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綺麗な花には毒がある
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社交界美人カルテットの皆さんは、本当に我が領地へやってきた。
そして四人ともそれぞれ好きなようにマキオンパールを買ってくださった。
しかも定期的に買うわ、と言って長期購入契約まで結んでくれた。
結果、私が未だかつてない大口契約を結んだ形になった。驚きである。
この結果に一番喜んでくれたのは父親でもなく母親でもなく、弟だった。
父親は「お前がそんな大それたことを出来るわけがない」と現実を見ることなく疑心暗鬼になったまま。
母親は女なのにそんな出過ぎた真似をするなんて、となぜかキレている。
しかし弟だけは素直に喜んでくれた。
あの四人がマキオンパールを使ってくれれば評判が評判を呼び多少はマキオンパールの認知度が上がるかもしれない、と言って。
社交界美人カルテットの皆さんは、本当に、それだけ影響力がある人なのだ。
マキオンパールをお気に召したのが彼女たちのただの好奇心や気紛れだったとしても特に関係ない。彼女たちが持っている物こそ素敵な物なのだと信じてやまない層が一定数いるのだから。
マキオンパールが彼女たちの目に留まってくれて本当に本当に良かったな、なんてこっそり心を躍らせていた時のこと。我が弟が小さな声で零した。
「これはあれと合わせて俺がやろう。父さんは商機を逃すことしか能がないからな……」
と。
今までただのちんちくりんだと思っていた弟だったが、いつもよりも逞しく見えた。成長したんだな。
そして父親、商機を逃すことしか能がないってことは結局無能ってことじゃん。早いとこ隠居してほしいな。
そんなこんなで王子殿下主催の夜会の日。
本日の夜会は婚約者が決まっていない人の割合が大きく、いわゆる婚活パーティー的な位置づけで、エスコートなしでの参加も可能。
よって私はフランシス・ヴィージンガーと行動を共にしなくてもいい。ただそれだけでもう心が軽い。
漫画ではクリストハルト・クロウリーがヒロインに猛烈アタックをする回なので私の出番もないのだ。心晴れやか。
私はマリカさんや社交界美人カルテットの皆様とドレスやアクセサリーの話に花を咲かせることだけを考えていればいいということだもの。楽しみでしかない。
今日のドレスはパステルパープルと白のレースでふわふわゆめかわカラーにしてみた。
前回のドレスに付けたコサージュだが、今回は腰のリボンに付けさせていただいた。折角貰ったのに一度しか使わないなんてもったいないんだもん。
つまみ細工教室で作ったものは髪飾りにした。もうめちゃくちゃ可愛い。
社交界美人カルテットの皆さんも可愛いつまみ細工を作っていたので、きっと可愛いトータルコーディネートになってるんだろうなぁ。たのしみたのしみ。
なんて、馬車に乗る瞬間からいい気分で参加する初めての夜会。フランシス・ヴィージンガーの隣で陰鬱な気分にならなくていい夜会。最高!
「そういや今日エスコートなしでいいからあの男来ないんだ。良かったねー」
と言いながら、弟が同じ馬車に乗り込んできた。弟もフランシス・ヴィージンガーのことは気に食わないらしいからな。「会場には来るけどね」と呟けば、心底嫌そうな顔をしていた。
ヒロインを奪い合うフランシス・ヴィージンガーとクリストハルト・クロウリーの図が発生するのだから会場には来る。でも私の出番はないので会うつもりもない。
クリストハルト様とは会えるだろうか?
漫画の通りであればそろそろ闇落ちする方向へと進んでいる頃だと思うのだが。
しかし前回会った時にヒロインのほうをキラキラとした瞳で見ながら「あれだ」みたいなことを呟いて、そして私に対して謎の「待ってて」発言をしてどこかに消えていった。
もはや彼に何が起きているのかさっぱり分からない。
さっぱり分からないのだけれど、私はあれから社交界美人カルテットの皆さんと交流してみたり、マキオンパールの売り上げに貢献してみたりと楽しく充実した日々を過ごしている。
漫画の中のルーシャ・マキオンとはまるで別人だ。
このままヒロインと全く接触せずに穏やかに生きていきたい。
馬車を降りて、会場に一歩足を踏み入れた瞬間、待ち構えていた社交界美人カルテットの皆さんに取っ捕まった。
私のすぐ後に来たマリカさんも見事捕獲されていた。
皆さんそれはそれは綺麗で美しくて可愛らしいドレスとアクセサリーだ。
皆で作ったつまみ細工はそれぞれ髪飾りになっていたし、皆さんのドレスにはマキオンパールがたくさん縫い付けられている。
そんな私たちという塊は、早速会場内の注目の的になっていた。
女子たちの視線はもちろん、男性からの視線も集めているのは、社交界美人カルテットの皆さんがいるからだろう。皆美人だし。私が男だったら普通にガン見してるもんな。まぁ今も普通にガン見してるけど。
「お二人のおかげで今日の私はこんなにも綺麗よ」
なんて、ハンネローレ様がいたずらっ子のような笑顔を見せるものだから、私のハートは見事に撃ち抜かれてしまった。
ご本人は冗談っぽく言っているけれど、冗談ではなくめちゃくちゃ綺麗です。
見事にふわふわした気持ちのままお話していると、女子たちの塊が突撃してきた。
その髪飾りはどこで買ったのですか? だとか、そのドレス素敵ですね! だとか、とにかく質問攻めだ。
結構な勢いで突撃されているのに、社交界美人カルテットの皆さんは嫌な顔一つ見せずにつまみ細工とマキオンパールのすばらしさを語ってくれている。ありがたい話だ。
マキオンパールに興味を示した数名のご令嬢が、もうすでに釣れそうだもの。
そしてその匂いを嗅ぎ取った弟が「マキオンパールの商談はこちらで受け付けますよ」と声を掛け始めた。
父親が隠居すれば、我が家の将来は安泰だな。
そんなことを考えていた時だった。ふと視界の隅にヒロインの姿が映った。
どうやらこちらに近付いて来ているらしい。
まさかフランシス・ヴィージンガーを連れてくるのか? と思ったけれど、彼女の隣に奴はいなかった。
ヒロインも社交界美人カルテットの皆さんに興味を示したのだろうか? 話しかけて来やがるのだろうか?
