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本編
20 不釣り合い
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最初は貴族同士の会話に混ざる気など毛頭なく話が終わるのを待っていたリィだったが、嫌がっているシアの態度に気付かない様子で延々と話し続ける娘にしびれが切れてしまった。
「……なぁ、長くなりそうなら俺は一人で飯に行くぜ。腹減っちまってるし」
苛立ち混じりの声で訴えると、シアが苦笑しながらも優しい笑みを浮かべる。
「ああ、すまないね。僕が誘ったのに、待たせてしまって。もう少し待っていて」
「早くしねぇと食い時を逃しちまうぞ」
そんな二人のやり取りに、令嬢が眉尻を吊り上げて「まあっ、なんという酷い態度なのかしら!」と、甲高く耳障りな呆れ声を出した。
「私とシア様の邪魔をするなんて、躾のなっていない闘士だこと。この御方は、本来ならお前のような身分の人間が、気安く口をきいていい御方ではないのよ。よくもそのような無礼な物言いができるものね」
好敵手にしていたように銀の扇子を振りながら、娘がねちねちと文句を言ってくる。リィにしてみれば先にシアと話していたのはこっちで、令嬢などたまたま居合わせた邪魔者だ。偉そうに文句を言われる筋合いはない。
「ああ、この子とは個人的な付き合いだから。そういう公向けのことは許しておいてあげて」
「シア様、礼儀を弁えない者を安易にお許しになられてはいけませんわ。つけあがらせてしまいますもの」
「……はぁ? つけあがるとかなんだよそれ。俺はシアがどこの奴だろうと関係ねぇし」
邪魔者が偉そうになにを抜かすのか。さすがに腹が立って、生意気な小娘が! という気分を露骨に顔に出した剣呑な目つきで睨んでやった。
「まぁ! なんという恐ろしい顔するのかしら……。怖いわ。シア様、こんな恐ろしくて太々しい闘士のどこがお気に召したのですか」
敵意剥き出しの鋭い睨みに動じず、逆にそれをダシにして媚びが混じった甘い目つきでシアを見る令嬢の方が太々しい。リィのひと睨みで逃げ出した下町の悪ガキよりも、肝が据わっている辺りなおさら性悪で質が悪い。
「なんだと……?」
「あら、わたくしは真実を述べたまでよ」
くすくすと笑う令嬢は涼しい顔をしている。憎たらしい強かさに、リィはますます視線を鋭くした。二人の間に漂う刺々しい空気に、シアが「ふたりとも、そんなに怒らないで」と、苦笑いをしながら両者の間に割って入る。
「確かに顔に迫力はあるけど、リィはとてもいい子だよ」
「あら、そうですの?」
シアを見上げてあざとく小首を傾げておいて、侮蔑の含まれた視線をリィにちらと向ける。いちいち気に障る娘だ。
こうして間近で見ると、上等な絹の衣に身を包み美しく結い上げられた髪と控えめな化粧で飾られた彼女の姿は、さすがに貴族だけあって華やかで品がある。見目が良く身分も高いらしきシアと並び立っていても、なんら不釣り合いな感じはない。中身は性悪でも、見かけだけなら上等なのだ。
……そんな令嬢とは違い平民で、しかも醜い顔をした自分がシアの横に立つ姿は、他人にどう見えているだろうか。不釣り合いどころかみっともなく見えているのではないのか……。
その考えに至って、リィは胸に微かな痛みが走るのを感じた。
「……なぁ、長くなりそうなら俺は一人で飯に行くぜ。腹減っちまってるし」
苛立ち混じりの声で訴えると、シアが苦笑しながらも優しい笑みを浮かべる。
「ああ、すまないね。僕が誘ったのに、待たせてしまって。もう少し待っていて」
「早くしねぇと食い時を逃しちまうぞ」
そんな二人のやり取りに、令嬢が眉尻を吊り上げて「まあっ、なんという酷い態度なのかしら!」と、甲高く耳障りな呆れ声を出した。
「私とシア様の邪魔をするなんて、躾のなっていない闘士だこと。この御方は、本来ならお前のような身分の人間が、気安く口をきいていい御方ではないのよ。よくもそのような無礼な物言いができるものね」
好敵手にしていたように銀の扇子を振りながら、娘がねちねちと文句を言ってくる。リィにしてみれば先にシアと話していたのはこっちで、令嬢などたまたま居合わせた邪魔者だ。偉そうに文句を言われる筋合いはない。
「ああ、この子とは個人的な付き合いだから。そういう公向けのことは許しておいてあげて」
「シア様、礼儀を弁えない者を安易にお許しになられてはいけませんわ。つけあがらせてしまいますもの」
「……はぁ? つけあがるとかなんだよそれ。俺はシアがどこの奴だろうと関係ねぇし」
邪魔者が偉そうになにを抜かすのか。さすがに腹が立って、生意気な小娘が! という気分を露骨に顔に出した剣呑な目つきで睨んでやった。
「まぁ! なんという恐ろしい顔するのかしら……。怖いわ。シア様、こんな恐ろしくて太々しい闘士のどこがお気に召したのですか」
敵意剥き出しの鋭い睨みに動じず、逆にそれをダシにして媚びが混じった甘い目つきでシアを見る令嬢の方が太々しい。リィのひと睨みで逃げ出した下町の悪ガキよりも、肝が据わっている辺りなおさら性悪で質が悪い。
「なんだと……?」
「あら、わたくしは真実を述べたまでよ」
くすくすと笑う令嬢は涼しい顔をしている。憎たらしい強かさに、リィはますます視線を鋭くした。二人の間に漂う刺々しい空気に、シアが「ふたりとも、そんなに怒らないで」と、苦笑いをしながら両者の間に割って入る。
「確かに顔に迫力はあるけど、リィはとてもいい子だよ」
「あら、そうですの?」
シアを見上げてあざとく小首を傾げておいて、侮蔑の含まれた視線をリィにちらと向ける。いちいち気に障る娘だ。
こうして間近で見ると、上等な絹の衣に身を包み美しく結い上げられた髪と控えめな化粧で飾られた彼女の姿は、さすがに貴族だけあって華やかで品がある。見目が良く身分も高いらしきシアと並び立っていても、なんら不釣り合いな感じはない。中身は性悪でも、見かけだけなら上等なのだ。
……そんな令嬢とは違い平民で、しかも醜い顔をした自分がシアの横に立つ姿は、他人にどう見えているだろうか。不釣り合いどころかみっともなく見えているのではないのか……。
その考えに至って、リィは胸に微かな痛みが走るのを感じた。
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