復讐の殺人鬼

ざっくん

文字の大きさ
2 / 3
序章

知らない方が良い事

しおりを挟む
 世の中には知らない方が良い物が沢山ある。それを聞くと多くの人がヤバイ組織の機密文書であったり、事件の現場だったりを想像する。しかしながら、もっと恐ろしいものがもっと身近に、もっと多く存在する。人間社会から外れた快楽と依存である。

 今しがた一人の男が自身のマンションに帰宅した。彼の名前は『佐藤 政宗』である。25歳独身、顔も良く、お飾りではあるが建設業の代表取締役まで上り詰めたエリートである。しかし、ある事件が彼を変えた。

 ぎりぎりの所で理性を働かせて耐えている。しかし、彼は人が死する様に魅入られてしまったのだ。
 それは彼の生活に少なからぬ変化を与えた。

 例として彼の食卓には海鮮が増えた。その中でも海老や蟹が多く、鮮度の良い仮死状態の物を好んで取り寄せた。

 今日の晩は知り合いに譲ってもらったあじである。最近のトレンドは新鮮な海鮮系である事を話したら快く活魚水槽から一匹分けてくれたのである。
 男はボールに塩水を溜めて鯵を軽く洗う。
 死にかけていた鯵は水を得て活力を取り戻しぴちぴちと跳ねる。
 そんな鯵を見て男は包丁を下ろした。

 彼は、絶望の渦中生きようともがき続け、辿り着いた希望が幻想であった。そんな人間が現実を受け止められず心から絶望し、この世を去る。その結果生まれた光景を溜まらなく美しいと感じてしまう破綻者である。

 其処から、彼の世界では急速に死が増えた。
 猫が車に轢かれている。電灯に引き寄せられた羽虫が力無く落下する。鳥が何かをついばんでいる。
 今まで気にも留めなかった事柄が視界の端をチラつく。彼の世界に死が溢れ出し、より身近なものとなっていった。

 男はある日の午後8時頃、帰りの人通りの少ない路地で見窄らしい男性とすれ違った。猫背で髪がボサボサ、痩せていて服のセンスもお世辞にも良いとは言えない着こなしであった。

 誰だ?

 男は毎日のようにここを通っているがその男性に見覚えが無かったのだ。男は偶然なのだろうと気にも留めなかった。
 しかし、次の日も、また次の日も、男はその見窄らしい男性とすれ違った。彼は特に目立つ見た目をしているわけでも無いだがは妙に目を引く。

 一週間が経ち男は耐えきれずに声をかけた。

「今帰りですか?」

「えっ…?えと…こ、これから夜勤のバイト、です。」

「私もまだ仕事が残っていて、やになっちゃいますよね」

「そ、そうですね。バ、バイトがあるので…」

 男性は男の言葉にオドオドとしながら返事をする。

「お疲れ様です」

 ほんの一瞬の掛け合いでったが男はある事を確信した。

 彼は人間社会で中で最も価値の低い者なのだなあれは…

 男は男性の外見に気を使わずだらしない格好、話し慣れていない様子、同類を見つけて安心し、気弱な性格。その要素を元に、上京したは良いものの手に職が就かず。フリーターの身に甘んじている向上心の無い青年だと考えた。

 死んだところで、誰も気に留めないだろう…うっ…しかし、

 男は気力の限界を迎えていた。魚や野良猫で気を紛らわして衝動を抑えようとしていたが、それは、意味のないどころか逆効果であった。麻薬に依存した患者の様にもっと強い刺激を求めるようになっており、爆発するのは時間の問題となっていた。

 更に一週間後、男は遂に計画を実行に移した。世間話でもするかの様に男性に話しかける。

「こんばんは、前に話しましたよね」

「あ、はい、」

 男は唐突にスタンガンを男性の首元に刺した。
 男性は声も出せずビクビクと痙攣しその場に倒れた。倒れた後も数秒スタンガンを当て続ける。すると、手足が棒のようにピンと伸び、口をガタガカと震わせながら泡を吹き始めた。

 つ、遂にやってしまった…

 男は後悔と良心の呵責かしゃくとそれを塗り潰すほど大きい高揚感を味わった。呼吸も荒くなり達成感が込み上げてきた。

「フフッ…フフッ…フフフッ…」

 情けない声が喉から漏れ出てくる。

 男は男性の手足を縛り猿轡さるぐつわを付けるとスーツケースに押し込んで、車のトランクに乗せた。

 男は車を降り、スーツケースを転がす。一人きりの世界を優雅に歩く。駐車場から部屋の前まで誰とも会わずに辿り着いた。
 挨拶を交わした管理人、すれ違った警備員、エレベーターで同席した女性、そのどれもが彼の目には映らなかった。

「ここが君の新しい家だよ」

 男は気絶したままの男性をスーツケースから出し声を掛ける。
 其処は、中央にコの字に曲がった鉄パイプが付けられているだけの何も無い部屋である。
 
「君のためにわざわざ防音にしたんだ。60万も掛かってしまったよ」

 男は縄を解き鉄棒に手錠で繋ぎ晩御飯を済ませて就寝した。

 次の日、男はあるコンビニへと足を運んだ。男性の監禁の影響を確認するためである。

 楽しい事だけを行っていては破綻してしまう

男は大量に物をカゴに入れてレジに置いた。

「ん?おや、新人さんかな?」

 男はレジを打っている女子に声を掛けた。

「あっ、いえ、この時間入ってる人が突然来なくなっちゃって、私が代わりに入ってるんです。」

「そう、大変だね。応援してるよ」

「は、はい」

 少女は頬を赤くしてにやける。

「ありがと」

 男は軽く礼を言って後にした。

 次の日、男がコンビニ店員をしていた帰宅中の女子に声をかけた。

「おや?君は…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛

MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。

処理中です...