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第五章 運命
82文月 ヒート
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「ほら、ついたぞ」
したいしたいと喚いていた紫苑は、途中から口をつぐみ何も言わなくなった。そんな様子に心配したものの、先ずは紫苑を部屋に連れていくことが先決だと、車を走らせた。
家に着いた車の助手席を開け、紫苑に腕を伸ばした。
「大丈夫」
息も切れ切れに、それでも首を横に振り答える紫苑に、無視するように無言で抱きかかえ、片手で鍵を開け、シーンとした家に足を踏み入れた。
「ベッドに直行でいいか」
何も言わない紫苑をベッドに下ろし、キスするように覆いかぶさった。
「待って、お水、お水頂戴……心臓が痛い……」
「心臓が?水があれば痛くなくなるのか?」
慌てた神無月は紫苑をベッドに残し、すぐ取ってくるとキッチンに走っていった。
足音が遠のくのを確認すると、這うようにベッドから降りた紫苑は、扉の前まで体を引きずり、必死の思いで寝室に鍵をかけた。
「持ってきたぞ」
扉を開けようと神無月の手がノブにふれる。右に勢いよくまわすと、開くはずの扉からは、何故か冷たい音がした。
「美月?おい開けろ」
「ソファで寝て……ごめん」
「馬鹿を言うな……。そんなお前を残して、のこのこ寝られるわけないだろう」
「大丈夫、こんなになるの……ンハァ……初めてだから……よくわからないけど、僕……」
「美月――」
コップの水がカランとした音と共に、床に転がり、扉の隙間から中にも漏れていった。
「お水、ありがとう」
「いや待てって、お願いだ。開けて、紫苑」
扉のすぐそばで聞こえる声は、生々しいほどに艶っぽく、自分で後ろを弄るクチュクチュとした音が、神無月の耳に響いた。
「一人でしょうなんて思わないで」
神無月の声は、悲痛な叫び声を伴い、廊下に響いた。
「……」
「美月――――」
「大好きだよ……柊。ごめんね」
中からは吐息だけが聞こえてきた。
「ンハァァァァァァ、ンンンンン、柊……」
「美月、開けてくれ」
「ン、届かない、指、奥……届かないよ……」
「だから、開けてってば。俺がしてあげるから」
扉に口をつけて、紫苑を諭すように神無月の説得は続いた。
「開け……ない、どうしてもなら、蹴破ればいい……でしょ?」
「ンなこと出来るわけないだろう」
「なん……で」
「なんでじゃねぇよ。そこにいるんだろ?お前が怪我をするって解ってて、バカ言うな」
「なら、黙ってみてて……」
中から漏れる甘い匂いに、神無月のペニスは天を仰ぎ根元の部分は大きく膨れていた。
「薬で反応してるのに、そんなのお前が我慢できるわけないだろう」
「だから……嫌……なんだ」
「何が!」
「薬なんか……僕たちの意思じゃない……」
ンハァ。柊、柊……。
「そんなことない。俺は、薬なんかなくても抱くつもりだったぞ」
「貴方は……優しいから、この……子ごと……愛してくれるって……言っ……てくれた。もう……十分だよ。ベッド……占領し……てごめん……。ヒート収まるまで……貸……て」
「オメガでごめんなさい」
それ以上紫苑は何も言わなかった。
中からは、アルファを狂わせるほどの甘い匂いと、紫苑の絶叫だけが神無月を襲った。
したいしたいと喚いていた紫苑は、途中から口をつぐみ何も言わなくなった。そんな様子に心配したものの、先ずは紫苑を部屋に連れていくことが先決だと、車を走らせた。
家に着いた車の助手席を開け、紫苑に腕を伸ばした。
「大丈夫」
息も切れ切れに、それでも首を横に振り答える紫苑に、無視するように無言で抱きかかえ、片手で鍵を開け、シーンとした家に足を踏み入れた。
「ベッドに直行でいいか」
何も言わない紫苑をベッドに下ろし、キスするように覆いかぶさった。
「待って、お水、お水頂戴……心臓が痛い……」
「心臓が?水があれば痛くなくなるのか?」
慌てた神無月は紫苑をベッドに残し、すぐ取ってくるとキッチンに走っていった。
足音が遠のくのを確認すると、這うようにベッドから降りた紫苑は、扉の前まで体を引きずり、必死の思いで寝室に鍵をかけた。
「持ってきたぞ」
扉を開けようと神無月の手がノブにふれる。右に勢いよくまわすと、開くはずの扉からは、何故か冷たい音がした。
「美月?おい開けろ」
「ソファで寝て……ごめん」
「馬鹿を言うな……。そんなお前を残して、のこのこ寝られるわけないだろう」
「大丈夫、こんなになるの……ンハァ……初めてだから……よくわからないけど、僕……」
「美月――」
コップの水がカランとした音と共に、床に転がり、扉の隙間から中にも漏れていった。
「お水、ありがとう」
「いや待てって、お願いだ。開けて、紫苑」
扉のすぐそばで聞こえる声は、生々しいほどに艶っぽく、自分で後ろを弄るクチュクチュとした音が、神無月の耳に響いた。
「一人でしょうなんて思わないで」
神無月の声は、悲痛な叫び声を伴い、廊下に響いた。
「……」
「美月――――」
「大好きだよ……柊。ごめんね」
中からは吐息だけが聞こえてきた。
「ンハァァァァァァ、ンンンンン、柊……」
「美月、開けてくれ」
「ン、届かない、指、奥……届かないよ……」
「だから、開けてってば。俺がしてあげるから」
扉に口をつけて、紫苑を諭すように神無月の説得は続いた。
「開け……ない、どうしてもなら、蹴破ればいい……でしょ?」
「ンなこと出来るわけないだろう」
「なん……で」
「なんでじゃねぇよ。そこにいるんだろ?お前が怪我をするって解ってて、バカ言うな」
「なら、黙ってみてて……」
中から漏れる甘い匂いに、神無月のペニスは天を仰ぎ根元の部分は大きく膨れていた。
「薬で反応してるのに、そんなのお前が我慢できるわけないだろう」
「だから……嫌……なんだ」
「何が!」
「薬なんか……僕たちの意思じゃない……」
ンハァ。柊、柊……。
「そんなことない。俺は、薬なんかなくても抱くつもりだったぞ」
「貴方は……優しいから、この……子ごと……愛してくれるって……言っ……てくれた。もう……十分だよ。ベッド……占領し……てごめん……。ヒート収まるまで……貸……て」
「オメガでごめんなさい」
それ以上紫苑は何も言わなかった。
中からは、アルファを狂わせるほどの甘い匂いと、紫苑の絶叫だけが神無月を襲った。
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