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序章
知らない方が良い事
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世の中には知らない方が良い物が沢山ある。それを聞くと多くの人がヤバイ組織の機密文書であったり、事件の現場だったりを想像する。しかしながら、もっと恐ろしいものがもっと身近に、もっと多く存在する。人間社会から外れた快楽と依存である。
今しがた一人の男が自身のマンションに帰宅した。彼の名前は『佐藤 政宗』である。25歳独身、顔も良く、お飾りではあるが建設業の代表取締役まで上り詰めたエリートである。しかし、ある事件が彼を変えた。
ぎりぎりの所で理性を働かせて耐えている。しかし、彼は人が死する様に魅入られてしまったのだ。
それは彼の生活に少なからぬ変化を与えた。
例として彼の食卓には海鮮が増えた。その中でも海老や蟹が多く、鮮度の良い仮死状態の物を好んで取り寄せた。
今日の晩は知り合いに譲ってもらった鯵である。最近のトレンドは新鮮な海鮮系である事を話したら快く活魚水槽から一匹分けてくれたのである。
男はボールに塩水を溜めて鯵を軽く洗う。
死にかけていた鯵は水を得て活力を取り戻しぴちぴちと跳ねる。
そんな鯵を見て男は包丁を下ろした。
彼は、絶望の渦中生きようともがき続け、辿り着いた希望が幻想であった。そんな人間が現実を受け止められず心から絶望し、この世を去る。その結果生まれた光景を溜まらなく美しいと感じてしまう破綻者である。
其処から、彼の世界では急速に死が増えた。
猫が車に轢かれている。電灯に引き寄せられた羽虫が力無く落下する。鳥が何かを啄ばんでいる。
今まで気にも留めなかった事柄が視界の端をチラつく。彼の世界に死が溢れ出し、より身近なものとなっていった。
男はある日の午後8時頃、帰りの人通りの少ない路地で見窄らしい男性とすれ違った。猫背で髪がボサボサ、痩せていて服のセンスもお世辞にも良いとは言えない着こなしであった。
誰だ?
男は毎日のようにここを通っているがその男性に見覚えが無かったのだ。男は偶然なのだろうと気にも留めなかった。
しかし、次の日も、また次の日も、男はその見窄らしい男性とすれ違った。彼は特に目立つ見た目をしているわけでも無いだがは妙に目を引く。
一週間が経ち男は耐えきれずに声をかけた。
「今帰りですか?」
「えっ…?えと…こ、これから夜勤のバイト、です。」
「私もまだ仕事が残っていて、やになっちゃいますよね」
「そ、そうですね。バ、バイトがあるので…」
男性は男の言葉にオドオドとしながら返事をする。
「お疲れ様です」
ほんの一瞬の掛け合いでったが男はある事を確信した。
彼は人間社会で中で最も価値の低い者なのだなあれは…
男は男性の外見に気を使わずだらしない格好、話し慣れていない様子、同類を見つけて安心し、気弱な性格。その要素を元に、上京したは良いものの手に職が就かず。フリーターの身に甘んじている向上心の無い青年だと考えた。
死んだところで、誰も気に留めないだろう…うっ…しかし、
男は気力の限界を迎えていた。魚や野良猫で気を紛らわして衝動を抑えようとしていたが、それは、意味のないどころか逆効果であった。麻薬に依存した患者の様にもっと強い刺激を求めるようになっており、爆発するのは時間の問題となっていた。
更に一週間後、男は遂に計画を実行に移した。世間話でもするかの様に男性に話しかける。
「こんばんは、前に話しましたよね」
「あ、はい、」
男は唐突にスタンガンを男性の首元に刺した。
男性は声も出せずビクビクと痙攣しその場に倒れた。倒れた後も数秒スタンガンを当て続ける。すると、手足が棒のようにピンと伸び、口をガタガカと震わせながら泡を吹き始めた。
つ、遂にやってしまった…
男は後悔と良心の呵責とそれを塗り潰すほど大きい高揚感を味わった。呼吸も荒くなり達成感が込み上げてきた。
「フフッ…フフッ…フフフッ…」
情けない声が喉から漏れ出てくる。
男は男性の手足を縛り猿轡を付けるとスーツケースに押し込んで、車のトランクに乗せた。
男は車を降り、スーツケースを転がす。一人きりの世界を優雅に歩く。駐車場から部屋の前まで誰とも会わずに辿り着いた。
挨拶を交わした管理人、すれ違った警備員、エレベーターで同席した女性、そのどれもが彼の目には映らなかった。
「ここが君の新しい家だよ」
男は気絶したままの男性をスーツケースから出し声を掛ける。
其処は、中央にコの字に曲がった鉄パイプが付けられているだけの何も無い部屋である。
「君のためにわざわざ防音にしたんだ。60万も掛かってしまったよ」
男は縄を解き鉄棒に手錠で繋ぎ晩御飯を済ませて就寝した。
次の日、男はあるコンビニへと足を運んだ。男性の監禁の影響を確認するためである。
楽しい事だけを行っていては破綻してしまう
男は大量に物をカゴに入れてレジに置いた。
「ん?おや、新人さんかな?」
男はレジを打っている女子に声を掛けた。
「あっ、いえ、この時間入ってる人が突然来なくなっちゃって、私が代わりに入ってるんです。」
「そう、大変だね。応援してるよ」