「たくさんおしゃべりしたから喉が渇いたわね。行きましょ」
私がヒロインに対する警戒心を上げていたところで、そう言ったのはハンネローレ様だった。
彼女は美人カルテットの残りの三人に視線を送った後、私とマリカさんの手を引いて空いているテーブルのほうへと歩き出す。
ヒロインから離れるように歩いてくれた、ただそれだけで緊張状態だった私の心が少し軽くなる。
「そういえば、最近社交界に他人の婚約者を狙う危険な人がいるそうよ」
緊張状態が一瞬にして戻って来た。
「そんなハイエナみたいな人がいらっしゃるの?」
ハンネローレ様の言葉に、アウローラ様が反応する。
いらっしゃるいらっしゃる。怖くて見てないけど多分近くにいらっしゃる。
「まぁ……」
エーミリア様が小さくそう呟いたと思ったら、ビビアナ様が持っていたグラスと自分で持っているグラスをカツンと合わせてもう一度口を開くのだ。
「まったく同じ物なのに、他人が持っている物のほうが美味しそうに見えちゃう可哀想な子がいらっしゃるのね」
と。
「ふふ、可哀想」
そう言って妖しく微笑むビビアナ様を見た瞬間、私の背中に冷や汗が流れていった。
やっぱり社交界美人カルテットは可愛くて優しいだけの女たちではなかったようだ。
そして四人ともそれぞれ好きなようにマキオンパールを買ってくださった。
しかも定期的に買うわ、と言って長期購入契約まで結んでくれた。
結果、私が未だかつてない大口契約を結んだ形になった。驚きである。
この結果に一番喜んでくれたのは父親でもなく母親でもなく、弟だった。
父親は「お前がそんな大それたことを出来るわけがない」と現実を見ることなく疑心暗鬼になったまま。
母親は女なのにそんな出過ぎた真似をするなんて、となぜかキレている。
しかし弟だけは素直に喜んでくれた。
あの四人がマキオンパールを使ってくれれば評判が評判を呼び多少はマキオンパールの認知度が上がるかもしれない、と言って。
社交界美人カルテットの皆さんは、本当に、それだけ影響力がある人なのだ。
マキオンパールをお気に召したのが彼女たちのただの好奇心や気紛れだったとしても特に関係ない。彼女たちが持っている物こそ素敵な物なのだと信じてやまない層が一定数いるのだから。
マキオンパールが彼女たちの目に留まってくれて本当に本当に良かったな、なんてこっそり心を躍らせていた時のこと。我が弟が小さな声で零した。
「これはあれと合わせて俺がやろう。父さんは商機を逃すことしか能がないからな……」
と。
今までただのちんちくりんだと思っていた弟だったが、いつもよりも逞しく見えた。成長したんだな。
そして父親、商機を逃すことしか能がないってことは結局無能ってことじゃん。早いとこ隠居してほしいな。
そんなこんなで王子殿下主催の夜会の日。
本日の夜会は婚約者が決まっていない人の割合が大きく、いわゆる婚活パーティー的な位置づけで、エスコートなしでの参加も可能。
よって私はフランシス・ヴィージンガーと行動を共にしなくてもいい。ただそれだけでもう心が軽い。
漫画ではクリストハルト・クロウリーがヒロインに猛烈アタックをする回なので私の出番もないのだ。心晴れやか。
私はマリカさんや社交界美人カルテットの皆様とドレスやアクセサリーの話に花を咲かせることだけを考えていればいいということだもの。楽しみでしかない。
今日のドレスはパステルパープルと白のレースでふわふわゆめかわカラーにしてみた。
前回のドレスに付けたコサージュだが、今回は腰のリボンに付けさせていただいた。折角貰ったのに一度しか使わないなんてもったいないんだもん。
つまみ細工教室で作ったものは髪飾りにした。もうめちゃくちゃ可愛い。
社交界美人カルテットの皆さんも可愛いつまみ細工を作っていたので、きっと可愛いトータルコーディネートになってるんだろうなぁ。たのしみたのしみ。
なんて、馬車に乗る瞬間からいい気分で参加する初めての夜会。フランシス・ヴィージンガーの隣で陰鬱な気分にならなくていい夜会。最高!
