31 / 92
受験戦争
24話 カイザ再び.2 4/2 手直ししました。
しおりを挟む
リュートとカイザの戦いはお互い攻め手にかける状態であった。
「オラァ!」
カイザはショーテルの形状のせいで受けることができず、わざわざ弾いて対応しなくてはいけない。
(早くしないと、まずい)
リュートもカイザを攻め切るには少々技量不足であった。
「ふぅー(落ち着いて観察しよう)」
リュートは戦闘の最中カイザを観察する。そうすることで、弱点を探り打開策を練るのである。
(顔こわっ!)
リュートは注視していると目が合ってしまった。般若の様な形相に一瞬気圧されてしまった。
その隙は見逃されなかった。カイザの槍がリュートを襲う。
「…ッ!(ヤバっ)」
リュートは反応が遅れてしまった。幸い決定的な隙では無かったため『加速魔法』を発動させて難を逃れることができた。
しかし、無理な回避が新たな隙を産んでしまう。そこをカイザが槍で追撃する。
「グッ…!」
リュートは回避した勢いで地面に倒れてしまう。
(おっ!)
リュートはこの追い詰められた状態で起死回生の一手を思いついた。彼は倒れ行く体で後ろの落とし穴に飛んだ。
ボチャ…
「そうはさせねぇぜ!」
カイザはリュートの肩から伸びる糸を掴んで離脱を防いだ。
(だったら、ココで!)
リュート落とし穴の中で糸を切るつもりであったが、機転を効かせてピンと張った糸にショーテルを重ねる。
「うっ!」
しかし、カイザが糸をさらに引き寄せたことでその試みも失敗してしまう。
「オラァ!」
カイザは引き寄せられたリュートに合わせて槍で突き刺す。その時、彼にとって予想外なことが起こった。
リュートが引き寄せられた勢いを利用して攻撃に転じたのである。さらに、自ら前に出ることで槍のタイミングをずらし、身を捩って躱す。
「ハァーッ!」
意表を突かれて撃つ手のないカイザにショーテルを振り下ろした。
しかし、カイザは槍と糸を手放し後ろに飛ぶ。リュートの剣は後少しというところで回避されてしまった。
(強すぎる…あのタイミングならカイトでも倒せるのに)
リュートはカイザの戦闘技術に驚愕する。「あと少し」が届かず攻めあぐねてしまった。
その後も攻撃を躱し、防がれ、が続いていた。
(クソッ!コイツの力量は分かってる、分かってんのに…)
カイザはあらゆる駆け引きで正解を引き続けるリュートにヤキモキしていた。さらに、一合を打ち合う度に手の内が削られていく感覚に不安と焦りが見え始めた。
ガッ!ギギ!
リュートは立体的な動きでカイザを翻弄する。
空宙に固定された棒に剣を引っかけ体の反動と『加速魔法』で一気に回る。
(このまま行けば…勝てる!)
リュートは勝利が近いと感じて始めていた。
彼はカイザの様な敵を相手にする時の手段をあらかじめ持っていた。
それは、毎日のようにカイトとの手合わせをする中で得た戦法である。
波状的に攻撃を仕掛け、相手の癖、反撃、魔法、武器、その一つ一つを丁寧に潰す様に行動を最適化していく。そうすれば、自然に弱点を突き、先読みして動きを封じるようになる。
アレもダメ、コレもダメと言うように、身動き出来ないようにしてしまうのだ。
()
カイザはリュートを侮っていた。
洞窟での戦闘は逃げてばかりで攻撃したと思ったら投擲ばかりであった。
近距離戦も技量不足でありどう転んでも負けは無いと考えていた。
さらに、「糸魔法」の罠に気づかずに掛かりかけていた。そのため、逃げられること以外に警戒する事は無いと本気でたかを括っていた。
しかし、リュートの実力が想定を超えていた。彼は戦闘の最中に思考を巡らせ策を弄する。その結果、カイザは徐々に攻撃回数が減っていき押され始めた。
(クソ…)
カイザは手詰まりを感じ撃つ手が無い状態であった。
だが、彼には単純な解決策はがあった。それは、本気を出す事である。
本人は気づいていないが、今カイザは本来の実力を出し切れていない。これは、カイザに内なる力が眠っているなど、そう言う類のものではなく。心理的な問題で普段の力を出し切れていないのである。
カイザは自分が勝つことを前提に戦闘を始めていた。そのため、リュートを終始舐めきっており、自身の強みを全く生かしていなかった。
実際に彼は、戦闘を真面目に行っておらず、憂さ晴らしに狩をしているのとさほど変わりなかった。
