして、ラズラウディアは「……私の傍にいるのは嫌か」と、訊いてしまった。
「嫌っていうか、あのさ、俺は根っからの平民で狩人なんだよ。いきなり城に住めって言われてはいそうですかわかりましたなんて、言えな……んっ!」
要するに嫌だということではないのか。
顎を掴んで顔を上向かせ、こちらの望みとは真反対のことばかりを囀る唇を強引に奪ってやった。
「んぐ、はっ、ん……っ! はぁっ、まっ、なに」
「よく考えておけ。禁猟期が始まる日に、お前を迎えに行く」
「お、俺は傍仕えなんて、あうっ!」
衣をはだけて、まだ事後の熱と蜜が残る後孔へと指を滑り込ませる。くちくちと解し、中のしこりを苛めれば「あああっ!」と、艶やかな悲鳴があがった。
たったこれだけのことで、ラズラウディアの自身は触れてもいないというのに硬くいきり立ち始める。淫らに綻ぶ孔へとそれを挿し入れれば、あとはもう貪るだけだ。
「ひっ、うぁ、ああんっ!」
腰が揺れ、熱く蕩けた中がしゃぶり付いてくる。腹に手を当てて新しい魔力を注ぎ、たっぷりと蜜を孕ませて激しい水音を立てさせながら絶え間なく奥を突き上げ、快楽を追い求める。
「はぁっ、あ、いいっ……! あ、ああっ! んっ……!」
甘い喘ぎ声が上がる度に、中を犯す自身が更に硬さを増し尽きることなく欲が湧き上がった。
「んっ、は……っ、私の、傍に……、いてくれ……シタン……」
再び火照り始めた彼の体を強く抱き締めながら、切ない想いを囁く。我ながら身勝手だとは分かっている。だが、それでも望まずにはいられなかったのだ。
その身勝手さの報いが最悪の形でもって与えられることを……、この時は予想だにしていなかった。
夜更けの交わりのあと、気怠げに微睡むシタンの髪を弄びながら「禁猟期は、私の城に来い」と、言うと横たわる体が大きく震えて、蜂蜜色の潤んだ瞳がこちらを凝視した。
「えっ、な、なんだよそれ」
「私の傍仕えをさせてやろう」
以前から考えていたことだ。
狩りを生業とするシタンを城に閉じ込めるのは、彼らしさを失わせる。……それゆえ、数日に一度の逢瀬に留めていた。だが、禁猟期となると狩りはしなくなる。この期間は、狩人達は収入を得るため農園などに出稼ぎに行くことが多い。
「はぁっ? 傍仕えぇ? むっ、無理だよ! 貴族の傍仕えなんて平民がぱっとできるわけ、ないだろぉ……」
「なにからなにまでこなせとは言っていない。足りない部分は爺が補う。あの貧相な小屋になど帰らずに、毎日ここで寝起きすればよいだけのことだ。お前にできないことを、私は望んだりはしない」
どこかの農園などに出稼ぎに行かせてしまうと、しばらくは彼と会えなくなる。そうなるくらいなら、城で雇えばいいのだ。彼は稼ぐことができるし、ラズラウディアは愛しい狩人をそばに置くことができるのだから、互いにとって悪い条件ではないだろう。
……我ながらいい考えだと思いながら、話をこうして切り出したのだが……。
「ひっ、貧相って。あんたには貧相でも、俺にとっては自分の城なのに……。なんでそんな酷いこと言うんだよ……」
言葉選びを間違えたようだ。彼の住む小屋のことを悪く言ったつもりなどなかったのだが、見る間に萎れた花のように表情を曇らせたかと思えば、「なんでそんな酷いこと言うんだよ……」と、寝返りを打ち背を向けられてしまった。
「小屋のことなど、どうでもよい。お前が住まうには貧相だと言いたかっただけだ。別段、あの小屋が悪いというわけではない」
「うん……?」
知らず知らずのうちにシタンを見下げていた自分を恥じた。あの小屋は、おそらくシタンが家を出てから自分の稼ぎで建てた小屋なのだろう。彼にとっては確かに『城』であり、それを『貧相』などと言うこと自体が愚行だ。
丸められた身に抱き付いて「言い方が悪かったようだな。貶すつもりはなかった……」と、言葉を尽くして機嫌を取ると、小さく震えてそのまま大人しく腕の中にいてくれた。
それから少し間を置いて「えっと、あの、でもさ、狩りができないから、出稼ぎとかしなくちゃいけない時期だし」などと、傍仕えを遠回しに断られた。
「ただ、傍にいて欲しいだけだ。他意はない。傍仕えとしての給金も与える。出稼ぎなどする必要はない」
「ま、まってよ。……あのさ、城にずっと住めって言ってるわけじゃ、ないよな?」
「それでも構わないが」
「いや、さすがにそれは、ちょっと……」
居心地悪げに身じろぎしながら、色よい返事を返さないシタンにしびれを切らして、ラズラウディアは「……私の傍にいるのは嫌か」と、訊いてしまった。
「嫌っていうか、あのさ、俺は根っからの平民で狩人なんだよ。いきなり城に住めって言われてはいそうですかわかりましたなんて、言えな……んっ!」
要するに嫌だということではないのか。
顎を掴んで顔を上向かせ、こちらの望みとは真反対のことばかりを囀る唇を強引に奪ってやった。
「んぐ、はっ、ん……っ! はぁっ、まっ、なに」
「よく考えておけ。禁猟期が始まる日に、お前を迎えに行く」
「お、俺は傍仕えなんて、あうっ!」
衣をはだけて、まだ事後の熱と蜜が残る後孔へと指を滑り込ませる。くちくちと解し、中のしこりを苛めれば「あああっ!」と、艶やかな悲鳴があがった。
たったこれだけのことで、ラズラウディアの自身は触れてもいないというのに硬くいきり立ち始める。淫らに綻ぶ孔へとそれを挿し入れれば、あとはもう貪るだけだ。
「ひっ、うぁ、ああんっ!」
腰が揺れ、熱く蕩けた中がしゃぶり付いてくる。腹に手を当てて新しい魔力を注ぎ、たっぷりと蜜を孕ませて激しい水音を立てさせながら絶え間なく奥を突き上げ、快楽を追い求める。
「はぁっ、あ、いいっ……! あ、ああっ! んっ……!」
甘い喘ぎ声が上がる度に、中を犯す自身が更に硬さを増し尽きることなく欲が湧き上がった。
「んっ、は……っ、私の、傍に……、いてくれ……シタン……」
再び火照り始めた彼の体を強く抱き締めながら、切ない想いを囁く。我ながら身勝手だとは分かっている。だが、それでも望まずにはいられなかったのだ。
その身勝手さの報いが最悪の形でもって与えられることを……、この時は予想だにしていなかった。
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