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序章
人の動かし方
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人を動かすには何をすればいい?
飴と鞭?メリットの提示?不安と安心?どれも違う。それらも人を動かすには有効ではある。ただ、それらは結果論である。根本的な原因を理解してない。
ならば原因は何なのか?
「楽」である。人の行動の原点はそこにある。
薄暗い夜道
一人の男が偶然を装い帰宅中の少女に声をかけた。彼は「佐藤 政宗」。つい最近に人間を一人誘拐した事で欲望のダムが決壊した憐れな狂人である。
「おや?君は…」
男はネクタイを緩め一仕事を終えたばかり様な印象を与える。ただ、爪先や髪などの細かい身だしなみに乱れは無かった。
「あっ、昨日の…」
少女は男の事を覚えていたのか言葉を濁して答える。彼女は男性に慣れていないのか好意と警戒心が混ざった複雑な表情をしている。
「覚えてくれていたのか、光栄だ。私は鈴木慎也だ。…えっと、名前を聞いてもいいかな?」
「さ、斎藤玲奈、です」
少女は緊張で挙動不審になりながらも声を振り絞り答える。彼女は男性に対しての耐性が低く極度の緊張にあった。
「…災難でしたったね」
「えっと…何がですか?」
少女は何のことだかさっぱり分からないと言った様子である。
「同僚が無断欠勤したのでしょう?ちゃんと抗議した方がいいですよ」
「そ、それがまだ連絡が取れなくて…」
「そんないい加減な人なのかね?彼は」
「あまり関わってないけど、そう言う人じゃなかったと思います」
「それは心配だ、何かあったのかもしれない」
「何かって?」
「そう言う事件のことだ。死体がでないと警察もほとんど動かないらしいからね」
「こ、怖いですね…」
少女は平気な素振りで受け答えをする。しかし、意識してしまったのだろうか、声が少しこわばっている。
「すまない怖がらせた。少し明るい話題に変えよう」
「は、はい」
少女は言われるがまま男性と帰路を共にする。
「最近、新しい趣味が出来ましてね。ペットを飼い始めました。仕込んだ芸がどんどんモノになるのを見ていると胸にくるものがあります」
「何のペットを飼ってるんですか?芸ってことはやっぱり犬ですかね」
「はい、犬です」
「へ~、犬種は何ですか?」
「犬種ですか…いかんせん野良だったのでそこまで把握してませんでした。今度調べておくので、また会った時にでも」
ーーーーーー
「どうすれば…大人になれますか?」
ーーー長かった。
小さなアドバイスと頼りになる大人のイメージを刷り込み続けた甲斐があった。少女はここまで依存した。後は条数的に増やしていけばいい。
だが、慌てるな。何かを間違えれば全てが無駄になる。
「随分と重いですね」
「えっと、鈴木さんは出来る大人って感じじゃ無いですか…私もそうなれたらな…って」
「そうか。そう言う時は原因を突き止めて取り除くのは早い方がいい。私がそのやり方を教えてあげよう」
男は悩める少女に助言を与える。しかし、それは彼女のためでは無い。胸の内に蠢くドス黒い感情に身を任せている。
「まずは、手のつけやすい所からいこう。爪だ。今回は私のを貸すが、自分用のものを買え」
男は棒状の爪磨きを取り出し女子の手を掴んだ。
「ふぇ!?」
「黙っていなさい。すぐ終わる」
一つ一つの爪を丁寧に磨き上げる。
動物は動く物を目で追う習性がある。それは、自身に迫る危機や重要な情報を見逃がさないためである。とりわけ爪を含む手はよく動く。よって、それだけ注目される。
「ふぁ~、こんなに綺麗になるんですね!」
「髪も伸ばした方がいい。そちらの方が君に合うだろう」
「分かりました」
「また何かあれば、言うといい。大人の視点から何かアドバイスをしよう」
それから、彼らの関係は劇的に変わった。少女は細かいことから重要な事まで相談を始め、男はより具体的な指示を出すようになった。
ーーーーー
「どうかな?学校生活は?」
「余り、変わらないです。何がいけないのでしょう?すごく可愛くなったのに…」
「アピールの仕方が悪いのでしょう。私の教えた通りにしてみてください」
ーーーーー
「凄いです!皆んなが可愛くなったね。って、友達も増えて学校がどんどん楽しくなっていきます。実は気になってる男の子がいて…」
「それは良かった。でも、学校はもっと楽しいところですよ。また指示をするので従ってください」
ーーーーー
「男の子の方から話しかける様になりました。次はどうすれば良いですか」
「外に連れ出してみましょう。デートです。やり方は指示してあげよう」
「はい」
ーーーーー
「告白されたのですか。受けなさい」
「はい」
ーーーーー
「そろそろだ。彼氏とは別れなさい。転校してもらいます」
「はい」
ーーーーー
そろそろ、大丈夫だろう…
男は少女の両親を訪れた。ただ、彼女との関係について了承を得てるために事前にあっており、会うのはこれが初めてではない。
「というわけで、娘さんをこの高校に転校させてよろしいですか?」
「鈴木さんがおっしゃるなら、それがいいのでしょう。私たちは親失格ですから」
「そうでしたね。では、手続きの仕方は指示しますのでお願いします」
ーーーこれでようやく始められる。楽しい楽しい復讐を。
飴と鞭?メリットの提示?不安と安心?どれも違う。それらも人を動かすには有効ではある。ただ、それらは結果論である。根本的な原因を理解してない。
ならば原因は何なのか?