カイザ本来の戦い方はリュートと同じであった。自身に都合の良いように場を整えてから相手を待ち構える戦い方である。
実際に洞窟での戦闘でも出入り口と背後の地面に糸を張らせていた。糸は全てカイザに繋がっており異変があればすぐ分かるようになっている。それによって漁夫の利が来てもすぐ対処できる様にしていた。
しかし、今回は何の対策もしないまま相手のフィールドにノコノコと入ってしまっている。
彼は戦闘に勝つことへの下準備をせず、多少不利になっても逃がさないその事のみに思考を支配されていた。
そして今、獲物だと思っていた相手に狩られ掛けている。
「すまねぇ、おまえさんのこと舐めてたわ」
カイザが何か吹っ切れたように言った。そして、彼は吹っ切れた事で自身のもう一つの欠点に気づいた。
彼は今まで法(自分ルール)を侵されたことがなかった。そのため、戦闘時に何の問題もなく怒りをコントロール出来ていた。しかし、今回は法が侵されかけた。それにより生じた焦りと不安、そして、怒りがそれを狂わせた。
つまり、非常時の切り札と全力の相性が最悪だったのだ。
「ハハッ、感謝してるぜ!俺自身まだまだ未熟だったわけだ!アー、スッキリしたぜ!」
カイザの怒りの表情は崩れてた。その後、すこし頬の口角を上げて笑った。
「じゃあ、貸にしといてよ!」
リュートが後ろに回り込み攻撃を仕掛ける。
「あぁ、いいぜ!気分いいから、ちっちゃいお願いならあとで聞いてやんよ!」
カイザはリュート攻撃を弾き、蹴り飛ばした。
「…ッ!」
リュートは驚愕した。
本来であれば先の一撃でトドメをさせたはずであった。しかし、それを防がれさらに反撃まで受けたのである。
ドサッ!
カイザは大身槍を放り投げた。そして、新しくに全く同じ形の槍を形成し、手始めに間合い内の岩の棒を目にも止まらぬ速さで全て切り落とした。
切られた棒は地面に落ち崩れ霧散する。
(あれっ?強くなった?)
リュートの眼にはカイザがこの一瞬で格段に強くなった様に写った。彼はすぐに逃げる事を考るが、服に突き刺さったフックがそれを許さなかった。
(まずい!)
リュートはこのままでは負けが濃厚であることを察した。
彼は逃げる事に思考を向けた。そこで邪魔となるのが自身を拘束する糸である。
それには、『硬質化魔法』が掛けられており生半端な攻撃では切ることのできない。だからといって、しっかりとした攻撃をしようものなら大きな隙が生まれてしまう。
そのため、彼はカイザが周りを回り糸を絡めるように動いた。しかし、カイザの『重力魔法』が糸を浮かせてしまい思ったように引っかからなかった。
「ふぅー…」
カイザが息を吐くと魔法の影響で浮いていた糸が地面に落下した。
(何かくる!)
リュートはそれを見てと警戒をあらわにする。
彼は出来るだけ距離を取る。ショーテルを二本とも地面に落とし、丸盾と槍を形成して構えた。
「オラァ!」
カイザはリュートが槍の間合いの外に居るにも関わらず槍を構えて思い切り振った。
「…ッ!」
リュートが咄嗟に盾を構えた。
それは、彼がカイザの攻撃を見切ったと言うい訳ではなかった。寧ろ殆どが勘であり「なんとなくヤバい」くらいの認識であった。
しかし、この決断は正解であった。
ガッガガガガガガガガ!
リュートをチェーンソーが木を切り倒すような音と共に強い衝撃が襲った。
(は?)
リュートは訳も分からず吹き飛ばされた。
槍を地面に擦らせ体勢を整える。盾を確認すると大部分が削られていて使えなくなっていた。
「(どう言うこと!?)…ッ!」
リュートが攻撃の正体を探ろうとカイザを確認する。
カイザの槍は穂が蛇腹剣状になっていた。ただそれは、振るわれた後も宙を蛇のようにうなっている。
「……」
リュートには理解できないことが多く起こった。
カイザが『重力魔法』で槍の補助をしている事は状況的に理解できた。ただ、攻撃が段違い重いのである。撃ち合えば鍔迫り合いが起こる程である。
彼の槍は飛び道具並みの間合いと攻守に優れた応用力まで得る結果となっていた。
リュートはショーテルを二本持って駆けた。小細工無しの正面突破である。
彼は槍の仕組みを解明することはできなかった。ただ、漠然と長期戦を行う事を危機感を覚えたのである。
だから、少しでも有利が残っている内に賭けに出た。
(最短経路で一直線に!)
