鬼に連れられ異世界へ〜基本俺はついでです〜

流れ華

文字の大きさ
18 / 36
一章・・・宵の森

訓練

しおりを挟む
「そうだね、まずは現実を知ろう。」

家の前に出て、紅月とむきなおる。

「現実、ですか。」

「そう、現実。
何をしてもいいから、私の半径1メートル以内においで。」

わかりやすいように円を書いてくれた。

取り敢えず近付こうと足を踏み出した途端、とてつもない重圧に襲われる。

「!?!?!?」

足が意志とは反対にすくみ、動かなくなる。
紅月さんは相変わらず、涼しい顔で立ったままだ。

「ほら、私はここにいる。動いていない。おいで。」

無理矢理近づけば、重圧はいっそう強くなる。
息が出来なくなるほどの重さに身体はどんどん動かなくなり、冷や汗がどっと出てくる。身体も震え、膝が笑っている。
紅月を見れば、圧倒的強者が佇んでいる。
(なんだこれっ・・・!紅月さんは何をしたんだ?苦しい・・・体が潰れてしまいそうだ・・・怖い・・・命の危険すら感じる・・・
動け・・・、動けよ俺の身体・・・!)
踏ん張りながら、少しでも前に進もうとする。

ふと、自分の中の魔力の流れが別の魔力によって乱されていることに気がついた。
(体か重く感じて、上手く動かないのってもしかして・・・)
自分の体内の魔力の循環を意識して、乱そうとしてくる魔力を弾き返す。
すると、涼しげだった紅月の顔が初めて変わった。

「ほう、魔力操作を自力で・・・名だたる陰陽師の先祖返りは才能も伊達ではない、と。」

その口元に三日月が浮かぶ。それはそれは楽しそうに。

紅月が何かをぽつりと言うと、乱そうとしてくる魔力がいっそう強くなる。
(は、弾き返しきれない・・・!
なら、循環をもっと、強く、速く・・・!)
激流が全身を駆け巡る。
身体が軽くなった。重圧が消え、真っ直ぐに立てるようになる。

真っ直ぐ紅月の元へ歩き、円の中に入る。

「・・・お見事。
私がやっていたのは“威圧”と呼ばれるもので、体内の魔力を放出し、相手の魔力を乱して自由に動けなくするものなんだ。
新月が完全に動けなくなってしまったら魔力操作を教えようと思ってたんだけど・・・自力でできるようになっちゃったね。」

「えっ、あっいや、俺必死だっただけなので・・・正直、なんで出来たか分かんないんです。」

紅月は楽しそうに笑う。

「それでいいんだよ。今、もう意識してなくてもさっきと同じ速さで魔力が流れてるでしょ?
身体が、そのくらい強く流さないと命が危ないと学習したからなんだ。
教えられたことよりも、身をもって体験して得たものは強いし、忘れない。」

その言葉で、あれが自然界だったらと想像する。
あのまま硬直していれば、間違いなく仕留められるだろう。森の中であれば、正当に獲物を得ようとした獣が森に殺されるだろう。

「これって、とても大切な基礎ですね。」

「その通り。格上からの威圧では動けなくなりやすい。だから、自分の中の流れを保つんだ。
私以上の強者でもない限り、今の新月には威圧が効かないはずだよ。」

その言葉に気を引き締める。
(紅月さんより強かったら、俺は動けなくなるんだ。だったら、慢心せずにもっと、強く、速くしないと・・・)


新月はまだ、紅月が最強だということを知らない。


「あんまり一気に魔力の流れを変えると体調悪くなりやすいんだけど、新月は大丈夫・・・・・・じゃなさそうだね?」

紅月の注意の前に、さらに早くしようとしてしまい、気持ち悪くなってしまっていた。

「ぎ、ぎぼぢわるい・・・」

「ちょっと失礼。」

脈を取るように、手首に指をあてる。
紅月が眉を寄せる。

「・・・ちょっとごめんね。」




紅月に抱き締められた。

「えっ、紅月さん!?」
「じっとして。」

言われた通りに大人しくすると、荒々しかった魔力の流れが研ぎ澄まされていく。
ぶつかり合っていた魔力が、綺麗に矯正されていく。

「・・・ふう、これで大丈夫だと思うけど、どう?体調は良くなった?」

「はい、むしろ最初よりいい気がします。」

五感が澄んだ気がして、すがすがしい。
感覚が冴え渡っている。

「よかった。魔力が暴走すると命に危険が及ぶ時もあるから、その流れは維持してね。」

・・・今日は何度冷汗をかけばいいのだろう。
(独りだったら間違いなく詰んでたわ・・・ありがとうツクヨミさん紅月さん・・・)