「そういや今日エスコートなしでいいからあの男来ないんだ。良かったねー」
と言いながら、弟が同じ馬車に乗り込んできた。弟もフランシス・ヴィージンガーのことは気に食わないらしいからな。「会場には来るけどね」と呟けば、心底嫌そうな顔をしていた。
ヒロインを奪い合うフランシス・ヴィージンガーとクリストハルト・クロウリーの図が発生するのだから会場には来る。でも私の出番はないので会うつもりもない。
クリストハルト様とは会えるだろうか?
漫画の通りであればそろそろ闇落ちする方向へと進んでいる頃だと思うのだが。
しかし前回会った時にヒロインのほうをキラキラとした瞳で見ながら「あれだ」みたいなことを呟いて、そして私に対して謎の「待ってて」発言をしてどこかに消えていった。
もはや彼に何が起きているのかさっぱり分からない。
さっぱり分からないのだけれど、私はあれから社交界美人カルテットの皆さんと交流してみたり、マキオンパールの売り上げに貢献してみたりと楽しく充実した日々を過ごしている。
漫画の中のルーシャ・マキオンとはまるで別人だ。
このままヒロインと全く接触せずに穏やかに生きていきたい。
馬車を降りて、会場に一歩足を踏み入れた瞬間、待ち構えていた社交界美人カルテットの皆さんに取っ捕まった。
私のすぐ後に来たマリカさんも見事捕獲されていた。
皆さんそれはそれは綺麗で美しくて可愛らしいドレスとアクセサリーだ。
皆で作ったつまみ細工はそれぞれ髪飾りになっていたし、皆さんのドレスにはマキオンパールがたくさん縫い付けられている。
そんな私たちという塊は、早速会場内の注目の的になっていた。
女子たちの視線はもちろん、男性からの視線も集めているのは、社交界美人カルテットの皆さんがいるからだろう。皆美人だし。私が男だったら普通にガン見してるもんな。まぁ今も普通にガン見してるけど。
「お二人のおかげで今日の私はこんなにも綺麗よ」
なんて、ハンネローレ様がいたずらっ子のような笑顔を見せるものだから、私のハートは見事に撃ち抜かれてしまった。
ご本人は冗談っぽく言っているけれど、冗談ではなくめちゃくちゃ綺麗です。
見事にふわふわした気持ちのままお話していると、女子たちの塊が突撃してきた。
その髪飾りはどこで買ったのですか? だとか、そのドレス素敵ですね! だとか、とにかく質問攻めだ。
結構な勢いで突撃されているのに、社交界美人カルテットの皆さんは嫌な顔一つ見せずにつまみ細工とマキオンパールのすばらしさを語ってくれている。ありがたい話だ。
マキオンパールに興味を示した数名のご令嬢が、もうすでに釣れそうだもの。
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どうやらこちらに近付いて来ているらしい。
まさかフランシス・ヴィージンガーを連れてくるのか? と思ったけれど、彼女の隣に奴はいなかった。
ヒロインも社交界美人カルテットの皆さんに興味を示したのだろうか? 話しかけて来やがるのだろうか?
「たくさんおしゃべりしたから喉が渇いたわね。行きましょ」
私がヒロインに対する警戒心を上げていたところで、そう言ったのはハンネローレ様だった。
彼女は美人カルテットの残りの三人に視線を送った後、私とマリカさんの手を引いて空いているテーブルのほうへと歩き出す。
ヒロインから離れるように歩いてくれた、ただそれだけで緊張状態だった私の心が少し軽くなる。
「そういえば、最近社交界に他人の婚約者を狙う危険な人がいるそうよ」
緊張状態が一瞬にして戻って来た。
「そんなハイエナみたいな人がいらっしゃるの?」
ハンネローレ様の言葉に、アウローラ様が反応する。
いらっしゃるいらっしゃる。怖くて見てないけど多分近くにいらっしゃる。
「まぁ……」
エーミリア様が小さくそう呟いたと思ったら、ビビアナ様が持っていたグラスと自分で持っているグラスをカツンと合わせてもう一度口を開くのだ。
「まったく同じ物なのに、他人が持っている物のほうが美味しそうに見えちゃう可哀想な子がいらっしゃるのね」
と。
「ふふ、可哀想」
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やっぱり社交界美人カルテットは可愛くて優しいだけの女たちではなかったようだ。
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