リュートは迎撃の槍を『座標魔法』『固定魔法』『岩魔法』で空中に作った足場で防ぐ。
(お前の負けだ!)
カイザはたどり着かれる前に押し切ることに成功した。槍の穂が無防備なリュートを捉える。
左右の離脱を許さない横一線の刃である。
タッ!
リュートが上空に飛んだ。
(何やってやがる!?)
カイザはリュートの正気を疑った。空中では身動きが取れず無防備になってしまうためである。
しかし、その考えはすぐに間違いだと気付かされた。
「…ッ!(やりやがった!)」
カイザが空中を見上げると、そこには無数の足場が設置されていた。
(逃げられる!)
カイザが初めに考えたのはそれだった。
空中であれば自重で隙を作らずに糸を切ることが出来る。そうすれば、リュートは逃げることができる。
さらに、彼は走りながらでも罠を設置することが出来る。それを掻い潜りながら追跡するのは至難の業である。
(逃すk…)
彼はまず地面に対して平行に近い足場を探した。そして、その中で刃の付いたものを探した。だが、そんなものは存在しなかった。
そこで、彼はようやくリュートに目を向けた。
その時、リュートは足場からカイザに向かって飛んでいた。彼はこの状況で撤退しようとは考えていなかったのである。
(やっちまった!)
カイザは過ちに気づきく逃がさないことを意識しすぎたのである。彼はリュートを槍で攻撃するが遅すぎた。
ガガッ!ガガガッ!ガガッ!
リュートはショーテルで足場を押し、蹴り、擦り、引っかけ、自分の位置を巧みに変えカイザの攻撃を躱した。そして、勢いそのままでカイザを斬りつけリタイアさせた。
「ふぅ……」
リュートは達成感と安心感で一息ついた。
「ん!?」
視界が一瞬にして森林から医務室待機所へと変わった。
(目立った外傷が無いから待機所なのかな?いやそうじゃなくて、えっ、えー…)
リュートは呆気なくリタイアした事実を受け入れられずしばらく放心状態になってしまった。
「オラァ!」
カイザはショーテルの形状のせいで受けることができず、わざわざ弾いて対応しなくてはいけない。
(早くしないと、まずい)
リュートもカイザを攻め切るには少々技量不足であった。
「ふぅー(落ち着いて観察しよう)」
リュートは戦闘の最中カイザを観察する。そうすることで、弱点を探り打開策を練るのである。
(顔こわっ!)
リュートは注視していると目が合ってしまった。般若の様な形相に一瞬気圧されてしまった。
その隙は見逃されなかった。カイザの槍がリュートを襲う。
「…ッ!(ヤバっ)」
リュートは反応が遅れてしまった。幸い決定的な隙では無かったため『加速魔法』を発動させて難を逃れることができた。
しかし、無理な回避が新たな隙を産んでしまう。そこをカイザが槍で追撃する。
「グッ…!」
リュートは回避した勢いで地面に倒れてしまう。
(おっ!)
リュートはこの追い詰められた状態で起死回生の一手を思いついた。彼は倒れ行く体で後ろの落とし穴に飛んだ。
ボチャ…
「そうはさせねぇぜ!」
カイザはリュートの肩から伸びる糸を掴んで離脱を防いだ。
(だったら、ココで!)
リュート落とし穴の中で糸を切るつもりであったが、機転を効かせてピンと張った糸にショーテルを重ねる。
「うっ!」
しかし、カイザが糸をさらに引き寄せたことでその試みも失敗してしまう。
「オラァ!」
カイザは引き寄せられたリュートに合わせて槍で突き刺す。その時、彼にとって予想外なことが起こった。
リュートが引き寄せられた勢いを利用して攻撃に転じたのである。さらに、自ら前に出ることで槍のタイミングをずらし、身を捩って躱す。
「ハァーッ!」
意表を突かれて撃つ手のないカイザにショーテルを振り下ろした。
しかし、カイザは槍と糸を手放し後ろに飛ぶ。リュートの剣は後少しというところで回避されてしまった。
(強すぎる…あのタイミングならカイトでも倒せるのに)
リュートはカイザの戦闘技術に驚愕する。「あと少し」が届かず攻めあぐねてしまった。
その後も攻撃を躱し、防がれ、が続いていた。
(クソッ!コイツの力量は分かってる、分かってんのに…)
カイザはあらゆる駆け引きで正解を引き続けるリュートにヤキモキしていた。さらに、一合を打ち合う度に手の内が削られていく感覚に不安と焦りが見え始めた。
ガッ!ギギ!
