モンスターコア

ざっくん

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vs秘密結社クロノス

78話 生命の固定

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 今現在、この世界ではある例外を除く全てのが動きを止めた

 使ってしまった、使ってしまったの力を…!
 シルビアは首元に迫ったリオンのナイフに恐怖し、ある2つの魔法を発動させていた。の『記録魔法』と白 の『反転魔法』である。結果、源界内の生物の時が止まった

 彼女は強者の集まる上空から地上に向け敵味方全てを剣で斬りながら降りいく。素早く一人一人を想いながら作業的に心臓コアを砕いていく。教員、侵略者、縁者、そこに垣根は無かった

 しかし、彼女が空に浮かぶロボットに近づく。コックピットには他と同じ様に時の止まった生徒が5人いた。
 まずはロボットを切り裂こうと剣を大きく振りかぶる。その時それは起った。

 ドドドドドドッ!!

 頭の先から足の先まで無数の風穴が開く。無警戒で近づくシルビアを無数の銃弾が襲ったのだ。その中で数個が脳を直した。

「……!?」

 彼女は薬莢と共に落下する。外にも内にも意識を向けられず何も考えられない。軽くなった体とは裏腹に意識は重りがついたように重くなる。

 だれ、ダ…

 ただ、意識が途切れる直前にコックピット内を動く一つの人影を目撃した。
 本来ならばあり得ないソレは、堕ちるシルビアをじっと見つめていた。
 ーーーーー
 ここは狭く白い部屋。壁や天井は硬く、何かが繋がれていたであろう大量の管以外に何もない不思議な場所だ
 戦場の音が届かない、地上とは断絶されたの別世界。そこに5人の生徒が閉じ込められていた。

 リュート、カイザ、サリア、ミリナリス、リズである。彼ら一年生は朝、学園で暗躍するシルビア達に運悪く遭遇してしまった。そのせいで精神魔法を受け、この部屋に監禁されてしまったのだ。 
 ただ、今では互いを家族と認識する《悪趣味な》精神魔法は対応されており、影響下にあるのはサリアだけである。
 
「どうします~?」

 ミリナリスが大の字に寝っ転がり、気怠げに天井を見上げる。
 彼女は黒いフードで頭を包み、白いフルフェイスの仮面を顔に乗せている。初夏であるにも関わらず手袋、タイツ、長袖の制服を着込んでおり、固くなに肌を見せようとしない。

「学園のネットが沈黙した。さっきまで使えてたのに。非常事態…だよね」

 リュートは部屋の中でミリナリスとは対角の位置にいた。彼女と同じように寝っ転がっている。学生カードに光を反射させて手持ち無沙汰を紛らわしていた。

 自己紹介、戦力把握、方針決め、交流、ゲーム、この何も無い空間で出来る暇つぶしはやり尽くしてしまった。

「もう出ません?」

「おいおい、とどまる方が安全だって結論出したじゃねえか!舌の根も乾かぬうちに何言ってやがる?」

 カイザがミリナリスを咎める。

「知ってますか?脳は結果に関わらず行動に起こせば報酬を出んです。つまり…」

「それは、餌…益を得る場合のみだ。危険に身を投じる建前にはならねぇぞ」

「人は一定期間情報を制限されると…」

「数日で症状は出ねぇ。それに、もしもの時はお前らが興味ありそうな話の一つや二つ用意がある」

「ふふ、あなたのようなつまらない人間の言葉程度で私を動かせるとお思いで?ただ、それでもと言うならジャンケンのけ…」

「多数決だ」

「ジャンケ…」

「多数決で決着をつける」

 この後しばらくの間、二人は他の3人を巻き込んで討論を続けた。何故か多数決で決着が付かなかった。精神魔法の解けていないサリアが外に出たがり、リュートが一票を人質にカイザの言う『興味ありそうな話』を引き出そうとしたためである

