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第三章・凶器という名の愛
8 深海の底2
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「鞭、……初めてだよ。楽しみ……」
葵は恐怖を隠して嘘をついた訳ではない。恐怖より歓喜が勝っただけだ。
「葵……痛いんだぞ?」
今さらまだ遠慮をするのか。
どうしたら東條はわかってくれるのだろう。
「なんで僕が他の人と貴方がプレイするのが嫌だと駄々を捏ねたか、大和さんはは解っていないんだね」
「自分以外に触るからだろ?」
――解ってない。
葵は首を横に振った。
「違うのか?」
「違わないけど、違うんだよ」
違わないけど、勿論――大和さんが僕以外にいやらしいことするのは嫌だ。
でも一番嫌なのはそれじゃない。
「暁斗さんを鞭で叩いていた貴方は、頬が高潮して息が荒かった。明らかに興奮していたよ。でも僕にする時はそんな狂気じみた感じがしないんだ。僕はあなたの隠されたその狂気が自分にだけ向けばいいと思っているんだよ」
「お前が一番に決まっているだろう」
「さっきは違ったでしょ?」
東條は違わないと何度も言う。呆れるほどに鈍い恋人が可愛い。ほんとに解ってないのだなと葵は思った。
「お前にも隠された性癖があるのか?」
「あるよ、フェチがね」
「フェチシズムかい?」
「僕は声フェチなんだよ。腹の中をぐっちゃぐちゃにする尾てい骨に響く声。その声が僕に命令するの。逝けとか、我慢しろとか、誰にでも優しいその声が自分にだけひと際低くなる瞬間が好き。想像するだけで奥が引くつくのが良く判る。大好きな声に、人より支配されたい欲求が強い……」
「痛いのが好きな訳ではないのか?」
葵は繋がれたままの恥ずかしい身体を晒しながら、ゆっくりと東條に伝わる様に話し出した。
「痛くても……恥ずかしくても……中から震えるような声ならば……多分平気だと思う……。でも今まではそんな声に出会えなかったし、何故か僕を巡って取り合いみたいなのが起きちゃって、仕事場一週間つづかなかったんだ。出会う確率なんて無いに等しいよね。今続いているのは奇跡なんだよ。今回だって……社食で働きだして……最初の10日間位は何人にもお誘い受けたよ。そう言えばある日を境に一定以上……距離を縮めてくる人が減ったかも。
自分の快感を引き出す声が、耳元で命令してくるシチュエーションがたまらないんだ。貴方が僕に興奮して荒い息なんか聞こえたら、僕はなんでも出来ちゃうよ」
「葵、お前は俺の声で腹の中がぐちゃぐちゃになるのか?」
繋がれた葵のペニスがゆらゆらとそそりたっていた。
「これを見てもそんな事聞いちゃう?」
可愛い僕の大和さん。
あなたが僕を拘束するんじゃない、僕があなたの拘束されてあげるんだよ。
「約束したからね、もう僕の事、捨てさせないから」
「葵――」
葵の望む東條の声は、いやらしいほどに低く響き渡った。
葵は恐怖を隠して嘘をついた訳ではない。恐怖より歓喜が勝っただけだ。
「葵……痛いんだぞ?」
今さらまだ遠慮をするのか。
どうしたら東條はわかってくれるのだろう。
「なんで僕が他の人と貴方がプレイするのが嫌だと駄々を捏ねたか、大和さんはは解っていないんだね」
「自分以外に触るからだろ?」
――解ってない。
葵は首を横に振った。
「違うのか?」
「違わないけど、違うんだよ」
違わないけど、勿論――大和さんが僕以外にいやらしいことするのは嫌だ。
でも一番嫌なのはそれじゃない。
「暁斗さんを鞭で叩いていた貴方は、頬が高潮して息が荒かった。明らかに興奮していたよ。でも僕にする時はそんな狂気じみた感じがしないんだ。僕はあなたの隠されたその狂気が自分にだけ向けばいいと思っているんだよ」
「お前が一番に決まっているだろう」
「さっきは違ったでしょ?」
東條は違わないと何度も言う。呆れるほどに鈍い恋人が可愛い。ほんとに解ってないのだなと葵は思った。
「お前にも隠された性癖があるのか?」
「あるよ、フェチがね」
「フェチシズムかい?」
「僕は声フェチなんだよ。腹の中をぐっちゃぐちゃにする尾てい骨に響く声。その声が僕に命令するの。逝けとか、我慢しろとか、誰にでも優しいその声が自分にだけひと際低くなる瞬間が好き。想像するだけで奥が引くつくのが良く判る。大好きな声に、人より支配されたい欲求が強い……」
「痛いのが好きな訳ではないのか?」
葵は繋がれたままの恥ずかしい身体を晒しながら、ゆっくりと東條に伝わる様に話し出した。
「痛くても……恥ずかしくても……中から震えるような声ならば……多分平気だと思う……。でも今まではそんな声に出会えなかったし、何故か僕を巡って取り合いみたいなのが起きちゃって、仕事場一週間つづかなかったんだ。出会う確率なんて無いに等しいよね。今続いているのは奇跡なんだよ。今回だって……社食で働きだして……最初の10日間位は何人にもお誘い受けたよ。そう言えばある日を境に一定以上……距離を縮めてくる人が減ったかも。
自分の快感を引き出す声が、耳元で命令してくるシチュエーションがたまらないんだ。貴方が僕に興奮して荒い息なんか聞こえたら、僕はなんでも出来ちゃうよ」
「葵、お前は俺の声で腹の中がぐちゃぐちゃになるのか?」
繋がれた葵のペニスがゆらゆらとそそりたっていた。
「これを見てもそんな事聞いちゃう?」
可愛い僕の大和さん。
あなたが僕を拘束するんじゃない、僕があなたの拘束されてあげるんだよ。
「約束したからね、もう僕の事、捨てさせないから」
「葵――」
葵の望む東條の声は、いやらしいほどに低く響き渡った。
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