リュートは立体的な動きでカイザを翻弄する。
空宙に固定された棒に剣を引っかけ体の反動と『加速魔法』で一気に回る。
(このまま行けば…勝てる!)
リュートは勝利が近いと感じて始めていた。
彼はカイザの様な敵を相手にする時の手段をあらかじめ持っていた。
それは、毎日のようにカイトとの手合わせをする中で得た戦法である。
波状的に攻撃を仕掛け、相手の癖、反撃、魔法、武器、その一つ一つを丁寧に潰す様に行動を最適化していく。そうすれば、自然に弱点を突き、先読みして動きを封じるようになる。
アレもダメ、コレもダメと言うように、身動き出来ないようにしてしまうのだ。
()
カイザはリュートを侮っていた。
洞窟での戦闘は逃げてばかりで攻撃したと思ったら投擲ばかりであった。
近距離戦も技量不足でありどう転んでも負けは無いと考えていた。
さらに、「糸魔法」の罠に気づかずに掛かりかけていた。そのため、逃げられること以外に警戒する事は無いと本気でたかを括っていた。
しかし、リュートの実力が想定を超えていた。彼は戦闘の最中に思考を巡らせ策を弄する。その結果、カイザは徐々に攻撃回数が減っていき押され始めた。
(クソ…)
カイザは手詰まりを感じ撃つ手が無い状態であった。
だが、彼には単純な解決策はがあった。それは、本気を出す事である。
本人は気づいていないが、今カイザは本来の実力を出し切れていない。これは、カイザに内なる力が眠っているなど、そう言う類のものではなく。心理的な問題で普段の力を出し切れていないのである。
カイザは自分が勝つことを前提に戦闘を始めていた。そのため、リュートを終始舐めきっており、自身の強みを全く生かしていなかった。
実際に彼は、戦闘を真面目に行っておらず、憂さ晴らしに狩をしているのとさほど変わりなかった。
カイザ本来の戦い方はリュートと同じであった。自身に都合の良いように場を整えてから相手を待ち構える戦い方である。
実際に洞窟での戦闘でも出入り口と背後の地面に糸を張らせていた。糸は全てカイザに繋がっており異変があればすぐ分かるようになっている。それによって漁夫の利が来てもすぐ対処できる様にしていた。
しかし、今回は何の対策もしないまま相手のフィールドにノコノコと入ってしまっている。
彼は戦闘に勝つことへの下準備をせず、多少不利になっても逃がさないその事のみに思考を支配されていた。
そして今、獲物だと思っていた相手に狩られ掛けている。
「すまねぇ、おまえさんのこと舐めてたわ」
カイザが何か吹っ切れたように言った。そして、彼は吹っ切れた事で自身のもう一つの欠点に気づいた。
彼は今まで法(自分ルール)を侵されたことがなかった。そのため、戦闘時に何の問題もなく怒りをコントロール出来ていた。しかし、今回は法が侵されかけた。それにより生じた焦りと不安、そして、怒りがそれを狂わせた。
つまり、非常時の切り札と全力の相性が最悪だったのだ。
「ハハッ、感謝してるぜ!俺自身まだまだ未熟だったわけだ!アー、スッキリしたぜ!」
カイザの怒りの表情は崩れてた。その後、すこし頬の口角を上げて笑った。
「じゃあ、貸にしといてよ!」
リュートが後ろに回り込み攻撃を仕掛ける。
「あぁ、いいぜ!気分いいから、ちっちゃいお願いならあとで聞いてやんよ!」
カイザはリュート攻撃を弾き、蹴り飛ばした。
「…ッ!」
リュートは驚愕した。
本来であれば先の一撃でトドメをさせたはずであった。しかし、それを防がれさらに反撃まで受けたのである。
ドサッ!
カイザは大身槍を放り投げた。そして、新しくに全く同じ形の槍を形成し、手始めに間合い内の岩の棒を目にも止まらぬ速さで全て切り落とした。
切られた棒は地面に落ち崩れ霧散する。
(あれっ?強くなった?)
