【完結】赤痣の闘士は、好きになった彼が王弟殿下だと知らなかった

ゆらり

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本編

32 闘士達の反応

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 ――散髪をした翌日。

 卸したての装束姿で闘技場の控室へ入った途端に、幾つもの視線が向けられた。
 
「……リィ、だよな?」

 控室に居た闘士が揃いも揃って目を丸くして見ているなかで、好敵手に妙なことをたずねられる。
 
「なんだ? 俺でなけりゃ、誰なんだってんだよ」

 眉根を寄せて答えながら見上げると、不自然に目を逸らされた。

「い、いや、一瞬、誰だか分からなかったぞ」
「はぁ? 変なこと言ってんじゃねぇよ」

 髪を切り装束を新しくしただけで、誰か分からなくなるのか。好敵手のぎくしゃくとした言動がやたらと面白くて、思わず口元を緩めて笑ってしまった。

「わ、笑った……!」

 好敵手が顔を赤くして叫び、やり取りを見守っていたほかの闘士達も唖然とした表情でリィの顔を凝視している。

 全く意味が分からない反応ばかりだ。いつも険しい顔ばかりしていて、笑うことなどほとんどなかったのは確かだが……だからといって、こんなに驚かれるのはおかしい。

 ……揶揄われているのかもしれない。

「あぁ? ……何でアンタらも驚いてんだよ。俺が笑っちゃ悪いのかよ?」 

 なんとも言えない憤然とした気分で腕組みをして闘士らを睨み付け、次に好敵手を見上げて首を傾げながら苦笑する。……すると彼はウッと声を詰まらせて顔を増々赤くし、鼻と口元を片手で覆ってブツブツとなにか呟き始めた。

「……これは、信じられん」
「おい、気持ち悪いぞテメェ」 

 至極嫌そうな顔をしてリィが指摘すると、心外だとでも言いた気に顔をしかめた。

「失敬なことを言うな。お前が変わり過ぎなんだ」
「そんなに変わったか?」
「ああ。とても良くなったぞ! 今までは装束が地味でパッとしない上に、髪形が酷くて顔付きが凶悪だったからな」
「なんっだとコラァ!」

 まったく、ろくなことを言わない男だ。

 言わなくてもいいことを口走った好敵手の腹に、怒号と共に膝蹴りが食い込んだのだった。
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