「は、はい」
少女は頬を赤くしてにやける。
「ありがと」
男は軽く礼を言って後にした。
次の日、男がコンビニ店員をしていた帰宅中の女子に声をかけた。
「おや?君は…」
今しがた一人の男が自身のマンションに帰宅した。彼の名前は『佐藤 政宗』である。25歳独身、顔も良く、お飾りではあるが建設業の代表取締役まで上り詰めたエリートである。しかし、ある事件が彼を変えた。
ぎりぎりの所で理性を働かせて耐えている。しかし、彼は人が死する様に魅入られてしまったのだ。
それは彼の生活に少なからぬ変化を与えた。
例として彼の食卓には海鮮が増えた。その中でも海老や蟹が多く、鮮度の良い仮死状態の物を好んで取り寄せた。
今日の晩は知り合いに譲ってもらった鯵である。最近のトレンドは新鮮な海鮮系である事を話したら快く活魚水槽から一匹分けてくれたのである。
男はボールに塩水を溜めて鯵を軽く洗う。
死にかけていた鯵は水を得て活力を取り戻しぴちぴちと跳ねる。
そんな鯵を見て男は包丁を下ろした。
彼は、絶望の渦中生きようともがき続け、辿り着いた希望が幻想であった。そんな人間が現実を受け止められず心から絶望し、この世を去る。その結果生まれた光景を溜まらなく美しいと感じてしまう破綻者である。
其処から、彼の世界では急速に死が増えた。
猫が車に轢かれている。電灯に引き寄せられた羽虫が力無く落下する。鳥が何かを啄ばんでいる。
今まで気にも留めなかった事柄が視界の端をチラつく。彼の世界に死が溢れ出し、より身近なものとなっていった。
男はある日の午後8時頃、帰りの人通りの少ない路地で見窄らしい男性とすれ違った。猫背で髪がボサボサ、痩せていて服のセンスもお世辞にも良いとは言えない着こなしであった。
誰だ?
男は毎日のようにここを通っているがその男性に見覚えが無かったのだ。男は偶然なのだろうと気にも留めなかった。
しかし、次の日も、また次の日も、男はその見窄らしい男性とすれ違った。彼は特に目立つ見た目をしているわけでも無いだがは妙に目を引く。
一週間が経ち男は耐えきれずに声をかけた。
「今帰りですか?」
「えっ…?えと…こ、これから夜勤のバイト、です。」
「私もまだ仕事が残っていて、やになっちゃいますよね」
「そ、そうですね。バ、バイトがあるので…」
男性は男の言葉にオドオドとしながら返事をする。
「お疲れ様です」
ほんの一瞬の掛け合いでったが男はある事を確信した。
彼は人間社会で中で最も価値の低い者なのだなあれは…
男は男性の外見に気を使わずだらしない格好、話し慣れていない様子、同類を見つけて安心し、気弱な性格。その要素を元に、上京したは良いものの手に職が就かず。フリーターの身に甘んじている向上心の無い青年だと考えた。
死んだところで、誰も気に留めないだろう…うっ…しかし、
男は気力の限界を迎えていた。魚や野良猫で気を紛らわして衝動を抑えようとしていたが、それは、意味のないどころか逆効果であった。麻薬に依存した患者の様にもっと強い刺激を求めるようになっており、爆発するのは時間の問題となっていた。
更に一週間後、男は遂に計画を実行に移した。世間話でもするかの様に男性に話しかける。
「こんばんは、前に話しましたよね」
「あ、はい、」
男は唐突にスタンガンを男性の首元に刺した。
男性は声も出せずビクビクと痙攣しその場に倒れた。倒れた後も数秒スタンガンを当て続ける。すると、手足が棒のようにピンと伸び、口をガタガカと震わせながら泡を吹き始めた。
つ、遂にやってしまった…
男は後悔と良心の呵責とそれを塗り潰すほど大きい高揚感を味わった。呼吸も荒くなり達成感が込み上げてきた。
「フフッ…フフッ…フフフッ…」
情けない声が喉から漏れ出てくる。
男は男性の手足を縛り猿轡を付けるとスーツケースに押し込んで、車のトランクに乗せた。
男は車を降り、スーツケースを転がす。一人きりの世界を優雅に歩く。駐車場から部屋の前まで誰とも会わずに辿り着いた。
挨拶を交わした管理人、すれ違った警備員、エレベーターで同席した女性、そのどれもが彼の目には映らなかった。
「ここが君の新しい家だよ」
男は気絶したままの男性をスーツケースから出し声を掛ける。
其処は、中央にコの字に曲がった鉄パイプが付けられているだけの何も無い部屋である。
「君のためにわざわざ防音にしたんだ。60万も掛かってしまったよ」
男は縄を解き鉄棒に手錠で繋ぎ晩御飯を済ませて就寝した。
次の日、男はあるコンビニへと足を運んだ。男性の監禁の影響を確認するためである。
楽しい事だけを行っていては破綻してしまう
男は大量に物をカゴに入れてレジに置いた。
「ん?おや、新人さんかな?」
男はレジを打っている女子に声を掛けた。
「あっ、いえ、この時間入ってる人が突然来なくなっちゃって、私が代わりに入ってるんです。」
「そう、大変だね。応援してるよ」
「は、はい」
少女は頬を赤くしてにやける。
「ありがと」
男は軽く礼を言って後にした。
次の日、男がコンビニ店員をしていた帰宅中の女子に声をかけた。
「おや?君は…」
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