リュートの眼にはカイザがこの一瞬で格段に強くなった様に写った。彼はすぐに逃げる事を考るが、服に突き刺さったフックがそれを許さなかった。
(まずい!)
リュートはこのままでは負けが濃厚であることを察した。
彼は逃げる事に思考を向けた。そこで邪魔となるのが自身を拘束する糸である。
それには、『硬質化魔法』が掛けられており生半端な攻撃では切ることのできない。だからといって、しっかりとした攻撃をしようものなら大きな隙が生まれてしまう。
そのため、彼はカイザが周りを回り糸を絡めるように動いた。しかし、カイザの『重力魔法』が糸を浮かせてしまい思ったように引っかからなかった。
「ふぅー…」
カイザが息を吐くと魔法の影響で浮いていた糸が地面に落下した。
(何かくる!)
リュートはそれを見てと警戒をあらわにする。
彼は出来るだけ距離を取る。ショーテルを二本とも地面に落とし、丸盾と槍を形成して構えた。
「オラァ!」
カイザはリュートが槍の間合いの外に居るにも関わらず槍を構えて思い切り振った。
「…ッ!」
リュートが咄嗟に盾を構えた。
それは、彼がカイザの攻撃を見切ったと言うい訳ではなかった。寧ろ殆どが勘であり「なんとなくヤバい」くらいの認識であった。
しかし、この決断は正解であった。
ガッガガガガガガガガ!
リュートをチェーンソーが木を切り倒すような音と共に強い衝撃が襲った。
(は?)
リュートは訳も分からず吹き飛ばされた。
槍を地面に擦らせ体勢を整える。盾を確認すると大部分が削られていて使えなくなっていた。
「(どう言うこと!?)…ッ!」
リュートが攻撃の正体を探ろうとカイザを確認する。
カイザの槍は穂が蛇腹剣状になっていた。ただそれは、振るわれた後も宙を蛇のようにうなっている。
「……」
リュートには理解できないことが多く起こった。
カイザが『重力魔法』で槍の補助をしている事は状況的に理解できた。ただ、攻撃が段違い重いのである。撃ち合えば鍔迫り合いが起こる程である。
彼の槍は飛び道具並みの間合いと攻守に優れた応用力まで得る結果となっていた。
リュートはショーテルを二本持って駆けた。小細工無しの正面突破である。
彼は槍の仕組みを解明することはできなかった。ただ、漠然と長期戦を行う事を危機感を覚えたのである。
だから、少しでも有利が残っている内に賭けに出た。
(最短経路で一直線に!)
リュートは迎撃の槍を『座標魔法』『固定魔法』『岩魔法』で空中に作った足場で防ぐ。
(お前の負けだ!)
カイザはたどり着かれる前に押し切ることに成功した。槍の穂が無防備なリュートを捉える。
左右の離脱を許さない横一線の刃である。
タッ!
リュートが上空に飛んだ。
(何やってやがる!?)
カイザはリュートの正気を疑った。空中では身動きが取れず無防備になってしまうためである。
しかし、その考えはすぐに間違いだと気付かされた。
「…ッ!(やりやがった!)」
カイザが空中を見上げると、そこには無数の足場が設置されていた。
(逃げられる!)
カイザが初めに考えたのはそれだった。
空中であれば自重で隙を作らずに糸を切ることが出来る。そうすれば、リュートは逃げることができる。
さらに、彼は走りながらでも罠を設置することが出来る。それを掻い潜りながら追跡するのは至難の業である。
(逃すk…)
彼はまず地面に対して平行に近い足場を探した。そして、その中で刃の付いたものを探した。だが、そんなものは存在しなかった。
そこで、彼はようやくリュートに目を向けた。
その時、リュートは足場からカイザに向かって飛んでいた。彼はこの状況で撤退しようとは考えていなかったのである。
(やっちまった!)
カイザは過ちに気づきく逃がさないことを意識しすぎたのである。彼はリュートを槍で攻撃するが遅すぎた。
ガガッ!ガガガッ!ガガッ!
リュートはショーテルで足場を押し、蹴り、擦り、引っかけ、自分の位置を巧みに変えカイザの攻撃を躱した。そして、勢いそのままでカイザを斬りつけリタイアさせた。
「ふぅ……」
リュートは達成感と安心感で一息ついた。
「ん!?」
視界が一瞬にして森林から医務室待機所へと変わった。
(目立った外傷が無いから待機所なのかな?いやそうじゃなくて、えっ、えー…)
リュートは呆気なくリタイアした事実を受け入れられずしばらく放心状態になってしまった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる