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本編
16 特別席での再会
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――満足のいく結果で試合を終えたその直後。
特別席への呼び出しを告げられて、リィの眉間に深い皺が寄る。
「くそっ、何なんだっ……!」
……また何処かの貴族が、自分を見世物扱いするために呼び出したのか。
そう考えると行く前から腹しか立たない。何処の誰からの呼び出しなのか確かめる事もせず、さっさと終わらせてしまおうと荒々しい足取りで特別席が設けられたとある一角へと向かう。
いくら殴りたくなる様な貴族だろうと、客は客なのだ。闘士として闘技場に属している以上は、余程の理由が無い限りは呼び出しに応えて顔を出さなければならない。まだ年若く少年のあどけなさの残るリィとて、それは理解しているのだ。
しかし、理解はしていても軽く受け流せるとは限らない。
試合に快勝した嬉しさが、呼び出しによって跡形も無く消し飛んでしまった。
――嫌々ながら向かった特別席の室内で最初に目に映ったのは、試合を観戦するために大きく造られた硝子の窓際で、上等な椅子に座る男の後ろ姿だった。窓から射す逆光で姿が陰り、はっきりと容姿を伺う事が出来ない。
「……俺に何か用なのか」
客に対しての敬語を使いもせず、警戒心も露わに声を低めて不愛想に問いかけるリィに対して、男はこちらを振り向かないままでクスクスと笑い声を漏らした。
「勝てたのに、どうしてそんなに不機嫌なの? 試合、見させてもらったよ」
聞き覚えのある甘く耳障りの良い声が室内に響く。
逆光に目が慣れ始めて、窓際に座っている男の髪が明るい赤毛だという事が判る。ゆっくりと椅子から立ち上がり振り返って此方を見たのは、ずっと観客席に探し続けていた空色の瞳。
「シ、シア……?」
驚きのあまり、名を呼ぶリィの声は裏返っていた。
「そんなに驚かなくても良いでしょ。久しぶり! いやぁ、凄かったね! リィ、恰好良かったよ! 最後の膝蹴りも最高だったね! あれだけ大きな身体の闘士を蹴り飛ばすなんて、なかなか出来ないと思うし!」
微笑みながら近づいて来たシアが、リィの肩を両手で叩きながら闘い振りを褒め千切った。
「大げさだぜアンタ」
「そんな事無いよ! 凄いよ!」
凄い凄いと子供の様に喜びながら文字通りのベタ褒めをしてくる様に、リィは照れ臭くなり目を逸らす。まさか本当に観ていてくれたとは予想だにしなかっただけに驚きはしたが、それを上回る嬉さを感じた。
「……アンタが観てる気がしてたんだ」
その嬉しさに背中を押されて言いながら視線を戻すと、僅かに見開かれた空色の瞳と視線が合わさる。
「えっ? そうなの?」
「そう思ったら、なんか……、いい気分で闘えた」
思ったままを言葉にしてみると、体中から嬉しさが溢れかえる様な、今までに感じた事のない感覚で胸の中が満たされて、ふわふわとした温かい気分になった。シアにこうして喜んでもらえて、褒められるのは悪い気はしない。
「――勝てたのは、アンタのお陰かもしれねぇな」
ふっと笑みを浮かべながら言い切った瞬間、リィは勢い良く抱き締められていた。
特別席への呼び出しを告げられて、リィの眉間に深い皺が寄る。
「くそっ、何なんだっ……!」
……また何処かの貴族が、自分を見世物扱いするために呼び出したのか。
そう考えると行く前から腹しか立たない。何処の誰からの呼び出しなのか確かめる事もせず、さっさと終わらせてしまおうと荒々しい足取りで特別席が設けられたとある一角へと向かう。
いくら殴りたくなる様な貴族だろうと、客は客なのだ。闘士として闘技場に属している以上は、余程の理由が無い限りは呼び出しに応えて顔を出さなければならない。まだ年若く少年のあどけなさの残るリィとて、それは理解しているのだ。
しかし、理解はしていても軽く受け流せるとは限らない。
試合に快勝した嬉しさが、呼び出しによって跡形も無く消し飛んでしまった。
――嫌々ながら向かった特別席の室内で最初に目に映ったのは、試合を観戦するために大きく造られた硝子の窓際で、上等な椅子に座る男の後ろ姿だった。窓から射す逆光で姿が陰り、はっきりと容姿を伺う事が出来ない。
「……俺に何か用なのか」
客に対しての敬語を使いもせず、警戒心も露わに声を低めて不愛想に問いかけるリィに対して、男はこちらを振り向かないままでクスクスと笑い声を漏らした。
「勝てたのに、どうしてそんなに不機嫌なの? 試合、見させてもらったよ」
聞き覚えのある甘く耳障りの良い声が室内に響く。
逆光に目が慣れ始めて、窓際に座っている男の髪が明るい赤毛だという事が判る。ゆっくりと椅子から立ち上がり振り返って此方を見たのは、ずっと観客席に探し続けていた空色の瞳。
「シ、シア……?」
驚きのあまり、名を呼ぶリィの声は裏返っていた。
「そんなに驚かなくても良いでしょ。久しぶり! いやぁ、凄かったね! リィ、恰好良かったよ! 最後の膝蹴りも最高だったね! あれだけ大きな身体の闘士を蹴り飛ばすなんて、なかなか出来ないと思うし!」
微笑みながら近づいて来たシアが、リィの肩を両手で叩きながら闘い振りを褒め千切った。
「大げさだぜアンタ」
「そんな事無いよ! 凄いよ!」
凄い凄いと子供の様に喜びながら文字通りのベタ褒めをしてくる様に、リィは照れ臭くなり目を逸らす。まさか本当に観ていてくれたとは予想だにしなかっただけに驚きはしたが、それを上回る嬉さを感じた。
「……アンタが観てる気がしてたんだ」
その嬉しさに背中を押されて言いながら視線を戻すと、僅かに見開かれた空色の瞳と視線が合わさる。
「えっ? そうなの?」
「そう思ったら、なんか……、いい気分で闘えた」
思ったままを言葉にしてみると、体中から嬉しさが溢れかえる様な、今までに感じた事のない感覚で胸の中が満たされて、ふわふわとした温かい気分になった。シアにこうして喜んでもらえて、褒められるのは悪い気はしない。
「――勝てたのは、アンタのお陰かもしれねぇな」
ふっと笑みを浮かべながら言い切った瞬間、リィは勢い良く抱き締められていた。
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