「楽」である。人の行動の原点はそこにある。
薄暗い夜道
一人の男が偶然を装い帰宅中の少女に声をかけた。彼は「佐藤 政宗」。つい最近に人間を一人誘拐した事で欲望のダムが決壊した憐れな狂人である。
「おや?君は…」
男はネクタイを緩め一仕事を終えたばかり様な印象を与える。ただ、爪先や髪などの細かい身だしなみに乱れは無かった。
「あっ、昨日の…」
少女は男の事を覚えていたのか言葉を濁して答える。彼女は男性に慣れていないのか好意と警戒心が混ざった複雑な表情をしている。
「覚えてくれていたのか、光栄だ。私は鈴木慎也だ。…えっと、名前を聞いてもいいかな?」
「さ、斎藤玲奈、です」
少女は緊張で挙動不審になりながらも声を振り絞り答える。彼女は男性に対しての耐性が低く極度の緊張にあった。
「…災難でしたったね」
「えっと…何がですか?」
少女は何のことだかさっぱり分からないと言った様子である。
「同僚が無断欠勤したのでしょう?ちゃんと抗議した方がいいですよ」
「そ、それがまだ連絡が取れなくて…」
「そんないい加減な人なのかね?彼は」
「あまり関わってないけど、そう言う人じゃなかったと思います」
「それは心配だ、何かあったのかもしれない」
「何かって?」
「そう言う事件のことだ。死体がでないと警察もほとんど動かないらしいからね」
「こ、怖いですね…」
少女は平気な素振りで受け答えをする。しかし、意識してしまったのだろうか、声が少しこわばっている。
「すまない怖がらせた。少し明るい話題に変えよう」
「は、はい」
少女は言われるがまま男性と帰路を共にする。
「最近、新しい趣味が出来ましてね。ペットを飼い始めました。仕込んだ芸がどんどんモノになるのを見ていると胸にくるものがあります」
「何のペットを飼ってるんですか?芸ってことはやっぱり犬ですかね」
「はい、犬です」
「へ~、犬種は何ですか?」
「犬種ですか…いかんせん野良だったのでそこまで把握してませんでした。今度調べておくので、また会った時にでも」
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「どうすれば…大人になれますか?」
ーーー長かった。
小さなアドバイスと頼りになる大人のイメージを刷り込み続けた甲斐があった。少女はここまで依存した。後は条数的に増やしていけばいい。
だが、慌てるな。何かを間違えれば全てが無駄になる。
「随分と重いですね」
「えっと、鈴木さんは出来る大人って感じじゃ無いですか…私もそうなれたらな…って」
「そうか。そう言う時は原因を突き止めて取り除くのは早い方がいい。私がそのやり方を教えてあげよう」
男は悩める少女に助言を与える。しかし、それは彼女のためでは無い。胸の内に蠢くドス黒い感情に身を任せている。
「まずは、手のつけやすい所からいこう。爪だ。今回は私のを貸すが、自分用のものを買え」
男は棒状の爪磨きを取り出し女子の手を掴んだ。
「ふぇ!?」
「黙っていなさい。すぐ終わる」
一つ一つの爪を丁寧に磨き上げる。
動物は動く物を目で追う習性がある。それは、自身に迫る危機や重要な情報を見逃がさないためである。とりわけ爪を含む手はよく動く。よって、それだけ注目される。
「ふぁ~、こんなに綺麗になるんですね!」
「髪も伸ばした方がいい。そちらの方が君に合うだろう」
「分かりました」
「また何かあれば、言うといい。大人の視点から何かアドバイスをしよう」
それから、彼らの関係は劇的に変わった。少女は細かいことから重要な事まで相談を始め、男はより具体的な指示を出すようになった。
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「どうかな?学校生活は?」
「余り、変わらないです。何がいけないのでしょう?すごく可愛くなったのに…」
「アピールの仕方が悪いのでしょう。私の教えた通りにしてみてください」
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「凄いです!皆んなが可愛くなったね。って、友達も増えて学校がどんどん楽しくなっていきます。実は気になってる男の子がいて…」
「それは良かった。でも、学校はもっと楽しいところですよ。また指示をするので従ってください」
ーーーーー
「男の子の方から話しかける様になりました。次はどうすれば良いですか」
「外に連れ出してみましょう。デートです。やり方は指示してあげよう」
「はい」
ーーーーー
「告白されたのですか。受けなさい」
「はい」
ーーーーー
「そろそろだ。彼氏とは別れなさい。転校してもらいます」
「はい」
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そろそろ、大丈夫だろう…
男は少女の両親を訪れた。ただ、彼女との関係について了承を得てるために事前にあっており、会うのはこれが初めてではない。
「というわけで、娘さんをこの高校に転校させてよろしいですか?」
「鈴木さんがおっしゃるなら、それがいいのでしょう。私たちは親失格ですから」
「そうでしたね。では、手続きの仕方は指示しますのでお願いします」
ーーーこれでようやく始められる。楽しい楽しい復讐を。
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