 しかし、時間は彼らの決着を待ってくれなかった

 ドンっ!!ミシミシ…

 戦禍が彼らのすぐそばまで忍び寄っていたのだ。
 強烈な横方向の衝撃にを受け、部屋に全体にヒビが入った。

「出るぞ!手を貸せ!」

「なぜです!?」

「音だ!」

「その説明でわかるとでも!?」

「部屋を狙ってても流れ弾でも音で初撃だって読み取れてるから、今後も続くとかもって考えて。安全なところへの移動、最低でも出口の確保でしょ。それに、いきなり戦闘が始まったってことは見張りがいた可能性も高いよね。

 サリアはリズに背中を預けて寄りかかり、頭を撫でてもらっている。

 必要なことだった。黒装束彼らに拘束は精神魔法で十分だと思わせたかった。そのための演技には正確な効果時間がどうしても欲しかった

「…もう、治してあげて、」

 リュートを強烈な共感性羞恥が限界を超えた。真っ赤になった顔を両手で覆い悶え苦しんだ。

「ミリナリス頼んだ。俺達はこっちをやる」

 出ることを選択した彼らには魔法を解除しない理由は無い。カイザはミリナリスに治療を任せ、壁を向く。
 リュートのの見立てによると、壁を破壊し脱出するには最低でも3人の『変換』を用いた捨身の攻撃に魔法によるブーストをかける必要がある

「なんでナチュラルに仕切ってるんです?不愉快です!?」

 ミリナリスはサリアの頭に手を伸ばす。内心納得はしていないが仕事はこなした
 精神魔法を含む身体に影響を与える魔法は他者に行使する際、相手のマナを自分のマナに置き換える"侵食"と言うステップを取る。よって、そのマナを侵食し取り除くことで魔法は自然に解除される。

「ヤダ…このままがいい」

 リズが抵抗した。膝の上にもたれかかったサリアを抱擁し、ミリナリスの手から庇った。

「え?」「は!?」

 ミリナリスとカイザから驚きのあまり声が漏れ、動きが止まる

「なぜです!?」

「…なんかこう、同級生が妹とか弟とかにって甘えてくるの、すごく、すごく、いい。母性とか、背徳感とか、支配欲とかでいっぱいになって。後少しだけだから!」

 彼女はミリナリスの問いに少し言い淀んだ後、興奮気味に話し出した

「わがまま言んじゃねぇ!今動く!置いてくぞ!」

 彼は左腕を生成魔法でし、壁に向けて構えをとった

「え…あっ!」

 子供のわがままみたいな行動をしていた彼女だが、構えるカイザを見て態度が変わった

「待って!」

 リズが声を出しカイザを止める

「情報共有をします」

 リズが話を続ける。彼女はの目は先ほどの欲望に曇ったものと違い、説得力のある芯の通った目をしていた。

 彼女は現在部屋の外で戦っているのが自分たちを捕らえた大男と誰かが中に乗って操縦している魔動人形ゴーレムであること。戦況は拮抗しており、自分たちが出ることで有利になる保証がなく、足手纏いになりかねないことを説明した。

「私、五感が鋭いので」

 鼻の頭にトンと指で触れ、得意げな顔をする。
 ミリナリスは彼女の五感は信頼できると補足した

「そういうことなら僕は出たい。自身の運命を他人任せってのはプライド的に無理」

「うわぁ…」
「言うじゃねえか」
「いやね、あの比率的にはサリアちゃんを抱いていたいって理由のほうが大きいと言うか、ひよっていたわけでは…」

 この場で戦力的に一番弱いリュートの身の程知らずな発言ではあったが、一般的にエリートに分類される彼らのプライドを抉った

「いくぞ!」

 カイザ、リュート、リズの3人が壁の繋ぎ目に向けて構をとる

 ただ、この場でプライドを抉られている者がいた

 ふざけるんじゃないわよ!…絶対に許さない!

 サリアは四人それぞれに憤りを覚えていた。しかし、それ以上に自分に自身に怒っていた。
 砂時計タイマー役は戦闘能力以外に対して取り柄のない自分が適任だったから。責めることは出来ない
 ならば取るべき行動はただ一つ

魅せつけてやる…!
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