41 / 88
第三章 共生
40睦月 狙われた紫苑
しおりを挟む
あれから特に何が起きるでもなく涼風はただのか弱いオメガだった。
お客様の中には本気で口説く者もいたが、神無月のことが好きだと公言していたし、アイドルの様に可愛がられていた。
「シェフ、いいじゃない。こんなに慕われてしかも超絶可愛い子だよ」
涼風がトイレに立ったすきを狙い客はシェフに声をかけた。
「いやいや自分は大丈夫です」
ランチに来たお客様に涼風はどうだと勧められ、困ったように顎を擦った。
「自分、ずっと昔から片想いしてるやつがいるんですよ」
「何々、マジで?そうなの?何出会いはいつ。どんな子よ。男?女?オメガ?まさかベータはないよね」
暇なのか面白いネタを拾ったとばかりに食いついた。
「ははは、内緒ですよ。白城さん、ホント……勘弁してください」
「ていうか紫苑君は?昨日からいないじゃない。推しなんだけどー」
「推しって、白城さんが毎日通ってるの、紫苑目当てですか?」
「あったり前でしょー」
ハンバーグランチを注文しものの5分もせずに完食した白城は食後のコーヒーを飲みながら雑誌に目を落とした。
「あの子さー」
神無月はカウンターの前から自分に向かって投げられる言葉に耳を傾けた。
「もしかしてオメガなの?」
「涼風はいかにもですよ」
玉ねぎのアッシェの音がまな板の上でトントンと響いた。
「誰が涼風君のことを言いましたか。僕の押しの彼だよ」
「え……?何が……」
「ビンゴだねぇ。ますます欲しい」
白城は俺様アルファだ。噂では自分の家に何人ものオメガがいると聞く。
「いくら白城さんでも紫苑に手を出したら許しませんよ」
にらみを利かす神無月に、最後のコーヒーを飲み干すと1000円札一枚出して席を立つ。
椅子の掃除をしていた涼風はレジから100円玉を一枚出すと、白城に手渡した。
「お釣りですよ」
「ごちそうさまでした」
高らかな笑いとともに白城は店を出た。
「何かいいことでもおありでしたか。坊ちゃん」
「最高のおもちゃが手に入りそうだ」
白城の手には小さな紙切れが握られていた。
お客様の中には本気で口説く者もいたが、神無月のことが好きだと公言していたし、アイドルの様に可愛がられていた。
「シェフ、いいじゃない。こんなに慕われてしかも超絶可愛い子だよ」
涼風がトイレに立ったすきを狙い客はシェフに声をかけた。
「いやいや自分は大丈夫です」
ランチに来たお客様に涼風はどうだと勧められ、困ったように顎を擦った。
「自分、ずっと昔から片想いしてるやつがいるんですよ」
「何々、マジで?そうなの?何出会いはいつ。どんな子よ。男?女?オメガ?まさかベータはないよね」
暇なのか面白いネタを拾ったとばかりに食いついた。
「ははは、内緒ですよ。白城さん、ホント……勘弁してください」
「ていうか紫苑君は?昨日からいないじゃない。推しなんだけどー」
「推しって、白城さんが毎日通ってるの、紫苑目当てですか?」
「あったり前でしょー」
ハンバーグランチを注文しものの5分もせずに完食した白城は食後のコーヒーを飲みながら雑誌に目を落とした。
「あの子さー」
神無月はカウンターの前から自分に向かって投げられる言葉に耳を傾けた。
「もしかしてオメガなの?」
「涼風はいかにもですよ」
玉ねぎのアッシェの音がまな板の上でトントンと響いた。
「誰が涼風君のことを言いましたか。僕の押しの彼だよ」
「え……?何が……」
「ビンゴだねぇ。ますます欲しい」
白城は俺様アルファだ。噂では自分の家に何人ものオメガがいると聞く。
「いくら白城さんでも紫苑に手を出したら許しませんよ」
にらみを利かす神無月に、最後のコーヒーを飲み干すと1000円札一枚出して席を立つ。
椅子の掃除をしていた涼風はレジから100円玉を一枚出すと、白城に手渡した。
「お釣りですよ」
「ごちそうさまでした」
高らかな笑いとともに白城は店を出た。
「何かいいことでもおありでしたか。坊ちゃん」
「最高のおもちゃが手に入りそうだ」
白城の手には小さな紙切れが握られていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
62
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる