【完結】赤痣の闘士は、好きになった彼が王弟殿下だと知らなかった

ゆらり

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本編

55 締め上げるぞ

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 ――約束の日。

 呼び出しに応じて駆け付けた特別席で、リィはイグルシアスの腕に捕らえられた。 

「リィ! 会いたかったよ!」

 広い胸に抱き込まれ香の匂いに包まれると、言い表せない嬉しさで体中が満たされていく。

「ん……」
 
 俺も、会いたかった。

 無言で強く抱き返し、広い胸に顔を埋める。強く押し当てた頬に感じる鼓動は速い。それがイグルシアスの向けてくる好意に嘘偽りがないという確かな証に思えて、ぐっと嬉しさが増す。

 ややして身を離したイグルシアスは、傷が癒えた頬へと手を伸ばしてきた。

「痕が残らなくて良かったね」
「ああ」

 柔らかく温かい手に優しく頬を撫でられると、なんとも言えない幸せな気持ちになった。もっと触れて欲しいという欲求に逆らわずに目を細めて頬をすり寄せ、大きな手に自分の手を重ねて柔く笑う。
 
「どうしちゃったの、急に甘えたがりになっちゃって……」
 
 すると蕩けた笑みを浮かべていたイグルシアスが、僅かに目を見開いた。

「凄く可愛い!」
「うぁ!」

 感極まった声で叫んだかと思うと、リィの額や鼻先に口付けを落としてくる。驚きながらも「誰が甘えたがりだっ!」と、声を上げたところで、唇を塞がれてしまった。

「んっ! んぅ……っ!」

 忙しなく腰や背中を撫で上げられながら、浅くじゃれつくような口付けをされた。
 
「……リィ、好きだよ……」

 唇をついばまれる合間に甘く切なげな声で囁かれて、胸がきゅうっと締め付けられる。

「んっ、ま、待て、特別席でこんな」
「はぁっ、もう少しだけ……」
「んくっ、ん……っ」

 とうとう口の中に舌を深く挿し入れられ、行為は濃厚なものになっていく。初めてされたのと同じくらい……いや、それ以上に気持ちがよくて頭の中どころか体が溶けそうだ。

「ふっ、んぁ、やめろっ……、バカ……んぅ……」

 どこが少しだけなのかと問い質したい。だが、絡められる舌が頭の中を甘く痺れさせて、口付けを拒み切れずに自然と顔を傾けて相手を求めてしまう。

 ……気持ちがいい。もっと触れて、して欲しい。

 「はぁ……っ、あ、ふぁ……っ」
 「んっ、可愛い……っ」
 「ふっ、んんっ!」

 水音を立てて舌を吸われて、じんわりと腰に熱が集まっていく。これ以上されたらまずいと思うのに、意識に霞が掛かってしまっていて強く抗えない。

 腰を強く抱かれて下半身が密着し、イグルシアスの太腿に緩く反応し始めていた自身が当たった瞬間、リィは口付けのもたらす心地良さに酔いしれて潤ませていた瞳を大きく見開いた。

「あ……っ!」
「ふふ、感じちゃった?」

 クスクスと笑う声に焦っているうちに、今度は意図的に強く太腿が押し付けられる。

「やぁっ、んぁあっ!」
 
 露骨な刺激に、腕の中で腰を揺らして高く鳴いてしまった。

 自分が上げたとは思えない艶のある声に驚き、ようやくはっきりと正気を取り戻した。イグルシアスが真顔でこちらを凝視して生唾を飲み込んだのを目にして、激しい羞恥のあまり腰ではなく頭の方へ血が上っていく。

「……も、もっとしても良いかな……」
「あぁ? 締め上げるぞ!」
「少しでいいから……」

 あからさまに怒り狂った声音の威嚇に怯む様子もなく、イグルシアスは再び口付けを続けようとしてきた。
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