「はい、ありがとうございます。」

「じゃあ、次は逆をやってみようか。」

紅月が立っていた場所に立たされ、紅月は30メートルほど離れる。

「私が今から、そっちに歩いていくから、その円から出ずに私の動きを止めてみて!」

そう言うと、こちらに向かって歩いてくる。
(えっ、無理じゃね?
紅月さんみたいに魔力を放出したところで、紅月さんの方が格上だから効くわけないし・・・)
一応、ダメでもともとやって見る。
魔力を紅月の方向に強く流して、紅月の魔力の流れを阻害しようと試みる。

(うん、やっぱり無駄だった!見事なまでに跳ね返されたよ!)

紅月はこちらに悠々と歩いてくる。
(邪魔するとなると、壁?)
しゃがんで土に触れ、魔力を流してみると、魔力を流した部分が操れることに気がつく。
(なら、こうして・・・!)
土が上に伸びることをイメージすれば、紅月の目の前に土の壁が現れる。

「うん、悪くない選択だけど、」

紅月が壁を蹴れば、一瞬で崩れた。

「弱いね。」

(なら、もっと厚く、硬く・・・!)

密度を意識して壁を作る。

「うんうん、いい調子だね。」

ひょい、と飛び越えられた。
(3メートルはあったと思うんだけど・・・
なら、もっと高く・・・!)
高く、厚く、硬く、をイメージしてもう一度壁を作る。
紅月が一切見えなくなり、声も聞こえなくなる。
(どうかな・・・)

ピシッ、と真ん中に亀裂が入ったと思えば、壁が崩れる。

「中々硬かったけどまだまだだね。」

(えぇー・・・・・・。
じゃあ、壁がダメなら、これでどうだ!)
地面を隆起させ、足場をメチャクチャにする。

「甘い甘い。」

不安定になった地面を軽々と進んでくる。
(これで無理ならもう無理だよもうすぐ近くにいるし、こうなったら・・・)

「紅月さん、止まってください。」

平静を保って、至ってあたりまえかのように言う。
(馬鹿だ・・・俺馬鹿だ・・・普通の人間相手でも聞くわけないやつだよ)


何故か紅月が足を止めた。


「・・・え?」
「あっ。」

紅月が頬をかく。

「普通に言うからつい止まっちゃったよ。これは一本取られたなぁ、あははは!!」

・・・うっかりらしい。

「あの、訓練なんですよね?」

「うん、ごめんごめん。
でも結構よかったよ。手からじゃなくても魔力は流せるから、地面と触れているところを意識すれば同じことが出来るよ。」

ほら、と指さす方向を見れば、地面が盛り上がり、様々な形に動いている。

「それをこうすれば・・・」

ものすごい速さで上に伸び、空を飛んでいたものを捕える。鳥っぽいが、これは鳥なのか・・・?

「こうやって捕らえることも出来る。地上にいるものの方が捕まえやすいんだけどね。」

確かに、地面からはだいぶ離れたところを飛んでいたと思う。

「これはコカトリス。こんな見た目だけど肉は美味しいんだよ。

新月、仕留めてみる?」

いまだ暴れているコカトリスを見る。

「・・・や、ります。やらせてください。」

短刀を抜いて、逆手でしっかりと持つ。

「その短刀に、しっかりと魔力を纏わせてから首に刺して。」

言われた通りに、しっかりと纏わせる。
こちらに顔を向けて何かをしようとしてくるが、紅月が全て消しているらしい。

「・・・ごめんね、頂きます。」

せめて苦しまぬよう、一息に刺す。
少しもがいたあと、コカトリスは息絶えた。

「上出来だね。
コカトリスは攻撃してきたものに対して、武器伝いに毒を送り込んでくるから、魔力で遮断するように。同じ特徴をバジリスクっていう蛇も持ってるから、基本は魔力を纏わせて刺す。

せっかくだから解体までやろう。」

解体用のナイフを渡され、指示されたように解体していく。
新月はただ、無心でこなした。

これが異世界で、これが命をもらって生きるという事だと自分に言い聞かせながら。






To Be Continued・・・・・・
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...