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一章・・・宵の森
紅月の隠し事
しおりを挟む「おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
紅月はいつも新月を先に寝かせて、自分はもう少し起きている。新月が完全に寝るまでベッドの縁に座っているため、紅月が何をしているのかは知らない。
ただ、小屋の外に出ていることは知っている。
寝る前に掃除をしているのだが、朝起きたら玄関に葉っぱが一枚落ちていたからだ。
今日も、いつも通りに眠る。
ふと、冷たい空気を感じて目を覚ます。
近くに紅月の姿はない。
「なんで冷たい空気が・・・?この小屋の温度は快適に保たれているのに・・・」
神様の不思議パワーである。
冷たい空気の原因は、玄関の扉が少し開いていたからだった。
(紅月さんは、もしかして外で何か・・・)
だが、紅月の気配はすぐ近くにある。
音を立てないように、気配を消して外に出る。
ドタドタ,ガタン
ゴロゴロゴロ
「~~~ッ!?!?!?」
いきなり頭に硬いものが当たる。それも結構重い。
痛くはないが、結構な衝撃だったので驚く。
「ににににに新月!?寝てなかったの!?あとごめん!」
頭上から声がする。
「紅月さん・・・屋根の上にいたんですか。」
紅月はバツが悪そうに頬を掻く。
「まぁ、うん、月光浴を・・・・・・ね?」
ちら、と頭に当たったものを見る。
“酒の匂いがする瓢箪”
「・・・月見酒なら月見酒と正直にいえばいいじゃないですか。」
大方酒を飲んでいて、新月が来るとは思わず慌てて、瓢箪を落とし、新月の頭に当たった・・・といったところだろう。
「いや、だって、新月は子供だし・・・」
ピシッ、と額に青筋が浮かぶのがわかる。
「この世界の成人年齢は十六です。
俺はもう、既に十六になりました。
ちゃんと大人なんですよ!なんでも真似したがる子供じゃありません!背が伸びてないのは関係ありません!」
「あっ、ハイ。」
「あと、俺は煙管も止めたりしませんよ。さすがに部屋の中は怒りますが。」
ギクッ、と言った感じに紅月の頬がひきつる。
「・・・バレた?」
「隠してるつもりだったんですか?
臭いはしませんけど、森の中でタバコの葉を摘んでいれば流石に察しますよ。」
それだけ言うと、踵を返す。
「いつもいなくなるんで気になってましたけど、危険なことしてるわけじゃないならいいです。
・・・安心しました。」
小屋に戻り、ベッドに潜る。
(良かった・・・七実にさせてしまってたみたいに、俺の知らない間に傷つくなんて、傷つけさせるなんて、もう嫌だからな・・・)
七実のことを思い出し、胸がグッと痛くなる。
「泣かせたく、なかったのにな。
・・・笑って欲しかった。」
別れ際の七実が頭をよぎる。
「・・・また、会えるよな?」
枕元に置いてある短刀に目が行く。
七実が持たせてくれた、龍神様の・・・
(大事にしよう。)
鞘をそっと撫でると、心が落ち着く。
目を閉じれば、眠りに誘われる。それに身を委ねて、ゆっくり意識を手放した。
「・・・今度こそ眠ったか。」
瓢箪を拾い上げ、また屋根の上に戻る。
「危なかった・・・こんなに早く新月が気付くとは思ってなかったな。」
紅月の足元には、複数の人影が転がっている。それらはピクリとも動かず、冷たく転がっている。
「・・・まだ、知るには時期が早すぎる。まだ、ね。」
月明かりが作り出す紅月の影が、蠢く。
人影は、紅月の影に飲み込まれていった。
「然るべきときが来る、それまでは・・・君は何も知らなくていい。
君は汚れなくていいんだ、蓮也・・・」
死の匂いを、酒の匂いと共に風がさらっていく。
「あと、少しなんだ。」
その赤い瞳は、憂いを帯びていた。
To Be Continued・・・・・・
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